Virtual Global Classroom

Global教育をテクノロジーを使って実践

アメリカ・オースティンで開催された教育テクノロジー祭典SXSWeduのワークショップでみてきたVirtual Global Classroomの紹介をしたいとおもいます。

Virtual Global Classroomとは、国境を越えてバーチャルで(テレビ会議システムやVirtual Realityの最新機器を使用して)海外の学校のクラスルームとつなぎ授業を合同で行うプログラムです。

自分のクラスルームに居ながらにして、海外のクラスルームの生徒たちと交流ができ、

異なる文化圏の人とも協力しながら関係を築いていけるGlobal Citizen (グローバル市民)を育てていくことを目的としています。

テクノロジーを通し交流をVirtualにすることで、移動時間/コストや物理的制約などの障壁を下げ、Global教育を教育現場で実践することを物理的に容易にするメリットがあるといわれています。

アメリカでいわれるGlobal教育

日本のGlobal教育は第二外国語である英語教育が義務教育で必須科目とされ教育の中で重要な位置づけになっていますが、コミュニケーション中心でなく、学問としての要素からの脱却がなかなか難しい等、課題は山積みです。

英語を母国語とするアメリカの場合でも、日本と同様にGlobal教育の重要性は理解はされてはいます。

これからはアメリカ国外の人とも協力していくことが重要で、Global Citizenのマインドセットは必要だと、日本と同様に理解されています。ただ、アメリカはもともと多民族移民国家であるため日本ほど、海外に対する憧れ、といったようなものはないのかもしれません。

特にGlobalizationの影響でアメリカ国内だけでは、もはや雇用は保証されず、異なる文化圏の人たちとコミュニケーションする能力は大事だ、というトーンで言われているようです。

  • In a 21st century world where jobs can be shipped wherever there’s an Internet connection … a child born in Dallas is now competing with a child in New Delhi. — President Barack Obama 21世紀の世界では、インターネットがつながる場所でどこでも仕事ができるようになる。テキサス州で生まれた子供は今、インドの子供と競争することになる。  – オバマ大統領より
  • 1990年代には7,000だった多国籍企業が、2013年では65,000に増加。

それでも、実際の教育現場ではGlobal教育はまだコア科目ではなく、身につけることができたら良いなといった程度のプライオリティの認識だといえそうです。要因としては、以下のようなことが考えられます。

  • 教師がGlobal教育を導入する必要性を感じていない。(必須科目で物理的に忙しい/重要性理解してない。)
  • 学校で教えるグローバル教育のカリキュラムがない。必須科目ではない。
  • 中学校、高校ではたった50%の生徒しか第二外国語を学んでいない。(各州や町、教育委員会や学校の方針によって外国語科目の注力の仕方にばらつきあり)一方、ヨーロッパの生徒の外国語習得度の高さと比較して危機感を示す元合州国教育長官のコメントも。

そこで、Global教育は重要だけど、なかなか教育現場には浸透しづらい、といった現状の問題を解決し、Global Citizenをアメリカから輩出していくため、

一部の教育者有志やNPO団体によって、Virtual Global Classroomが導入されました。

教育現場に浸透しづらいGlobal教育を、テクノロジーを使って物理的制約を下げることで、カリキュラムの提供や合同授業の運営指導、支援など学校にボトムアップでサポートすることで普及の拡大を目指します。

まだアメリカ国内では大きなムーブメントとはなってはいませんが、21世紀型教育など先進教育に興味のあるアンテナの高い教育者の中ではその実施効果も検証され始め、注目される団体が出てきています。

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今回は特に印象的で以前から注目していた、Global Nomad Groupというニューヨークに拠点をもつ非営利団体が行っているVirtual Global Classroomを紹介します。

Global Nomad Groupのめざすところ

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Global Nomad Groupは、人生を通して会う事がないだろう、といった地域のコミュニティ、文化間をつなぐことに焦点を当てて活動をしています。 

あえて会うことがないような国の生徒たちをつなぐのは、

  • 世界規模でみるとたった3%若者しか学校へ通う年齢で海外へいく機会に恵まれていません。
  • ほとんどの若者が、自分が生まれた地域の学校へ通い、似た価値観をもつ人たちが集まるコミュニティに所属していく。
  • そして自国のメディア報道の影響を受けて外国のイメージを持ったまま、大人になっていきます。その国の人と一生、実際に対話をすることなく。

これが異文化間のコミュニケーションの障害になったり、偏見や相互理解の溝をさらにつくってしまう。

そこで、バーチャル上ではあるけれど、生徒達に実際に対話する機会を創り出していくことで、多様な価値観があることを認識しGlobal Citizenとして必要な要素を習得することを目指しています。

特にユニーク取り組みなのが先進的Virtual Realityの機材を使ったプログラムです。

まず、生徒一人一人がリアルな映像、音声、衝撃を通しその国の生活や情景を体感することで、行ったこともない国の生活をリアルに感じ、あたかも自分がその国にいったような擬似体験をします。

Virtual Reality

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アメリカと海外。物理的な距離を越えて、擬似体験を通してその国に住む生徒たちへの共感が生まれてきます。バーチャルではありますが、相手の国の立場に立って考えるようにするためにこの没入体験は有効のようです。

そして、テレビ会議を通し国境を越えて相手の国の生徒と実際に対話をし、ヒトとヒトのリアルなコミュニケーションのやりとりをクラスルーム間でつくります。

ディスカッションを行ったり互いの文化の紹介など次第に生徒たち主導で授業が活発になっていきます。

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1998年設立以来、これまでのプログラムの実績は100万人の生徒、53カ国、7大陸にわたっています。

