クリエイティブ思考のパワー

グライダー人間から飛行機人間へ

グライダー人間と飛行機人間の違いは何でしょうか?

飛行機はご存知の通り、エンジンがつき自力で飛ぶ能力を搭載した航空機

グライダーとは、エンジンを持たずに自力では飛ぶことができない航空機

これを教育に応用すると、

戦後の教育システムでは、暗記を通した知識習得に優先順位が当てられ、既存の世の中の理論と仕組みを疑わずに理解することが求められていました。(指導者や上司たちの指示に従う優等生、いわば ”グライダー”人間を社会に生産すること。)

生徒自身が自分で仮説を持ち”クリエイティブ” に考えることを推奨するのは通常授業のカリキュラムで教えることは難しく、飛行機人間 (自分自身の仮説を生み出して自力で推し進められる人材)は育成されにくい環境であったでしょう。

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飛行機が優雅に滑空する絵

テクノロジーの発展でアルゴリズムが世の中の仕組みを効率化してくれるようになり、人間がこれまで記憶し、処理していたことは機械の方がより正確に実現できるようになりました。グライダー人間の役割を機械が担ってくれるようになったので、いまの世代の大人は自分で立てた仮説を元にエンジンを搭載させて飛行機人間へと進化していくことが求められます。

そして子ども達には教育システムの中で仮説を組み立てることを歓迎し飛行機型人間へと自立して飛んでいけるクリエイティブな環境を用意していくことが求められています。

そこで、今回の記事では、

まるでグライダーが、エンジンがつき自力で飛ぶ能力を搭載した飛行機となり優雅に滑空していくように、個人が仮説を組み立てる中で独創性を作り出していく時に必要となるクリエイティブヒューリスティックという考え方について、筆者が通うミネルバ大学院で学んだ内容を紹介したいと思います。

クリエイティブな仮説の組み立て方

“クリエイティブ”な人というのは、自分で仮説を組み立て、継続的に独自の視点をもち仮説を磨きかけていくことを生涯を通して行っていく人だ、と個人的に考えています。

仮説 (Hypothesis)とは、”真偽はともかくとして、何らかの現象や法則性を説明するのに役立つ命題”と一般的に定義されます。

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一般的にサイエンスの分野などで幅広く使われる”仮説”は全3つのステップから構成されます。

  1. 法則性や絶対的なルールを理解
  2. 1のルールや観察から得た解釈、仮定提起
  3. 1と2をまとめ予測を説明

クリエイティビティは 2の”解釈、仮定提起”の部分で発揮させることになります。ここがまさに、それぞれの人によって様々な独創性が取り入れられる部分になります。

クリエイティブヒューリスティック全49の”型”

心理学会の権威 “社会的認知”の父と呼ばれるMcGuire氏がクリエイティブヒューリスティックを自力で仮説を生み出すための思考法として科学的に検証後、全49のテクニックを5つのカテゴリーに分類しました。一つ一つ定義がされ誰にでも教えられるよう体系化がされています。今回は全49を紹介するのは非常に長くなってしまうので大まかなカテゴリー分類を紹介します。

クリエイティブヒューリスティック 5つのカテゴリー

  • カテゴリー1:  観察系ヒューリスティック
    • 起こった現象そのまま特異性も含めて受け入れる
    • ロールプレイイングなどを通したリアルな情報収集
  • カテゴリー2: 分析系ヒューリスティック(シンプルなコンセプト分析)
    • 様々な角度で仮説を分析(類似性をみつける、因果関係を逆にしてみる等)
    • 決まり切った型から抜け出る(逆の立場にたって利益になることを考える、自分をとりまく環境を変える)
  • カテゴリー3: 分析系ヒューリスティック(複雑なコンセプト分析)
    • アナロジー(同様のコンセプト体系を見つけて類推する)
    • 図表にしてコンセプト整理(ツリー図やフローチャートなど)
  • カテゴリー4: リサーチ系ヒューリスティック(過去の研究を再解釈)
  • カテゴリー5: データ系ヒューリスティック(新データ収集、元データ再分析)

特に仮説を作り上げ、解釈や仮定提起をする際に有効なのはカテゴリー1の観察系ヒューリスティックではありのままを受け入れること、ロールプレイングなどを通して先入観を取り払い正確に観察することが有効です。カテゴリー2のシンプルなコンセプト分析では、因果関係を逆にしてみたり自分の常識に捕らわれず新たな視点を取り入れます。カテゴリー3では複雑なコンセプト分析をしながら構造をつかみとります。

それぞれの型を実践を通して適切な状況に合ったものを選び、使いわけることができます。

特に筆者が個人的に役立ったテクニックは、カテゴリー1の”特異性”を受け入れるという概念とカテゴリー3の”アナロジー”です。下記細かくご紹介します。

特異性を受け入れる

仮説を組み立てるとき、常に”良い”仮説を創り上げることが求められます。“良い”仮説とは、1つの側面だけでなく、あらゆる側面を吟味した上で自分なりの解釈を構築することが重要となります。

あらゆる面を吟味するとは、1つの自分が好むアイディアだけでなく、それと対立するようなアイディアも十分理解し観察していくことが大事になります。

例えば、3つ数字の列の規則性を探しなさい、という命題があったとします。

命題:「2-4-6」

“偶数”の規則性なのでは、とまず仮説を持つと思います。

次に、

「4-6-8」、「6-8-10」、「12-14-16」 ⇨ 正

と数列が与えられたとします。規則性は、”偶数かつ、2ずつ増えていく数列” という仮説を次に持つのではないかと思います。

人は心理的に自分がはじめに抱いた仮定は捨てがたいとバイアスを持っているので、”偶数”という前提はなかなか変えられないと思います。

そこで、敢えて自分の意に反することだけれども、

「1-3-5」 ⇨ 正 

ではどうだろうか?と”奇数”のパターンがこの命題に当てはまるかどうか、模索してみます。

奇数の数列「1-3-5」も命題の規則性に合っているということが分かると、さらに仮説を磨いていくことができますよね?

もっと仮説を確認するために、1つずつ増えるこの数列ではどうだろう?

「8, 9, 10」 ⇨ 誤

これは、命題のルールに合っていないということがわかりました。そこで、仮説が徐々に構築されていきます。

当初の仮説:"偶数かつ2ずつ増えていく数列"  

新しい仮説:"偶数奇数関係なく、2ずつ増える3つの数列" 

かなり抽象的になりましたが、

仮説をあらゆる面を取り入れ磨いていくためには、特異だなと思うアイディアを積極的に模索していくことが大切になります。

特に正解、間違いが存在する日本の教育システムで育った価値観だと、特異性を模索していくことは、ネガティブな印象を連想させるかもしれません。これは仮説の振れ幅を確かめ、発展させるための必要なステップとなるのです。

例えば生徒さんで常識と違うような発言をしたら「間違いだ」ではなく、これはこういうことでこの命題には沿っていない、あるいは、こういった場合なら沿っているだろう、というように促していくことで、生徒さん自身の仮説を組み立てる中で大きな発展となっていくと考えます。特異性を生み出してくれる人や事象には感謝をするくらいの気持ちでいるといいかもしれません。

アナロジー

アナロジーは、コンセプトの構造を見て共通性を見出し、類推することです。

難しそうに聞こえますが、中学生数学で応用できるようなロジックになります。例えば、Xという疑問があったとして、その時のテーマをCとすると、

C:X

という関係性の式を見出します。これだけではXを解くことはできないので、同じ関係にあると思われる、A:Bを探し出します。

A:B = C:X (比例関係)

A:BとC:Xが比例関係にある、ということまで突き止められたら、

X= BC/A

と中学生数学を使って求められますよね。

ここでキーとなっていくのは、A:Bのような同じ関係にあると思われる他の例を探すことです。

これは自分でランダムに探すしかありません。ある意味偶然や発想に任せるところがありますが、コツとしては2つあります。

  1. Xを求めるためにこの構造と共通しているものは何だろう?と模索すること
  2. できるだけXと違う分野のものから情報収集をすること

なかなか自分の専門分野の外の世界から情報収集をする時間を持つことは困難ですが、日常生活の中で、最低でも週に1回は違うジャンルの本を読む、などと習慣付けると良いのかもしれません。

ありがたいことに現在ではテクノロジーがアナロジーのアイディア検索にも役立ちます。

筆者の秋学期最後のFinal projectの際に、論文引用する際にアナロジーを使うことを授業で行ったのですが、あるクラスメイトが、AIがキーワードとパターンを検知し、異なるアカデミック分野からキーワードとマッチした論文を探せるツールがあるよ、と教えてくれました。(参考:論文コンセプト検索ツール

膨大なデータを格納するテクノロジーの力も借りて、アナロジーを引きだし、自分の仮説の本題を解決する道しるべと活かしていくことはまさに人間だからこそできる発想方法なのではないでしょうか。

