Futuristが考える教育の未来ビッグアイディア

21世紀型教育:もうはじまってる。あとはスケールすること。

先日、サンフランシスコで開催されたWorld Fair Nanoという未来をテーマにしたイベントで「Future of Education(教育の未来)」のトピックが取り扱われ、21世紀に向けた教育について上手にまとめられたトークセッションを教育関係者ではなく一般の参加者向けに開催された内容となっており、心に響いたのでご紹介したいと思います。

テクノロジーがもともと生活と身近で、これからAI, 自動化全盛期時代に生きるデジタルネイティブの子どもたち。子どもをとりまく教育も時代の変化に合わせるべき (“21世紀型教育”) だと教育現場で言われてます。今年は2017年。21世紀が始まり17年たった教育現場の今では、一部の先進教育現場から21世紀型教育が実践されるようになりました。未来を見据えた教育サービスを提供するEdtech企業や新設学校も出てきています。しかし公共教育全体レベルでは20世紀型教育からの脱却は完全にはできていない、というのがいまの日米共通する状況でしょう。あとはこの21世紀型教育をスケールすること(広く普及させること)が課題となる、という趣旨がこのトークセッション全体を通し語られていました。

technology-2025795_960_720《ちなみにこのWorld Fair NanoというイベントではIT業界だけでなくあらゆる分野の専門家(Futurist) が各分野の未来のビッグアイディアを語るトークセッションが終日企画され「Future of Journalism(ジャーナリズムの未来)」「Future of AI(AIの未来)」から、「Future of Dating(デートの未来)」まで幅広いテーマが扱われました。未来についていろんな角度で柔らかい頭で考える機会がファミリー同伴のイベントで提供されていることにサンフランシスコの土地柄気質を感じました。》

教育のFuturistとして壇上で語っていたのは、社会起業家としても注目され、20代のヤングイノベーターの栄誉として贈られるForbes 30 Under 30 にもノミネートされた現在EdTechスタートアップ企業の創業者Eric Lavin氏です。

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当日トークセッションでピッチをするEric氏

(Eric氏:) 20世紀の教育の目的は、生徒に知識を伝達することだった。未来は、生徒は考察を生み出していく側に立ち、幸せで生産的な市民を育てることが教育の目的となっていく。

そして21世紀教育の新しい目的を果たしていく上で大きく立ちはだかるクエスチョン(ビッグアイディア)の3つを会場にシェアしました。

下記、Eric氏のピッチの中で話されている未来の教育ビッグアイディア3つを紹介します。

未来の教育ビッグアイディア3つ:

1. 幸せの追求

2. 生産性(スキルとキャリア)

3.シティズンシップ(地球市民)

今後21世紀、22世紀の未来の教育へ進化させていく上ではこの3つが大きく問われてくる、とEric氏はいいます。Eric氏のトークと筆者の解説、コメントを交えながらご紹介します。

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1. 幸せの追求 :

情報社会の中で暗記型脱却、学ぶ幸せを見つけるチャンス

Eric氏は情報社会の時代は子どもの学び体験にとってチャンスといいます。

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(Eric氏):これまで20世紀は知識を人間が頑張って覚えることが肝だったが、今の子どもたちは簡単にGoogleで専門的な情報にアクセスできる。デジタル情報と上手に付き合い学習に生かしていくことでこれまで以上に学びを深めることもできるだろう。それによって興味に目覚めその分野のエキスパートの知識を身につけ(場合によっては学校の先生よりもその分野においては知識が長けるということも)学んでいくことに情熱を感じる分野と出会うことができるだろう

情報社会のベネフィットを教育現場に生かしていくことで、学生時代の若い時期に、豊かな学習人生が築いていけるようになる、とポジティブに捉えていることが印象的でした。学生の時期にキャリアの目標を好きなことやパッションと結びつかせて志すことができます。キャリア目標に基づき個人が勉強のゴールを設定し能動的に学んでいくことを可能とします。

また実際に学校以外の大人たち、実世界で活躍するプロの大人とつながることも生徒個人のキャリア観を持つことを助けるでしょう。テクノロジーがさらにそれを容易にし、すでにアメリカではNeprisというEdtech企業がプロの大人と学校の生徒たちをビデオ会議でつなぐサービスを展開しています。今後、このようにコミュニティの大人が教育現場に関わっていくようなこともさらに広がっていくかもしれません。

これは人類の歴史上で、人間の学びの幸せが解放されてきたステージに進化しているとEric氏は語ります。”学生だからまだ早い”と言われていた20世紀の時代は終わり21世紀では”興味あるならやってみましょう”と専門分野に飛び込むことを奨励されるのです。

2. 生産性(スキルとキャリア) :

AIや自動化の中で”人間はより人間らしく”働ける。

AIで仕事奪われるのでは、という論調でネガティブにとらえるより、自動化によってより知的な生き物として働くことができるチャンスと捉えるべきと訴えます。

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(Eric氏): AI, 自動化は世の中の仕事の効率を圧倒的に改善してくれる。運転や窓口、会計業務など、これまで存在している職業を機械が代行するようになる。人間は、機械が行う業務やデータ分析を行い、それを正しく目的に沿って設計し、最終的に人間が判断する役目を担うことになるだろう。それがよりEthical (倫理的)な判断でリーダーシップが発揮できているかどうか、が問われるだろう

