ミネルバ大学マスターコース:専門家兼ジェネラリストの人物像

最初の1ヶ月を経て

ミネルバ大学院での授業が開始し早くも1ヶ月が経ちました。現在は2つの基礎教科を学んでいます。Formal Analyses(論理、統計、データ分析、プログラミング)とEmpirical Analyses(学びの科学、問題解決手法など)の2つです。大まかにFormal Analysesでは主に批判的思考力を養い、Empirical Analysesではクリエイティブ思考を養います。

来年度以降はより高度な分析手法や意思決定を学んでいき全体を通して、マスターコースの生徒は “専門家兼ジェネラリスト”として、これまで得られた知識を組み合わせ未解決領域をベンチマークし解決案を模索し試行錯誤するために必要なスキル、マインドセットを養っていきます。

今回は、その”専門家兼ジェネラリスト”について詳細を書いていきたいと思ったのですが、その前にマスターコースの授業が始まり最初の1ヶ月の振り返りを簡単にシェアしたいと思います。

この1ヶ月は、私のなかでも様々な気づきが得られたり浮き沈みの激しいチャレンジングな日々でした。初めてである体験ばかりだったからです。簡単に1ヶ月を振り返ると、

  • アクティブラーニング100%の授業
  • 思考する過程を説明すること
  • 多国籍のクラスメイトとのコミュニケーション

この3つが私が想像していた以上にチャレンジングだった点です。

アクティブラーニングの授業では、事前に授業の内容を理解し自分なりの言葉で説明するレベルまでの準備が求められます。具体的に言うと、毎クラス約50-100ページに及ぶ文献を読むことや事前課題を全てやり必要知識を理解することは当たり前のことだと思うのですが、それ以上に自分なりにどのように応用できるのか、この内容がどのように課題になっていくのかなど、授業が始まる前までに思考を繰り返していく必要があります。授業では生徒全員の発言が求められるので、そこで他の生徒の発信と重ね合わせ、内容を授業内でさらに発展させていていきます。この密度の濃い授業のおかげで自分の中の知識の定着は深いものになっていると実感があります。

次に思考する過程を説明することについては、とてもチャレンジングな要素であり日々奮闘中です。例えば、ロジックのあり方、Sound (妥当)な議論、意思決定とはどのようなことなのか定義や原則を学んでいき、それがいまの世の中でどのように活用されているのか?たとえロジカルな主張をしたとしても好意的に捉えられる状況とそうではない状況が世の中では存在していること。その中でどう正しい論理主張を効果的にしていけるのか?という思考の過程を授業開始後まもない状況から、クラスメイトとの議論は、はじまっていきました。ロジックのあり方を覚えることに必死だった私は、そこまで思考力が及んでいなかった点を反省しました。授業で求められているのはただの正解ではなく、思考の過程を論理的に説明し議論をすることです。このとことん実践まで踏み込み個人の思考が試される点はアクティブラーニングの醍醐味なのでしょう。

3つ目は、多国籍のクラスメイトとのコミュニケーションにおけるチャレンジでした。生徒はみんな、それぞれ異なるキャリアのバックグラウンドを持つ学びの意欲が旺盛な人たちです。国籍は様々で、海外在住経験を持ちグローバル環境に慣れたメンバーでクラスは構成されています。(例えば、自分の出身ではない外国の大学を卒業して仕事も外国でしているという人や、筆者のように日本人ではあるけれどもアメリカ在住など、個人のキャラクターが独立していています。)この人はこの国籍出身だから、といったバイアスはありません。このような環境では、的確に授業のコンテクストを掴んで、誰にでもわかるように自分の立場を明確にした上で論理的に発言をしていくことが求められます。まだまだ筆者は自分の言葉ではなく一般論や論文に書いてある内容を引用しがちなので、今後も継続的に立場を明確にして自分の言葉で議論を論理的に組み立てる点を強化していきたいと思っています。

専門家兼ジェネラリストの思考パターン

さて、本題に入りたいと思います。

このマスターコース全体のゴールとして、 “専門家兼ジェネラリスト”になることと述べましたが、ミネルバ大学が定義しているこの専門家兼ジェネラリストはどんな人物像でどのような思考をする人なのでしょうか?