さいごに

以上、クリエイティブ思考の枠組みや実践について紹介していきました。

私自身も自分はクリエイティブなタイプの人間だとは到底思っていませんでしたが、このクリエイティブヒューリスティックを意識して使うようになり、いくつか変わったことがあります。

  • 間違いは”特異性”であって仮説の発展のためにありがたい存在
  • すぐに答えがでないことでも焦らない→アナロジーで考えてみようと寝かせておく
  • 自らをクリエイティブに考えられる状況にわざとおく(携帯のNotiicationを切る、分野の異なる人と対話をする←異業種交流会はアナロジーの交換会だと思って挑むと楽しいです)

実社会だと、どうしても人と違うペースで考えたり、すぐにリスポンスできなかったりすると、この人は不思議だな、と思われてしまうかもしれません。

しかしそれはその人の”個性”の1つになっていくのではと思っています。ご自分のペースで実践できるように取り入れられたらベストなのではと思います。

最後に、

日本の文学博士、外山滋比古氏は、筆者が生まれる30年以上も前もクリエイティブ思考の重要性について既に語っていました。

コンピューターがあらわれて、これからの人間はどう変化していくであろうか。それを洞察するのは人間でなくてはできない。これこそまさに創造的思考である。

–  思考の整理学(1983年)より引用 –

社会が近代化され経済が発展しても、数十年以上も実現できなかったそれぞれの人が仮説を持つ、というこの知的自由を歓迎する世の中はようやく実現できる時代にきているのかもしれません。

テクノロジーの発展する時代の中で、人はもっとクリエイティブに考え仮説を組み立て知的好奇心を満たしたり、世の中の問題解決のために動いていける。学びの定義はこれまでの世の中のシステムの中の枠組みを受け身で理解することから、自ら仮説を創りクリエイティビティを発揮する自由を追求できる知的活動へと進化していくのではと私は楽観視しています。

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ミネルバ大学マスターコース:専門家兼ジェネラリストの人物像

最初の1ヶ月を経て

ミネルバ大学院での授業が開始し早くも1ヶ月が経ちました。現在は2つの基礎教科を学んでいます。Formal Analyses(論理、統計、データ分析、プログラミング)とEmpirical Analyses(学びの科学、問題解決手法など)の2つです。大まかにFormal Analysesでは主に批判的思考力を養い、Empirical Analysesではクリエイティブ思考を養います。

来年度以降はより高度な分析手法や意思決定を学んでいき全体を通して、マスターコースの生徒は “専門家兼ジェネラリスト”として、これまで得られた知識を組み合わせ未解決領域をベンチマークし解決案を模索し試行錯誤するために必要なスキル、マインドセットを養っていきます。

今回は、その”専門家兼ジェネラリスト”について詳細を書いていきたいと思ったのですが、その前にマスターコースの授業が始まり最初の1ヶ月の振り返りを簡単にシェアしたいと思います。

この1ヶ月は、私のなかでも様々な気づきが得られたり浮き沈みの激しいチャレンジングな日々でした。初めてである体験ばかりだったからです。簡単に1ヶ月を振り返ると、

  • アクティブラーニング100%の授業
  • 思考する過程を説明すること
  • 多国籍のクラスメイトとのコミュニケーション

この3つが私が想像していた以上にチャレンジングだった点です。

アクティブラーニングの授業では、事前に授業の内容を理解し自分なりの言葉で説明するレベルまでの準備が求められます。具体的に言うと、毎クラス約50-100ページに及ぶ文献を読むことや事前課題を全てやり必要知識を理解することは当たり前のことだと思うのですが、それ以上に自分なりにどのように応用できるのか、この内容がどのように課題になっていくのかなど、授業が始まる前までに思考を繰り返していく必要があります。授業では生徒全員の発言が求められるので、そこで他の生徒の発信と重ね合わせ、内容を授業内でさらに発展させていていきます。この密度の濃い授業のおかげで自分の中の知識の定着は深いものになっていると実感があります。

次に思考する過程を説明することについては、とてもチャレンジングな要素であり日々奮闘中です。例えば、ロジックのあり方、Sound (妥当)な議論、意思決定とはどのようなことなのか定義や原則を学んでいき、それがいまの世の中でどのように活用されているのか?たとえロジカルな主張をしたとしても好意的に捉えられる状況とそうではない状況が世の中では存在していること。その中でどう正しい論理主張を効果的にしていけるのか?という思考の過程を授業開始後まもない状況から、クラスメイトとの議論は、はじまっていきました。ロジックのあり方を覚えることに必死だった私は、そこまで思考力が及んでいなかった点を反省しました。授業で求められているのはただの正解ではなく、思考の過程を論理的に説明し議論をすることです。このとことん実践まで踏み込み個人の思考が試される点はアクティブラーニングの醍醐味なのでしょう。

3つ目は、多国籍のクラスメイトとのコミュニケーションにおけるチャレンジでした。生徒はみんな、それぞれ異なるキャリアのバックグラウンドを持つ学びの意欲が旺盛な人たちです。国籍は様々で、海外在住経験を持ちグローバル環境に慣れたメンバーでクラスは構成されています。(例えば、自分の出身ではない外国の大学を卒業して仕事も外国でしているという人や、筆者のように日本人ではあるけれどもアメリカ在住など、個人のキャラクターが独立していています。)この人はこの国籍出身だから、といったバイアスはありません。このような環境では、的確に授業のコンテクストを掴んで、誰にでもわかるように自分の立場を明確にした上で論理的に発言をしていくことが求められます。まだまだ筆者は自分の言葉ではなく一般論や論文に書いてある内容を引用しがちなので、今後も継続的に立場を明確にして自分の言葉で議論を論理的に組み立てる点を強化していきたいと思っています。

専門家兼ジェネラリストの思考パターン

さて、本題に入りたいと思います。

このマスターコース全体のゴールとして、 “専門家兼ジェネラリスト”になることと述べましたが、ミネルバ大学が定義しているこの専門家兼ジェネラリストはどんな人物像でどのような思考をする人なのでしょうか?

下記、1ヶ月を通した学びの中で私なりに解釈した内容になります。

未解決領域は、各領域の交錯に存在

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イノベーションは、複数分野の交錯する領域で起こり、実際にある特定の問題を解決する人が多様なメンバーで幅広い分野にまたがる につれ、解決しやすくなるとも言われます。

例えば、製薬会社の研究者がある薬の研究で予期せぬ毒物が検出されてしまい新薬研究を妨げてしまいました。毒物学者に相談をしても解決ができなかったので解決チームを多様な専門家たちに募ったところ、毒物学と関連することがないタンパク質の結晶学の専門家がその複雑な問題のパズルを解いたとのことです。結晶学で用いられるメソッドを毒物学の中に応用することでこれまでにない解決案がひも解かれたという事例があります。

未解決事項が、異なる分野の中の規則性を応用することで解決案が見えてくるということです。人間の英知の集大成として、各分野の中の規則性やルールは確立されたものが出てきました。それを他分野にも応用していくことで、新たな解決案を考えていくという発想です。

帰納的思考と演繹的思考の使い分け

 

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これまでに紐解かれていなかった未解決問題に立ち向かっていく”専門家兼ジェネラリスト”には、正しく帰納的思考と演繹的思考の使い分けが求められます。

帰納的思考では、特定の問題を規則性やルールに則って的確に解決していきます。例えば、すでにセオリーが確立されていて、それを理解し、規則通りに適用していく力です。「正解が見えている分野」で正解を出していく力、とも言い換えられるでしょう。おそらくこれまでの伝統的な日本の教育ではこの力が特に重視されてきていたのではないでしょうか。しかしこの特定分野のなかの専門性を確実にマスターする、というところはジェネラリストとして最も基本的な土台になります。

演繹的思考では、不明確な問題を推論を通して解決に導いていきます。例えば、この問題にはこの規則性を発展して応用できるのではないか、と推論し効果的な解決案を考え出していく力です。「正解が見えない分野」で効果的な解決案を考えていく力、ともいえるでしょう。これは実社会の中ですでに多くの人が実践しているのではないでしょうか。日々の仕事で正解は見えないなか、それらしい解決案を試行錯誤を通して導いていくことはビジネス現場などで多くみられます。この推論の過程をいかに効果的にハックし問題解決していくか、については様々なフレームワークやツールが使われます。(デザイン思考、アナロジー思考など)

専門家兼ジェネラリストは帰納的思考で正解を導けるものを解きながら、演繹的思考で解決案を推論を通して導きだし適切な状況で使い分ける柔軟性が求められます。

境界線を引く能力

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そこで次に、”専門家兼ジェネラリスト”は帰納 / 演繹思考を使いこなし、未解決問題についてどこからどこまでが解決可能で、可能ではないかと分ける力が求められます。特に、自分の特定の”中の専門分野”については知識があり状況をよく理解しているので、問題解決の制約となっている要素が何なのかと把握することができます。(例えば、新薬開発においては政府が決める薬事法が制約条件になってしまっている、など。)

そして未解決問題を解決するために、どの部分では自分たちの知識やノウハウで対処できて、どの部分では限界があるので革新的な解決案が必要なのか、を明確にします。革新的な解決案については、”外の分野”の規則性に当てはめ解決のヒントが得られないか、外の専門家にアドバイスを募ってみるなどし、できるだけアイディアを多様化し、その中でも関連性がありそうなところをベンチマークしていきます。

“外の分野”については、知識を全て理解することまでは求められません。すでにその分野のエキスパートがいる上でルールも確立されているため、適切に外部の力を借りたり模倣をすることが求められます。

この境界線を引くレベルに到達できたら、問題解決やイノベーションは間近に見えているのかもしれません。

さいごに

以上、未解決領域について問題解決に導く思考法とプロセスを紹介してきました。専門家兼ジェネラリストの思考の方法や人物像がなんとなくお分かりになったでしょうか?