ロサンゼルス – シリア間とのクラスルームを繋ぐ

ロサンゼルスとシリアの生徒たちとの合同授業の事例では、

アメリカ人の生徒たちに数分間、内戦状態が続くシリアの子供たちの生活をVirtual Realityを装着して体験。その後、ヨルダンに逃げたシリア難民の生徒とも繋ぎ直接リアルな対話をします。

シリア内戦が、彼らに直接与える影響を目の当たりにし、実際に街の中を歩くことがどれだけ不自由で大変なのか、ショッキングな情景を体験した上で彼らの立場に立ってコミュニケーションを始めます。

すると徐々に対話も深まり、学校のことや戦争が家族との生活をどう変えたか、教育やジェンダーの問題、など様々な内容をアメリカの生徒はシリアの生徒たちに質問し始めます。

国境は違えど、同世代のティーンエイジャー同士。各国ペアのパートナーを設けて密なる交流を通し友情が芽生えていきます。“アメリカに住んでいる自分にも、あり得たことなのかもしれない。”

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生徒たちの中に、共感が生まれ、次第に他人事ではなくなる瞬間。

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それまで、その地域についてほとんど報道された程度の情報しか知らなかったにもかかわらず、生徒たちの中に自然と、何かしないといけない、という責任感が生まれてきます。

テレビ会議が終わってからも、ロサンゼルスの生徒たちは自主的にブログでシリアの生徒たちの写真のストーリーを作成し、彼らの生の日常の姿をリアルな対話から得られたポジティブな面からネガティブな面も含め、発信していきました。

共感を通して、シリアの生徒たちの日常が、他人事ではなくなったとアメリカの生徒たちはコメントしていました。

教育業界の中でテクノロジーの導入がまだ主流ではなかったであろう1998年に設立し、当初戦争の渦中であったアメリカとイラク間でVirtual Exchangeを導入するなど、Global Nomad Groupの信念に感心しました。

よく国際交流は直接に実際の世界で会うからこそ意義がある、という声を聞きます。もちろん、実際に同じ場所で会うことによってより身近に感じることは間違いないとおもいます。(筆者もリアルの場でのGlobal Exchange事業に先月まで参加していました。内閣府青年国際交流事業

それでもこのGlobal Nomad Groupのプログラムによって、直接ではないけれどもVirtualの対話を通し、共感が生まれ当事者意識が芽生え、行動に移した生徒がいます。これはVirtualであっても生徒の心に火をつけたことの証明でしょう。

子供たちの視野を広げ、彼らの中に世界で起こっていることが「他人事じゃなくなる」マインドを芽生えさせる。これは異文化理解やグローバル教育が本来目指しているものと同様であり、Virtualであってもその効果を維持しているといえるのではないでしょうか。

Virtual Global Classroom の動向

Global Nomad Groupをはじめとし、教育テクノロジーの祭典SXSWeduコンファレンスにはその他、アメリカと中東とのVirtual Global Classroomを展開する非営利教育団体 Steven InitiativeQuatar Foundationも出展をし取り組みを紹介していました。彼らの目的もGlobal Nomad Groupと共通していますが、合同授業を中東とアメリカに特化して行っています。

また、Virtual Global Classroomとはタイプが若干異なりますが、インターネットを通し、Pen Palフレンドを世界中に作ってそれぞれの国の紹介をし学び合おう、という教育プログラムを展開するPen Pal School 。ここはオースティン発のEdtech Startupの会社です。

その他、global classrooms, international pen pal projects や異文化間の教育者研修プログラムを展開する KnowMyWorldという団体もあり、テクノロジーを使って、Global教育を活発させる動きが垣間見れます。

ますますVirtual Global Classroomの動きが活発になることで、若い世代に向けさらにGlobal教育の重要性を唱え、異文化間の相互理解を広めていけるのではないでしょうか。

Virtual Global Classroomスケールアップの課題

ところが、これらの取り組みはまだ主流なムーブメントとはなっていません。

ボトムアップで一部のGlobal Nomad Groupのような一部の働きかけによって認知度がようやくあがってきています。

テクノロジーを使って、Global教育、異文化理解をクラスルームに導入していくにあたって下記が課題になってくるでしょう。

  1. Virtual Global Classroomをファシリテートできる指導者(教師)とインターネット接続環境
  2. Global教育、Global Citizenshipに対する重要性が広く理解されること

“アメリカではたった50%の中高生が外国語を学習” といったいまの状況からすると、やはりアメリカでの課題は2.のGlobal教育、Global citizenshipの重要性の意識の問題が特に大きいのではとおもいます。

また、2.のGlobal Citizenshipの重要性が理解されていないので、1.のファシリテートできる人材不足につながってしまうといえます。

特にマイノリティや低所得者層では基礎学力の習得がままならない状態でGlobal Citizenを目指そう、ということに結びつくことが難しくなってきます。(この問題に挑むのが低所得者層子ども向けGlobal教育に触れる場を作るNYのGlobal Language Project  TED talkもあります。)

テクノロジーを使ったVirtual Global Classroomがアメリカ国内全体のGlobal教育の普及にどう底上げして貢献できるのか、それはテクノロジーとは別に、そもそものGlobal教育の意識付けの啓蒙活動と連携していくことがキーとなっていきそうです。

日本国内にもGlobal教育を展開していく上でヒントがあるのか探っていくため、アメリカのVirtual Global Classroomのチャレンジの動向をこれからも追っていきたいとおもいます。

 

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