AIやデータを駆使するスキル、問題解決力、リーダーシップ、3C (Communicate, Collaborate, Create) スキルの他に、倫理的な判断ができる他者への共感力を発揮していくことが特に大切だとEric氏は述べます。

倫理的な判断力を養うにはやはり実世界に近い形で協働プロジェクトの実践を若いうちから経験していくことが効果的でしょう。すでにプロジェクトベースドラーニング(PBL)は多くの学校が導入しております。さらに今後は知識量を測るテストの点数ではなく、生徒の判断力、共感力といった評価しにくいようなスキルが査定できるようなことが教育現場のニーズとして出てくるでしょう。そこで保護者の方は、もうすでにテストの点数の数字にそこまでこだわる必要がないこと、知識ではなく倫理的判断力、リーダーシップをお子さまに身につけてもらうよう昔の感覚から切り替えていく必要がでてくるでしょう。

3. シティズンシップ(地球市民) :

価値観異なる人がいるコミュニティとどう付き合うか。

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2016年アメリカ大統領選挙各County投票結果。赤はトランプ支持派、青はヒラリー支持者。

(Eric氏): ネットワーク化されたいまの時代、不特定多数の人と簡単につながることができますよね。でもその人が、自分が当たり前だと思っている常識が通用する人とは限らない。それが2016年の選挙結果で辛い現実ですが証明されてしまい、多くの人にとってショックな出来事となりました。そんな世界で子どもたちはこれからどうコミュニティと共生していくのだろうか?私たちは教育の中で解決案を考えなければいけません。

これからの社会を生きる子どもたちは、価値観の違いの溝を深めるのではなく、相互理解に務める姿勢をもつことが大切となってくるでしょう。(旧記事でグローバルシティズンシップについて掲載。)

グローバルシティズンシップ(地球市民)のマインドセットを身につけるには、単に異文化に触れ共感するだけではなく、自国の中に内在する多様性の中も着目し、ローカルなコミュニティの中で協力し巻き込んでいくことが重要となっていくでしょう。

アメリカは西海岸、東海岸の富裕エリート層地域中心に経済やイノベーションの中心を創り出してきました。エリート層同士で似たビジョンの人と繋がっていくことが良しとされてきましたが、革新的な教育機関では、従来のエリートだけで固まる教育から、多様な層の人々が所属するローカルなコミュニティと協働し、世の中に実際に起こっている問題から目を反らすのではなく、共生していく前提で問題解決、行動力を育成する学校が出てきています

21世紀型の高等教育を創造しているMinerva 大学では、ハーバード大やスタンフォード大などの入学資格に合格するレベルのエリート学生が所属している新設大学ですが、学生に”Civic Project” としてキャンパスのあるローカルな自治体と協力するプロジェクトを設けます。サンフランシスコ市内の治安改善、街の清掃計画などの具体的なコミュニティの問題に自治体関係者と共に協働する機会をもちます。

また、サンフランシスコでもっとも新しい私立中学校Millenium School では、一部の富裕層の生徒だけに良質な教育の場を提供するのではなく、生徒たちが社会に出て大人になるとき、コミュニティにいるあらゆるバックグラウンドの大人たちと平等に倫理観を持って協力していく必要があるとし、入学生徒の配置をサンフランシスコ市の実際の人種や世帯年収の割合に近い形に合わせるようバランスを考え入学許可を実施しています。Flexible Tuition (柔軟な学費制度)を導入し、裕福な白人の生徒だけでなく、黒人やヒスパニック系の生徒たちにも平等に教育機会を提供する仕組みを取っています。そして子どものうちから、経済、文化的バックグラウンドが異なる生徒同士とチームワークを築ける力を養います。(Millenium Schoolについての詳細は、Future Edu Tokyoの寄稿記事に掲載してます。)

このようなコミュニティの分断現象は、アメリカだけでなく、日本を含め、世界的にも起こっていくのではと考えます。異なる価値観の人たちと共感をし協働でき問題解決に挑む人材がこれからのグローバルエリート像となっていくのかもしれません

さいごに、教育FuturistのEric氏がビッグアイディアを共有したあとに、会場に参加している家族連れやビジネスマンに向かい、このように呼びかけました。

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未来の教育は、学校関係者や教育界だけに任せるのではなく私たち大人全員で子どもたちを幸せで生産的な地球市民として育てるため、共に教育のイノベーションを各々のコミュニティで起こしスケールさせていきましょう!

“It takes a village to raise a child.” 「ひとりの子どもを育てるには中の大人の知恵と力が必要」というアフリカのことわざがあります。

教育界だけでなく保護者、コミュニティの大人が知識を備え、子どもを見守り、ローカルに働きかけることで、21世紀、22世紀を見据えた教育のスケールを加速させていくことでしょう。

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Futuristが考える教育の未来ビッグアイディア」への2件のフィードバック

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