常に柔軟かつ、批判的思考とクリエイティブ思考、帰納、演繹的思考を適切な状況で使い分け、どこで革新的な解決案が必要なのかを明確に出来て、外の分野の専門家たちとも効果的に協働していける人物像なのだと理解しています。

例えば教育業界で働き小学校の生徒の批判的思考力を伸ばしていきたい、と課題を感じていたとしたら、学校の事情や学習指導要領などどの部分が制約になっているのか考慮していき、どこの部分が革新的な解決案が必要となってくるのか。その部分はたとえば社会人向けの人材育成企業研修で既に実施されていないか?など外の分野にもアンテナを貼ってみたり、企業研修で使われているメソッドを小学校の教育にどう応用できるだろう?と考えてみることなどは有効かもしれません。

自分の専門性から一歩外に出て思考を巡らせてみる。このように実践することから始めていくのも”専門家兼ジェネラリスト”の素養を身につける効果的な方法かもしれません。

ミネルバ大学マスターコース進学へ – 続き

世の中のどの問題を解決したいか?

ミネルバのマスターコースでは“専門家兼ジェネラリスト”として世の中の問題を解決するための分析力、効果的な意思決定の手法を体系的に学びます。アルゴリズムの根本理解、統計知識、ロジカル思考、また型にとらわれず発見を見出すクリエイティブな思考パターンを幅広い分野の事例を扱いながら習得していきます。社会人になって10年が経とうとしている私にとってこの学習体験にどっぷり浸かることは貴重な経験だと感じています。

入学選考時に聞かれた質問は1つだけでした。

「あなたは世の中のどの問題を気にしていて、どう解決していきたいですか?」

学校教師の祖父母と父を持ち、”これからの世代に求められる教育は私たちの世代で再定義しないといけないだろう” と考えていた私は、教育格差を解消し誰もが目的を持てる世の中に変えていけないか将来にかけ取り組んでいきたいと答えました。卒業までにそのために必要となる思考力、意思決定に必要なスキルを身につけることをゴールにしたいと思っています。

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今回は私がなぜそのように教育格差の問題解決をしたいと考えるのに至ったのか経緯を書いてみたいと思います。(これまでの調査員としての活動総括としても見て頂けたら幸いです。)

固定化された教育格差の連鎖

私はこれまで1年半の間シリコンバレーを拠点として教育現場をリサーチし、その中で教育現場をみてきたものをこのブログでも発信してきました。当初はICT機器が使いこなされ個別化されたカリキュラムが導入されるなど子どものクリエイティビティを養う工夫がされる教育現場が、20世紀の集団教育から脱却し教育においてイノベーションを創っている渦中の場だと感じていました。また、新しいメソッドがどんどん実行され効果を検証し試行錯誤を行う状況は、日本の教育業界にはないような合理性が存在していると感じていました。

しかし様々な地域に足を運ぶと、アメリカが抱える”固定化された教育格差”が生じている現実が見えてきました。

先進的な教育環境は富裕層の家庭出身の子どもたちは享受できていますが、それ以外の特に貧困層が住む地域(特にOakland市やEast Palo Altoなど) の公立学校では必要最低限の授業のクオリティもままならない状況を見てきました。イノベーションというような言葉は一言も出ないような状況です。

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Oakland市のチャータースクール校舎

ほんの一握りのシリコンバレーの裕福な家庭の子どもたちは、真新しいタブレットからアルゴリズムで個別最適化された自分専用のプレイリストまで、学習内容を選び学んでいく贅沢な学習体験をしています。彼らはおそらく一流大学へ進学し、いずれ実社会のコミュニティを似たバックグラウンドの大人同士で形作ってゆくでしょう。アイビーリーグなどの一流大学に通う生徒では、1%の富裕層からの子弟が全体の5割になるということもあり、いまだに卒業生子弟が優先される入学選考なども指摘されています。また学費も年々上昇傾向で一般的な家庭の負担はより大きくなるでしょう。多くの有名大学出身者を雇用する投資銀行、コンサルティング業界など、就職に学閥や卒業生コミュニティを介してのコネクションが重視されています。

小・中学校からクオリティの高い教育を受けてきた子ども達の学びのアウトプット / 出口は、一流大学へ進学し、その後結局限られた人々が似たバックグラウンドを持つコミュニティにたどりついていくパワーゲームの現状があります。生まれた家庭の所得で、その後の将来が固定化されるであろう格差の連鎖はアメリカでは顕著に存在します。

“教育のイノベーション”と言われ新しい未来型の教育を導入しよう、とテクノロジーや教育メソッドは新しいものに進化していっても、享受できる層は今の状況と同じ構図であり続けるとしたら、それは本当に未来を見据えた教育なのだろうか?と疑問を持つようになりました。

この教育の格差の構図を変え、富裕層だけではない、経済的に不利である子どもも含めあらゆるバックグラウンドをもつ個人がポテンシャルを発揮できる世の中を創ることが次世代の教育のあり方なのでは? と私の中で考えが変化していきました。

イノベーションの加速:実験と効果

シリコンバレーでは一方でこの根本的な教育格差の問題解決のためにアクションを起こしている団体とも出会うことができました。困難な問題に取り組む挑戦者に会うたびに刺激を受けていきました。

一つは、サンフランシスコ市内にある私立学校です。(Millenium School別記事) 全米で最も高学費と言われるサンフランシスコ市内の私立学校であるのに、富裕層家庭出身の子どもだけでクラスを構成するのではなく、学費援助を導入することで44%が有色人種の生徒たちで構成し実際のサンフランシスコ市の人口構成に近い形で子ども達が協働できる場をつくります。そこでは次世代のエリートたちも実社会のリアルな様々なバックグラウンドの同世代と学びを共にすることで、将来社会で多様性の中で協働できる人を育てていきます。研究機関と連携し客観的なデータに基づく学習効果やソフトスキル (共感力など)を評価をしていきます。

もう一つは、貧困層の生徒たちを対象に個別化システムを導入し一人一人の学習傾向を引き出し能動的な学習意欲を掻き立てる指導法を導入することによって落ちこぼれを防ぎ四年制大学卒業を目標に掲げるチャータースクールです。(Summit Public School別記事) 卒業生のこれまでの99%が修了したという高い実績を誇る取り組みです。教育者とエンジニア、データ解析チームが連携し生徒個別の学習状況から最適な学習方法を考慮し教育者の指導法を全面でサポートします。裕福な家庭出身の白人男性中心で意思決定がされる社会で有色人種や経済的に不利な家庭出身者も自立し活躍できるような基礎力を中高学校で身につけるため、学びの科学、テクノロジー、データ解析の力が合わさった教育メソッドを全米11拠点の学校で導入します。

以上の団体のような団体を直接訪問し実務者の方との対話を通し、

あらゆるバックグラウンドの子どもたちがポテンシャルに届く機会を提供し、実際の教育効果、世の中のインパクトを検証していく動きこそが、イノベーションを加速化させていく大きな土台なのでは、と考えるようになりました。

ローカル単位で変えていくこと

日本はアメリカと異なり、州によって法律が異なる連邦国家ではなく、中央集権型の教育システムを持っています。しかし、日本の教育格差の問題は、就学援助制度の利用者率は増加傾向の約16% (2012年)となっており、東京、大阪などの都市部は全体の3割弱にも上っており、日本の中でも子どもの貧困は将来の日本に大きく影響を与える問題となっています。これまで以上に2020年に向けた教育改革の政策を始め日本政府のトップダウンの意思決定を様々なステークホルダーである大人たちが批判的な目で評価していくことが重要でしょう。

不利な立場にいる子どもたちに学習機会を提供し貧困連鎖から抜け出せるサポートとあらゆる個人が可能性を試せる機会を今まさに日本でアメリカのように格差が進行してしまう前に導入することが大事なのではないかと考えます。