下記、1ヶ月を通した学びの中で私なりに解釈した内容になります。

未解決領域は、各領域の交錯に存在

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イノベーションは、複数分野の交錯する領域で起こり、実際にある特定の問題を解決する人が多様なメンバーで幅広い分野にまたがる につれ、解決しやすくなるとも言われます。

例えば、製薬会社の研究者がある薬の研究で予期せぬ毒物が検出されてしまい新薬研究を妨げてしまいました。毒物学者に相談をしても解決ができなかったので解決チームを多様な専門家たちに募ったところ、毒物学と関連することがないタンパク質の結晶学の専門家がその複雑な問題のパズルを解いたとのことです。結晶学で用いられるメソッドを毒物学の中に応用することでこれまでにない解決案がひも解かれたという事例があります。

未解決事項が、異なる分野の中の規則性を応用することで解決案が見えてくるということです。人間の英知の集大成として、各分野の中の規則性やルールは確立されたものが出てきました。それを他分野にも応用していくことで、新たな解決案を考えていくという発想です。

帰納的思考と演繹的思考の使い分け

 

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これまでに紐解かれていなかった未解決問題に立ち向かっていく”専門家兼ジェネラリスト”には、正しく帰納的思考と演繹的思考の使い分けが求められます。

帰納的思考では、特定の問題を規則性やルールに則って的確に解決していきます。例えば、すでにセオリーが確立されていて、それを理解し、規則通りに適用していく力です。「正解が見えている分野」で正解を出していく力、とも言い換えられるでしょう。おそらくこれまでの伝統的な日本の教育ではこの力が特に重視されてきていたのではないでしょうか。しかしこの特定分野のなかの専門性を確実にマスターする、というところはジェネラリストとして最も基本的な土台になります。

演繹的思考では、不明確な問題を推論を通して解決に導いていきます。例えば、この問題にはこの規則性を発展して応用できるのではないか、と推論し効果的な解決案を考え出していく力です。「正解が見えない分野」で効果的な解決案を考えていく力、ともいえるでしょう。これは実社会の中ですでに多くの人が実践しているのではないでしょうか。日々の仕事で正解は見えないなか、それらしい解決案を試行錯誤を通して導いていくことはビジネス現場などで多くみられます。この推論の過程をいかに効果的にハックし問題解決していくか、については様々なフレームワークやツールが使われます。(デザイン思考、アナロジー思考など)

専門家兼ジェネラリストは帰納的思考で正解を導けるものを解きながら、演繹的思考で解決案を推論を通して導きだし適切な状況で使い分ける柔軟性が求められます。

境界線を引く能力

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そこで次に、”専門家兼ジェネラリスト”は帰納 / 演繹思考を使いこなし、未解決問題についてどこからどこまでが解決可能で、可能ではないかと分ける力が求められます。特に、自分の特定の”中の専門分野”については知識があり状況をよく理解しているので、問題解決の制約となっている要素が何なのかと把握することができます。(例えば、新薬開発においては政府が決める薬事法が制約条件になってしまっている、など。)

そして未解決問題を解決するために、どの部分では自分たちの知識やノウハウで対処できて、どの部分では限界があるので革新的な解決案が必要なのか、を明確にします。革新的な解決案については、”外の分野”の規則性に当てはめ解決のヒントが得られないか、外の専門家にアドバイスを募ってみるなどし、できるだけアイディアを多様化し、その中でも関連性がありそうなところをベンチマークしていきます。

“外の分野”については、知識を全て理解することまでは求められません。すでにその分野のエキスパートがいる上でルールも確立されているため、適切に外部の力を借りたり模倣をすることが求められます。

この境界線を引くレベルに到達できたら、問題解決やイノベーションは間近に見えているのかもしれません。

さいごに

以上、未解決領域について問題解決に導く思考法とプロセスを紹介してきました。専門家兼ジェネラリストの思考の方法や人物像がなんとなくお分かりになったでしょうか?

常に柔軟かつ、批判的思考とクリエイティブ思考、帰納、演繹的思考を適切な状況で使い分け、どこで革新的な解決案が必要なのかを明確に出来て、外の分野の専門家たちとも効果的に協働していける人物像なのだと理解しています。

例えば教育業界で働き小学校の生徒の批判的思考力を伸ばしていきたい、と課題を感じていたとしたら、学校の事情や学習指導要領などどの部分が制約になっているのか考慮していき、どこの部分が革新的な解決案が必要となってくるのか。その部分はたとえば社会人向けの人材育成企業研修で既に実施されていないか?など外の分野にもアンテナを貼ってみたり、企業研修で使われているメソッドを小学校の教育にどう応用できるだろう?と考えてみることなどは有効かもしれません。

自分の専門性から一歩外に出て思考を巡らせてみる。このように実践することから始めていくのも”専門家兼ジェネラリスト”の素養を身につける効果的な方法かもしれません。

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