その動きを日本の中で加速化するには、

あらゆるバックグラウンドの子どもたちがポテンシャルに届く教育機会を実際に提供し、その上での有効性、学習効果、世の中のインパクトを検証していく動きが必要と考えます。優秀な技術者やデータサイエンティストを教育現場に取り込んでいくことも必要ですが、それ以上に、教育機関が新しい教育施策を実行するときに効果検証を客観的データで評価するためのサポートをできないかと私は考えています。

それを通し、どの教育手法が効果があるのか可視化され、新しいアプローチが様々な形で展開されノウハウを切り開いていくよう教育現場でイノベーションを加速化していく手助けをしていきたいと思います。

ジェネラリストとして意思決定すること

以上、教育格差の課題について書いていきましたが、これからの教育格差の解決に向け、それまでのように教育界だけでは根本解決していくことに限界が出てくるかもしれません。教育分野に予算が回ることだけで解決されるのだろうか、ということも含め幅広く問題を捉え解決策を導いていくことが重要でしょう。

現在のシステムは一つの各分野の専門家たちが最良と考えたものでほぼ意思決定がされ、その集合体で世の中を形作っているのではと思います。アメリカの建築家、システム理論家、作家、デザイナー、発明家である伝説的人物と言われた20世紀の”専門家兼ジェネラリスト” Buckminster Fuller氏は数十年前にこのようにコメントしています。

専門化は孤立と混乱を個人の中に作リ出し、個人が他者に対して、考えること、社会的行動をとる責任から逃れることを良しとしてしまった。結果的に国際的不一致やイデオロギーの不調和を増長する偏見を生み出してしまい、次々に紛争へとつながってしまう。

もし世の中の人々が専門分野の世界だけでなく、コアコンセプトを様々な分野で学び常に実世界の現象と関連付けていき意思決定をしていったら、分野間の距離はより縮まるのではないか。社会をより良い方向へと動く力は加速化されるかもしれません。

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そうなった世の中は想像の世界でしかないですが、ミネルバのマスターコースの中の小世界で垣間見れることでしょう。マスターコースのクラスは私を含め8名の様々なエキスパートの多国籍に渡るプロフェッショナル達が集まっています。教育者、起業家、宗教家、コンピューターサイエンティストなど多岐に渡る他のエキスパート達と協働し共に学び”専門家兼ジェネラリスト”として成長していくことを、今から楽しみにしています。

おそらく私個人の中の変化もこれから顕著にでてくるでしょう。教育分野以外の観点を取り入れることでこれまでにない視点を持ち教育課題を捉えることができるでしょう。

さいごに

きっとミネルバで学ぶ20ヶ月は今までに経験したことのないような思考方法をし気づきを得ていくと思います。その中では私は一貫して, 自分をさらけ出し変化していくことに敏感でいる状態 (Vulnerable) でいたいと思っています。

これからミネルバでの学び体験での過程できっと頑固になって変化を受け入れられない時もあるでしょう。また優秀なクラスメイトに劣等感を持ったり、価値観の違いから議論の衝突もあるかもしれないです。そんな時は原点に立ち還り弱みを認めて、できない状態でいる自分を冷静に観察したいと思います。

コースを修了する約二年後は今の思考からどう変化していくのか楽しみでもありますが、時間は有限です。ミネルバで学びながら、次は実務として教育機関が意思決定できるサポートを同時並行でしていき、変化に機敏な状態で二年間学んでいきたいと思います。

(このブログもしばらくはどのようにアップデートするか模索していきますが気づきを定期的に書いていきたいと思います。)

ミネルバ大学マスターコース進学へ

私は2015年10月から約1年半ソニーの教育系スタートアップ事業に携わり、サンフランシスコを拠点にアメリカ教育業界のリサーチ活動をしてきました。また、実際にみてきたアメリカの教育現場を個人的な活動としてこのブログを通して伝えてきました。

今後の予定として今年9月から、新設のミネルバ大学 (Minerva School)マスターコース(修士課程) へ第1期生として日本人としても初めて進学することになり、「応用分析と意思決定」 (Applied Analyses and Decision Making) というテーマを研究することになりました。

今回の記事では、ミネルバ大学マスターコースでどんなことを学んでいくのか、私がミネルバで学ぶことを選択した経緯と進学後取り組みたいことについて2回に分けて書いてみたいと思います。

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(右)筆者 ISTE 全米規模最大の教育コンファレンスにて

ミネルバ大学とは

ミネルバ大学は2014年に開校されたサンフランシスコを拠点とする4年制総合大学です。創始者のベン・ネルソン氏が既存の大学が抱える課題を解決することを設立背景としシリコンバレーのベンチャーキャピタルから資金調達後、ハーバード大学をはじめとするアイビーリーグの学長、学部長らを参画に巻き込み設立されたスタートアップの大学です。すべての才能ある学生が未来の社会で活躍できる実践的な知恵を適切な学費で提供する大学です。

ミネルバ大学の授業は、オンラインで行われるため世界中のどこからでも受講が可能です。学部生たちは4年間で世界7カ国の都市を巡り、現地の企業・NPO・行政・研究機関等と協働したプロジェクト学習・インターンを経験します。 また、学生への経済的な負担軽減のために、学費は一般の米国私立有名校の1/3以下です。設立3年目にして、留学生比率は83%、学生の出身国が54カ国となる多様性を実現しています。2017年度の入試では僅か1.9%の合格率となります。(ハーバード大学5.4%, スタンフォード大学4.8%となるのに比較すると競争率は高く学生に人気となっています。)

ミネルバのマスターコース:”専門家兼ジェネラリスト”育成

ミネルバ大学は社会人向けを対象とし実践プログラムとして修士学位のマスターコースを今年から開講しました。授業は全てオンラインで実施され全20ヶ月のコース習得期間、修士論文準備期間で構成されます。コース習得期間中では、1つの専門領域からでなく、Interdisciplinary (異なる学問分野またがる)幅広い学問の領域から複雑な問題を扱い、データに基づく分析をし、問題特定、適切な意思決定を行い、最終的に有効性を査定していく能力を習得します。

特にInterdisciplinary(異なる学問分野またがる)分野を扱う点がこのマスターコースがユニークな特色となっています。”専門家兼ジェネラリスト” として1つの学問の原則を、他の学問に応用し未知な課題に対し新たに解決策を見出していく力を養います。コンピューターサイエンスのアルゴリズムや原則を主な軸とし、経済制裁の有効性や、行動経済学、ビジネス、犯罪学など様々な学問領域に関連する複雑なグローバル問題やジレンマを扱い、問題解決の手法をディスカッションしていきます。

ミネルバマスターコース副学部長はこのようにコメントしています。

現代の実社会は流動的で、個人のキャリアは常に進化し続け、関心事項も変わっていく。そして世界も絶えず変わり続けている。私たちはマスターの学生たちにパワフルかつAgile(機敏)になって欲しい。そして今後どんな状況に遭遇しても順応できるよう備えていって欲しい。

これまで特定の専門性をもつことが一人前だと重視されてきた時代ですが、既存のシステムの中では紛争、資本主義による富の分配の不平等、貧困問題、所得格差による教育機会の格差など様々な解決困難な問題が残っています。これらの複雑な問題は、1つの分野のアプローチで解決するのは困難で世の中の様々な要因が絡み合ってできています。ミネルバのマスターコースは、今後立ちはだかる課題に対して、1つの分野に特定した専門家よりも、複数またがる領域の原則を見出し未知の根本的な問題を特定できるSynthesizer(組み立てていける人)を育成するプログラムです。

ミネルバ大学で学ぶことを選択した経緯

これまで教育分野の問題解決に関心を持ち教育市場を幅広くリサーチしてきた私がなぜ専門的な教育学のではなく、このコースを選択したのか?

それは、現代未解決の問題について向き合っていくため理論的で包括的なカリキュラムを提供する教育機関は、ミネルバ大学以外にないと考えたからです。

そして私は未解決の問題の一つとして、根深い教育格差の問題に取り組んでいきたいと考えています。専門分野に限定されず様々な異なる分野の視点から教育格差問題を捉え、未来の教育のあるべき姿に向け適切に意思決定していける知識、能力を身に付けたいと考えました。先人の教育エキスパートとは異なる観点から問題解決に取り組むことで教育にインパクトを与えたいと考えます。

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Minerva School Master’s programの実験プログラムに参加したマスター生 (Homepageより)

次回に私がミネルバに進学し特にどんな教育課題に取り組んでいきたいのか。私がこれまで1年半アメリカの教育現場を見てきた活動を通して感じたことも踏まえて書いていきたいと思います。

 

 

Futuristが考える教育の未来ビッグアイディア

21世紀型教育:もうはじまってる。あとはスケールすること。

先日、サンフランシスコで開催されたWorld Fair Nanoという未来をテーマにしたイベントで「Future of Education(教育の未来)」のトピックが取り扱われ、21世紀に向けた教育について上手にまとめられたトークセッションを教育関係者ではなく一般の参加者向けに開催された内容となっており、心に響いたのでご紹介したいと思います。

テクノロジーがもともと生活と身近で、これからAI, 自動化全盛期時代に生きるデジタルネイティブの子どもたち。子どもをとりまく教育も時代の変化に合わせるべき (“21世紀型教育”) だと教育現場で言われてます。今年は2017年。21世紀が始まり17年たった教育現場の今では、一部の先進教育現場から21世紀型教育が実践されるようになりました。未来を見据えた教育サービスを提供するEdtech企業や新設学校も出てきています。しかし公共教育全体レベルでは20世紀型教育からの脱却は完全にはできていない、というのがいまの日米共通する状況でしょう。あとはこの21世紀型教育をスケールすること(広く普及させること)が課題となる、という趣旨がこのトークセッション全体を通し語られていました。

technology-2025795_960_720《ちなみにこのWorld Fair NanoというイベントではIT業界だけでなくあらゆる分野の専門家(Futurist) が各分野の未来のビッグアイディアを語るトークセッションが終日企画され「Future of Journalism(ジャーナリズムの未来)」「Future of AI(AIの未来)」から、「Future of Dating(デートの未来)」まで幅広いテーマが扱われました。未来についていろんな角度で柔らかい頭で考える機会がファミリー同伴のイベントで提供されていることにサンフランシスコの土地柄気質を感じました。》

教育のFuturistとして壇上で語っていたのは、社会起業家としても注目され、20代のヤングイノベーターの栄誉として贈られるForbes 30 Under 30 にもノミネートされた現在EdTechスタートアップ企業の創業者Eric Lavin氏です。

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当日トークセッションでピッチをするEric氏

(Eric氏:) 20世紀の教育の目的は、生徒に知識を伝達することだった。未来は、生徒は考察を生み出していく側に立ち、幸せで生産的な市民を育てることが教育の目的となっていく。

そして21世紀教育の新しい目的を果たしていく上で大きく立ちはだかるクエスチョン(ビッグアイディア)の3つを会場にシェアしました。

下記、Eric氏のピッチの中で話されている未来の教育ビッグアイディア3つを紹介します。

未来の教育ビッグアイディア3つ:

1. 幸せの追求

2. 生産性(スキルとキャリア)

3.シティズンシップ(地球市民)

今後21世紀、22世紀の未来の教育へ進化させていく上ではこの3つが大きく問われてくる、とEric氏はいいます。Eric氏のトークと筆者の解説、コメントを交えながらご紹介します。

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1. 幸せの追求 :

情報社会の中で暗記型脱却、学ぶ幸せを見つけるチャンス

Eric氏は情報社会の時代は子どもの学び体験にとってチャンスといいます。

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(Eric氏):これまで20世紀は知識を人間が頑張って覚えることが肝だったが、今の子どもたちは簡単にGoogleで専門的な情報にアクセスできる。デジタル情報と上手に付き合い学習に生かしていくことでこれまで以上に学びを深めることもできるだろう。それによって興味に目覚めその分野のエキスパートの知識を身につけ(場合によっては学校の先生よりもその分野においては知識が長けるということも)学んでいくことに情熱を感じる分野と出会うことができるだろう

情報社会のベネフィットを教育現場に生かしていくことで、学生時代の若い時期に、豊かな学習人生が築いていけるようになる、とポジティブに捉えていることが印象的でした。学生の時期にキャリアの目標を好きなことやパッションと結びつかせて志すことができます。キャリア目標に基づき個人が勉強のゴールを設定し能動的に学んでいくことを可能とします。

また実際に学校以外の大人たち、実世界で活躍するプロの大人とつながることも生徒個人のキャリア観を持つことを助けるでしょう。テクノロジーがさらにそれを容易にし、すでにアメリカではNeprisというEdtech企業がプロの大人と学校の生徒たちをビデオ会議でつなぐサービスを展開しています。今後、このようにコミュニティの大人が教育現場に関わっていくようなこともさらに広がっていくかもしれません。

これは人類の歴史上で、人間の学びの幸せが解放されてきたステージに進化しているとEric氏は語ります。”学生だからまだ早い”と言われていた20世紀の時代は終わり21世紀では”興味あるならやってみましょう”と専門分野に飛び込むことを奨励されるのです。

2. 生産性(スキルとキャリア) :

AIや自動化の中で”人間はより人間らしく”働ける。

AIで仕事奪われるのでは、という論調でネガティブにとらえるより、自動化によってより知的な生き物として働くことができるチャンスと捉えるべきと訴えます。

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(Eric氏): AI, 自動化は世の中の仕事の効率を圧倒的に改善してくれる。運転や窓口、会計業務など、これまで存在している職業を機械が代行するようになる。人間は、機械が行う業務やデータ分析を行い、それを正しく目的に沿って設計し、最終的に人間が判断する役目を担うことになるだろう。それがよりEthical (倫理的)な判断でリーダーシップが発揮できているかどうか、が問われるだろう

AIやデータを駆使するスキル、問題解決力、リーダーシップ、3C (Communicate, Collaborate, Create) スキルの他に、倫理的な判断ができる他者への共感力を発揮していくことが特に大切だとEric氏は述べます。

倫理的な判断力を養うにはやはり実世界に近い形で協働プロジェクトの実践を若いうちから経験していくことが効果的でしょう。すでにプロジェクトベースドラーニング(PBL)は多くの学校が導入しております。さらに今後は知識量を測るテストの点数ではなく、生徒の判断力、共感力といった評価しにくいようなスキルが査定できるようなことが教育現場のニーズとして出てくるでしょう。そこで保護者の方は、もうすでにテストの点数の数字にそこまでこだわる必要がないこと、知識ではなく倫理的判断力、リーダーシップをお子さまに身につけてもらうよう昔の感覚から切り替えていく必要がでてくるでしょう。

3. シティズンシップ(地球市民) :

価値観異なる人がいるコミュニティとどう付き合うか。

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2016年アメリカ大統領選挙各County投票結果。赤はトランプ支持派、青はヒラリー支持者。

(Eric氏): ネットワーク化されたいまの時代、不特定多数の人と簡単につながることができますよね。でもその人が、自分が当たり前だと思っている常識が通用する人とは限らない。それが2016年の選挙結果で辛い現実ですが証明されてしまい、多くの人にとってショックな出来事となりました。そんな世界で子どもたちはこれからどうコミュニティと共生していくのだろうか?私たちは教育の中で解決案を考えなければいけません。

これからの社会を生きる子どもたちは、価値観の違いの溝を深めるのではなく、相互理解に務める姿勢をもつことが大切となってくるでしょう。(旧記事でグローバルシティズンシップについて掲載。)

グローバルシティズンシップ(地球市民)のマインドセットを身につけるには、単に異文化に触れ共感するだけではなく、自国の中に内在する多様性の中も着目し、ローカルなコミュニティの中で協力し巻き込んでいくことが重要となっていくでしょう。

アメリカは西海岸、東海岸の富裕エリート層地域中心に経済やイノベーションの中心を創り出してきました。エリート層同士で似たビジョンの人と繋がっていくことが良しとされてきましたが、革新的な教育機関では、従来のエリートだけで固まる教育から、多様な層の人々が所属するローカルなコミュニティと協働し、世の中に実際に起こっている問題から目を反らすのではなく、共生していく前提で問題解決、行動力を育成する学校が出てきています

21世紀型の高等教育を創造しているMinerva 大学では、ハーバード大やスタンフォード大などの入学資格に合格するレベルのエリート学生が所属している新設大学ですが、学生に”Civic Project” としてキャンパスのあるローカルな自治体と協力するプロジェクトを設けます。サンフランシスコ市内の治安改善、街の清掃計画などの具体的なコミュニティの問題に自治体関係者と共に協働する機会をもちます。

また、サンフランシスコでもっとも新しい私立中学校Millenium School では、一部の富裕層の生徒だけに良質な教育の場を提供するのではなく、生徒たちが社会に出て大人になるとき、コミュニティにいるあらゆるバックグラウンドの大人たちと平等に倫理観を持って協力していく必要があるとし、入学生徒の配置をサンフランシスコ市の実際の人種や世帯年収の割合に近い形に合わせるようバランスを考え入学許可を実施しています。Flexible Tuition (柔軟な学費制度)を導入し、裕福な白人の生徒だけでなく、黒人やヒスパニック系の生徒たちにも平等に教育機会を提供する仕組みを取っています。そして子どものうちから、経済、文化的バックグラウンドが異なる生徒同士とチームワークを築ける力を養います。(Millenium Schoolについての詳細は、Future Edu Tokyoの寄稿記事に掲載してます。)

このようなコミュニティの分断現象は、アメリカだけでなく、日本を含め、世界的にも起こっていくのではと考えます。異なる価値観の人たちと共感をし協働でき問題解決に挑む人材がこれからのグローバルエリート像となっていくのかもしれません

さいごに、教育FuturistのEric氏がビッグアイディアを共有したあとに、会場に参加している家族連れやビジネスマンに向かい、このように呼びかけました。

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未来の教育は、学校関係者や教育界だけに任せるのではなく私たち大人全員で子どもたちを幸せで生産的な地球市民として育てるため、共に教育のイノベーションを各々のコミュニティで起こしスケールさせていきましょう!

“It takes a village to raise a child.” 「ひとりの子どもを育てるには中の大人の知恵と力が必要」というアフリカのことわざがあります。

教育界だけでなく保護者、コミュニティの大人が知識を備え、子どもを見守り、ローカルに働きかけることで、21世紀、22世紀を見据えた教育のスケールを加速させていくことでしょう。

デザイン思考 教育分野への応用

先生はデザイナー

ここ数年アメリカでは、デザイン思考は教育現場で先生がデザイナーとなって学校の問題解決をしていくツールという文脈で様々な成功事例を創り出し、ナレッジシェアをし合う先生ネットワークができています。

デザイン思考が、ビジネス以外の教育分野でも活用されていることは、まだ日本では一般的にはあまり知られていないかもしれません。

この記事ではデザイン思考が、教育現場にも応用されているアメリカの例をご紹介し、日本でも教育課題解決を形にしていくアイディアのヒントとして、こういうことも出来て、こういうアプローチもある、という視点で以下のような流れでご紹介できたらと思います。

  • デザイン思考の5つのステップ:クリエイティブで失敗を恐れずに前に進んでいくプロセス
  • デザイン思考の失敗を恐れず前に進む (Learning by Doing)特性が生徒主体型教育と親和性あり
  • 教育現場の問題解決ツールとしてのデザイン思考
  • 先生はデザイナー:教育現場の問題大小関わらず解決していく事例紹介

デザイン思考の5つのステップ

デザイン思考は、「人間中心デザイン」に基づいた発想法で、“デザイナーが元々備わっているクリエイティブなアイディアを引き出す発想法”をデザイナーでない人にも身につけられるよう、現在ではデザイン業界以外の分野に広がり、ビジネスの分野で活用されていることをよく聞くようになりました。不可解で難しい問題に直面した状況で、ロジカルな左脳を使った発想ではなく右脳を使ったデザイン思考の観点から発想をすることで、イノベーションを生み出すことにつながると注目され、現在では多くのビジネスマンやビジネススクールでも学習されてます。

火付け役はアメリカのデザインコンサルティングファームのIDEO社です。問題発見から問題解決に到達するまでの5つのステップを、非デザイナーの誰でも思考法が身につくよう体系化しました。それが、Empathy (共感・理解), Define (定義・明確化), Ideate (アイディア開発、創造), Prototype (プロトタイプ), Test (テスト)の5つのステップです。
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「人間中心デザイン」に基づいて、モノではなく、人に着目して考えます。この5つのステップを通し、ユーザーを深く理解し共感し、ユーザーの問題を特定し、解決策を形にしていきます。このステップを何度も繰り返す (Iterate)ことで改善点を生かしさらに良いプロトタイプ(試作品)を作っていきます。常にユーザーの視点に立ち、立ち止まることなくアイディアを形にしていくクリエイティブで失敗を恐れずに前に進んでいくプロセスといえるでしょう。


では、教育現場とはどうのようにつながってくるのでしょう?

デザイン思考の教育現場とのつながり

デザイン思考と構成主義

デザイン思考のコンセプト自体が、生徒主体とする教育法と相性が良いと言われてます。特に、デザイン思考の失敗を恐れず次々とアイディアを形にし実践を繰り返していく過程で学ぶ、“Learning by Doing” の要素が、子どもの教育で自ら考え抜く力を養う教育法(構成主義)に通じるのではという考えです。(構成主義はデューイ、ピアジェらが説いた教育理論で、子供中心、オープン・エンド、プロジェクトベース、先生は具体的な教えを強制せず、学習者を注目の中心に置いた指導法です。)

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生徒たちは必要最低限の知識だけを持ち試行錯誤を繰り返します。正解は先生が出すのを待つのではなく、生徒たちが仮説を持ちながら探っていきます。先生は、生徒たちが一通りもがいて、行き詰まった時にだけ進行を手助けする程度です。

生徒たちは、この濃い学びを通し、アカデミックの内容、批判的思考、問題解決力、他人と協力すること、コミュニケーション、主体的学習、自己肯定感が身につき、Deeper Learning21世紀型の新しい状況に適切に知識を応用していくスキルが身についている学習効果)の状態を生み出せると言われています。

デザイン思考=教育現場の問題解決ツール

また、デザインファームIDEO社は“先生はデザイナー”とし教育現場の問題を解決していくことを次のように推奨して言っています。

“世界の教室、学校は毎日、先生のフィードバックから細かい日常のスケジュールまで様々なチャレンジと向き合っている。どんなスケールの問題でも教育者が直面するチャレンジはリアルで複雑で多様である。だからこそ、教育者は常に新しい観点、ツールやアプローチが必要となってくる。デザイン思考はその中の1つだ。”

教育現場で教育者が問題解決をする際の新しいツールの1つとしてデザイン思考が活用できると唱っています。

デザイン思考の教育現場問題解決事例

では実際にデザイン思考を活用して、教育現場の問題解決をしていく事例を2つご紹介します。学校を創る大型プロジェクトから、教室のレイアウトを変える、など小さなプロジェクトまで問題の大小問わず様々な問題解決が行われていることがわかると思います。

1. デザイン思考で新しい学校創設: Alpha Public School Cindy Avitia High School

シリコンバレーの郊外、East San Joseにチャータースクールの高校Alpha public school Cindy Avitia High School がデザイン思考をベースとし設立されました。

downloadこの地域はSan Jose市の郊外に位置し貧困層やラテンアメリカ系やベトナム系移民が多く人口を占める地域です。

校長先生は、コミュニティの家族たちの問題を解決する学校をつくるため、East San Joseの保護者中心に多様なメンバーのボランティア有志を集め、Alpha Public Schoolの高校を設立するデザインプロジェクトを結束しました。

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Alpha Public School が目指す保護者と先生の連携システム

“どうやったら、East San Joseの大学進学を目指す高校生を増やすことができるだろう?” この保護者が一番懸念してる問いかけをスタートとし、生徒と保護者に80回以上インタビューを実施します。そこでわかったことは、保護者自体が、大学進学について資金面でネガティブな気持ちを持ち、それが子どもにも伝わり子どもも大学進学をあきらめてしまう、という真相が見えてきました。保護者を学校の中に巻き込んでいくことがKeyであるとつきとめます。

そこで解決策を形づくるため、様々な予算などの制約はまずは置いておいて、学会の研究論文や上位校の大学進学プログラムをベンチマークしました。そして、運営資金がほぼゼロのAlpha Public Schoolでは、大学カウンセラーをボランティアで雇い学校に常駐する案がまず出ました。また、East San Joseの保護者たちは、語学や文化の壁があり学校の関係者から情報を仕入れるより、身近で顔見知りの保護者の口コミから情報入手することから、保護者の中からリーダーを選出し、大学カウンセラーがそのリーダーをトレーニングすることにしました。このリーダー達は自分が親しみのある保護者グループをとりまとめ、リードしていきます。

この保護者リーダーを育て保護者コミュニティの中でアンバサダーになっていくCollege promoter parent leadership programを、Alpha public school の中学校で試験的に実施してみました。高校が2015年秋に設立されてからもこのプロトタイプの結果を精査しフィードバックを集めながら改善をし続けています。成果はこれから検証されていくことですが間違いなく保護者のマインドセットはこのプログラムによって変わってきたはずです。

2. 生徒が心地いい教室のデザインを:New York先生のデザインプロジェクト

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Design thinking for educators Websiteより

ニューヨークの2年生の担当マイケル先生は、デザイン思考と出会ってから、生徒達にいままで一度も教室で何が心地いい?と質問したことがないことに気付きました。

そこで一番ベストな環境のデザインを考え出すために生徒達にダイレクトに問いかけてみることを決めました。生徒たちからは続々とアイディアが出ました。

生徒達のインプットに基づいて、生徒の教室のデザインのニーズにもっと合わせられるように、再度デザインし直すことができました。黒板の位置を下げて生徒達はもっと先生が組み立てた内容が見れるようになりました。また、ちょっとした空きスペースで生徒が自由に勉強したことを振り返られるこじんまりとしたプライベートなスペースを創りました。

生徒達は以前よりももっと集中するようになりもっと流動的に教室を動き回るようになったとのことです。現在では、マイケル先生は生徒たちの学習体験を効果的に形作るために生徒たち自身を巻き込むようにし続けているそうです。


「人間中心デザイン」を学校現場で実践し問題解決をしていくことを見ていきましたが、すぐに授業計画を完全に変えて実行ができるほど容易なものではないでしょう

これを実現するには、インタビューできる環境、プロトタイプをテストする協力者、ともにチームを組む仲間(すごく大事)、など様々なリソースが必要になってくるでしょう。また、問題解決をしたいと思う意欲と自分自身がこのデザイン思考のスキルやマインドセットを習得することも大きく前提になってきます。(筆者も勉強中です。)

そこで最後に、ご興味を持った方のためにデザイン思考のスキルを学べるリソースや環境をご紹介したいと思います。

(参考)デザイン思考教育分野の応用・便利情報

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デザイン思考を教育現場に応用する中で私がリサーチした中で有効なリソースの紹介します。

  • IDEO for educators ツールキット
    • 座学で自己学習できる先生向けのデザイン思考を教育現場で活用する教科書。このリンクで名前とE-mailを登録するだけで無料でダウンロードできます。(語学は英語、フランス語、スペイン語、韓国語があるのですが残念ながら日本語はまだないようです。)
  • d.school K-12 Labo ネットワーク
    • スタンフォード大学元祖d.schoolが運営する学校教育専門のネットワーク。このネットワークでは様々なデジタルチャットなどで先生たちのネットワークに入りベストプラクティス共有などされています。Twitterで毎週水曜日夜に、#DTK12chat でトークも展開されています。無料のワークショップなども頻繁に開催されてます。
  • Nueva Design Institute
    • ベイエリアで有名のデザイン思考活用を先駆ける先進的学校Nueva Schoolが開催する、先生向けのトレーニングプログラムです。密度の濃い4日間のワークショップ。今年は6月に2回に分けて実施されるようです。実は筆者も今年参加を検討中です。Nueva Schoolの現場の先生から直接教わる貴重な機会で費用は1,500 USDとやや高めですが参加された人の感想を聞くと、皆、ぜひ行った方がよい!とおすすめしています。
  • Teachers Guild
    • IDEOが監修するユニークな先生のオンラインコラボレートネットワーク。もちろん無料。アメリカまで行かなくてもこのネットワークに入ることで、バーチャルでデザイン思考の教育プロジェクトに参加できます。(自分の問題解決事案を持ってきて一緒に解決のアイディアをもらうことだってできてしまう。)オンラインで問題解決の実践を通して学ぶことができるのと、デザイン思考を活用して教育現場にイノベーションを起こしている世界中の先生たちとのコネクションもできるのは非常に有意義でしょう。
  • 番外編:コミュニティに入る or 創ってみる
    • 身近に関心がある人同士でコミュニティを創ってみるか既にあるなら入ってみてもよいでしょう。実際にデザインプロジェクトに関わることで多くのことが学べるはずです。
    • Aril Studios : こちらは私のデザイナーで教育者である友人が設立したデザイン思考で教育課題を解決していくデザイナー集団コミュニティです。私もその中のArilとして最近加入させてもらいました。これからどんな教育課題を多様なエキスパートのメンバーと一緒に取り組んでいくのか楽しみです。

大統領選挙後のいま、私たちが子どもたちに話すべきこと。

大統領選挙発表後、全米教師たちに向けられたメッセージ

昨日 11月8日、アメリカ大統領選挙で共和党トランプ氏が勝利しました。この夜は多くの大人たちが絶望、悲観など様々な感情を過去にない程表現しました。トランプ氏が唱える”Make America Great Again” 、憎しみがベースとなった経済の保護主義、移民、外交政策を進めアメリカはどうなるのだろう。多くの大人たちが絶望する中、未来の社会に生き抜く子どもたちにこの状況をどう説明したら良いのか。教育関係者にとどまらず親である大人たちは頭を抱えた瞬間でした。

そんな中、選挙発表の夜、人種平等教育専門家Ali Michael氏が「いま、私たちが子どもたちに伝えるべきこと」として全米の教育関係者、大人たちに向けた記事をHuffingtonpostに掲載しました。(記事原文)

トランプ政権になった後でも、大人として子どもたちに伝えるべきこと。教育者でもありマイノリティ(社会的弱者)の立場のAli氏のメッセージによって昨夜、どれだけ多くのアメリカの大人たちが子どもと向き合う自信をもらったことでしょう。

私自身も彼女の訴えに心を動かされました。富裕層が多く住むカリフォルニア州サンフランシスコに住み1年。同じ国家でありながら地域によってここまで価値観に差が開くものなのか、必ずしも自分が属する地域が国のコンセンサスではないこと目の前で経験しました。イギリスのBrexit(EU脱退)以上に、ショックを受けました。そして、これはアメリカとイギリスに留まらず、世界的に起こり得る現象なのではないか。貧富の格差は日本でも広がっており(2015年OECDの調査で日本の貧困率15%)アメリカの現実は日本の将来にも起こり得るのではないか、と考えました。

いま混沌期のアメリカで訴えられている、将来を背負う子どもたちに伝えるべきこと。それを日本の教育関係者、保護者である大人たちへ向け発信すること。それが私がわずかながら貢献できることなのではと思い、今回著者のAli氏に承諾を得て、彼女のメッセージ全文日本語訳しました。

(以下、訳です。)

Child Holding up Hand

大統領選挙後のいま、私たちが子どもたちに話すべきこと。

-まずあなたたちを守ると伝えましょう。-

By Ali Michael 博士(教育コンサルタント、作家、映像作家)

「もし、トランプが勝ったとしたら選挙のあと私は生徒たちになんて言ったらよいだろう?」ある校長先生が最近私にきいてきた。良い質問ですね。私たち教師、大人は子供たちに何を伝えたらいいのだろう?

まず第一に、私たちはあなたたち生徒を絶対に守るということを伝えてください。

アメリカには、民主的な過程があって、たった一人の意地悪な人が大きな危害を与えられないようになってるということ。私たちはこの民主的な過程を絶対に守り通して、トランプが選挙活動中にしてきた多くの嘘の約束を実行できないようにするということ。

第二に、選挙の結果は受け入れないといけないけど頑固な偏見には、立ち向かわなければならないことを話してください。

偏見は民主主義の価値でなく、あなたの学校では許されないことを伝えてください。あなた自身がイスラム系の家族たちの味方になること。同性愛者の保護者やゲイの生徒たちを守ること。黒人の家族たち、女子生徒たち、メキシコ系の家族たち、障害を持つ生徒たち、移民の家族、トランスジェンダーの生徒たち、ネイティブアメリカンの生徒たちを援助するということを伝えてください。そして、それらの生徒たちを傷つけたり、国外追放しようとしたり、脅迫する人たちには絶対に彼らに近寄らせないということを話してください。あなたは学校のコミュニティとして団結して立ち上がることと、互いを守りあうことの大切さを生徒たちに教えてください。

そして、沈黙でいることは危険だということ何か間違っていると感じたときは声を上げることを教えてあげてください。どうやって声に出し、一人一人を愛し、互いに理解しあい、共に争いを解決し、時に対立しあうけど多様性に富んだイデオロギーのなかでどのように生活していくのかを教えてあげてください。また、これらのことができていない世の中で生きていくための術を教えてあげてください。

第三に、文明社会の一員として責任をもつことを教えてあげてください。

誰かを言い負かすためではなく、相手を理解し理解されるために、正しい話し合いかたの基礎を教えてあげてください。生徒たちには事実を確認する方法、情報源を比較すること、当たり前と思われている仮説をも問いかけること、彼ら自身が自然に持ってしまっている偏見を知り、他者からのフィードバックを歓迎すること、お互いを問い詰めることを教えてください。また、私たちは生徒たちに愛と尊厳を保ちながら反対することを教える必要があります。これらのスキルはこれから先の数ヶ月、数年のなかですべての人の人権を守る民主的な社会を作り上げる上でとても貴重な財産になること。政府機関の協力や抵抗があろうがなかろうがに関わらず。

最後に、トランプに投票した人たち全員が彼の偏ったものの見方に賛同しているというわけではないことを生徒たちの気持ちを落ち着かせ理解させてあげてください。

彼に投票したほとんどの人たちは経済に不満を感じていて社会的に孤立感を覚え追い込まれたた結果、ひとつの権利を行使したにすぎないということ。私たちはトランプと支持者たちを試していくべきです。彼らの恐怖とその恐怖によって引き起こされた偏見の間を区別しなくてはいけないことを問い詰めるべきです。

実は、この悲劇的な選挙の直後、私はこのような形で声をあげたことをためらっています。この一年、このようなブログを投稿したがために、私は嫌がらせのメールや白人至上主義者からの殺人の脅しなどを受けていました。「このようなブログ」というのも、正直に言いますと、ほんのわずかな力しかない人間の個人的な意見のことです。私は危険な存在ではありません。しかしながら、私が人類がみな自由にアイデンティティを十分にだすことができる世界をつくりあげるべきだという考えを表現したことに対して、私と私の家族を脅迫してきた人たちもいます。私はこの種の脅迫行為はトランプが勝利したあとにもっと増えてくるのではと恐れています。これが、送信ボタンを押す明日には、勝利に勇気付けられたトランプ支持者等が意見の合わない人たちへの非難や攻撃を広め、もっと悪い状況になるのではと恐れています。

しかし、たとえそうだとしても、トランプ勝利を目前にしている今この瞬間、私が唯一安全に感じるのは、声を上げ、意見を述べること。そして他の方にも同じようにすることを呼びかけることです。

以上

VR教育分野への応用-注目VR/AR教育企業編

学校現場と密着 注目VR/AR教育企業

前回の記事では、アメリカ教育現場(学区/学校)でVR/AR教材を導入する上での今の反応と課題点についてお伝えしました。

そこで今回は、学区/学校の先生達からの支持を得ながらも着実に導入事例を増やしている注目VR/AR教育企業、サービスを紹介したいと思います。

今の時点では現カリキュラムの中に埋め込みやすいこともあり、バーチャルトリップ(バーチャル社会科見学)やSTEM (Science, Technology, Engineering, and Math) 教科系コンテンツが中心に、学校現場で導入事例を作っています。

<バーチャルトリップ系コンテンツ提供企業>

– Nearpod

  • 教科:360° バーチャルトリップが主。デジタルリテラシーやサイエンスなども充実。
  • 特徴:先生向け教材作成、査定ツール充実 / 低価格プラン(学校/学区 1,000ドルよりライセンス購入)

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さきほどのJaime先生が活用していると紹介したNearpod社です。低価格プランとバーチャルトリップ系の豊富なコンテンツからVR教材の初心者〜中級レベルの教育コミュニティのプラットフォームを着実に築いています。

先生が自身でVR教材を作り生徒とインタラクティブなやりとりができ、それぞれのコンテンツに授業の目的や先生用の解説も充実しているなど、生徒の学習効果の査定もしやすいツールとなっています。

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– Google社 Google Expeditions

  • 教科:バーチャルトリップ中心
  • 特徴:低価格Cardboard、ネット接続無しでも使用可能

Googleが提供するGoogle Expeditionsは、専用のGoogle Cardboard(20ドル以下で安価)使用、インターネット接続がない場合も専用ルーターでバーチャルトリップを教室で手軽に実現します。

博物館や深水の中、宇宙といった景色に加え、Googleがプロデュースするアートとカルチャーの専門機関Google Cultural Instituteのパートナー提携している世界中の美術館/博物館が協力のもと、詳細に富んだアート作品の教育コンテンツを制作します。

先生のサポートとしては、Google for Education Training CenterでExpeditionの授業プランの例や解説が充実しています。また、他の先生が作ったLesson planもグローバルでオープンでシェアされているなど先生同士の情報交換も可能にしています。

<STEM教育系コンテンツ提供企業>

STEM (Science, Technology, Engineering, and Math) 系や難易度の高い教科の分野を提供する企業も出てきています。特にサイエンスや数学といった分野は、テキスト上では難易度が高く挫折してしまう生徒が多い教科とも言われていますが、3Dにすることでより生徒の興味喚起を引き出し、学びを没入型にすることで習得を効果的に促します。こちらはVR中級〜上級レベルの先生向け対象かもしれません。

– Zspace

  • 教科:主に生物などSTEM教科に特化、”バーチャル実験室”で生徒のグループワークも図る
  • 特徴:”バーチャル実験室”を学校に丸ごと設置 /ホログラフィックの深い本格没入学習 / 各アクティビティプラン、スタンダードに準拠したカリキュラムの充実

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Zspaceはシリコンバレーに拠点を持つ、2007年に設立された3Dの技術、開発力に誇る会社です。(関係者によると、軍事の技術提供していたバックグラウンドも持っているとのこと。)

K-12(小学〜高校)向けに特化した”バーチャル実験室”をまるごと学校に設置するサービスを展開します。この専用のディスプレイ、コンピューターのセットを使い、3Dメガネと専用のペンと一緒に使いながら、ホログラフィックなオブジェクトを扱い、生物の解剖実験で一つ一つの臓器の皮をはがしていったり、生きたままのカエルの心臓を取り出したり、車のエンジンの仕組みの細部を組み立て実験するなど、現実の世界では生徒が到底経験できないような(危険を伴うような)専門的な実験をバーチャルでハンズオンで取り組めます。このリアルなクオリティは各種メディアで取り上げらるなど注目を浴びています。

先生が導入しやすいよう、全米・各州のスタンダードと準拠した授業プランとアクティビティ(学年別・教科別)も用意されます。これによって、すでに授業で取り扱う内容のある部分をこのバーチャル実験室に置き換える、という形が取れます。

生徒同士でバーチャルでグループワークも可能となっているところが、一人の世界に没頭しがちの他のVRコンテンツと差別化できるポイントでしょう。1台のコンピューターで2,3人の生徒が一緒に取り組めるような仕様です。

すでに全米で約100の学区がZspaceの”バーチャル実験室”を設置済みで、全米教育コンファレンスISTEにも出展し全米の先生の注目を引きつけるばかりでなく、アメリカ国外でも導入する学校が出てきているとのこと。

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ISTEコンファレンスで展示、デモが行われていたZspaceの専用ラボデバイス

Zspaceはクオリティの高い、本格没入次世代型学習を提案していますが、専用バーチャル実験室を丸ごと設置となると予算面のハードルが大きいでしょう。1つのラボで13のコンピューターセットと先生用のプロジェクターが含まれ値段は7万ドル(約700万円)とのことです。但し学区の契約内容によって価格は変動していくとのこと。

– Lifeliqe

  • 教科:主にSTEM教科 (生物/植物/地理/物理/幾何学)
  • 特徴:有名大学との教育コンテンツ共同開発 / タブレットでインタラクティブな操作可能

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Lifeliqeは、サンフランシスコ発の若いスタートアップの会社です。今年、VRハードウェア・プラットフォームのHTC Viveのオフィシャル教育コンテンツパートナーとして提携を発表しました。

STEM教育分野のバーチャルコンテンツに特化しスタンフォード大学など有名研究機関と共同開発し、クオリティの高い教材コンテンツ作りを目指します。生物、物理、幾何学などの教科ですでに1,000以上のインタラクティブなモデルがあります。

直感的な操作を通して、生物の細かい詳細まで見たり、AR (Augmented Reality 拡張現実)でオブジェクトとインタラクティブなやりとりを通し生徒が積極的に学ぶ体験をひきだすことを目的としています。(擬似実験など)

タブレットでの使用もできるので、Zspaceと比べ比較的安価に導入が可能ともいえそうです。

現在は無償トライアルを提供しており、学校への販売導入はおそらくこれから本格的に開始していくという段階ですが、ハードウェアのHTC Viveの提携がLifeliqeの成長をどのように促進していくのか動向が楽しみです。

すでに始まってきている企業と学校の連携

以上、前編では今のアメリカ教育現場のVR/ARに対する反応をお伝えし、今回の投稿では注目企業の取り組みも見てきました。

アメリカの教育現場では、まだVR/ARを活用する学校はかなりの少数派ですが、すでに先進的な学区ではバーチャルトリップやSTEM教科関連のコンテンツをカリキュラムに反映し活用され始めています。企業側も学校側に使ってもらえるようなサービス提供を展開しており、企業と学校が連携し始め、VR/ARの教育分野のマーケットを共に創り上げてきていることがわかってきたと思います。

日本と異なり、アメリカでは公立学校は各学区ごとに教材購入の意思決定をするシステムを取ります。今は、VR/ARに関心の高い学区が企業と連携し助成金を得るなどし購入し導入している状況といえるでしょう。企業もアンテナの高い学区へアプローチしていく動きが盛んです。そこでいずれ徐々にツールが活用され始め、生徒の学習効果がどのツールが最適なのか、と先生からの評判が良いツールが勝ち抜いていく、と予想されます。(これはVR/ARに限らず一般的なEdTechツールにも当てはまるといえるでしょう。)

今後さらに充実したコンテンツが出てくることは間違いないので、動向を今後もアップデートしていきたいと思います。

VR教育分野への応用-アメリカ教育現場今の反応編

VR教育分野への応用-次編

前回、VR教育分野への応用というテーマで記事を投稿し、VR/AR技術を教育分野へ展開していくことについては、学習者の誰を対象とし、学習体験をしっかりデザインしていくかが重要であるとお伝えしました。

特に、教育現場の先生に実際に学校で活用されるようには、世界で最も忙しい職業といわれる先生の時間を節約することができるのか、今まで実現出来なかった学習体験の質を上げていけるのかが大事なポイントとなります。

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VR/AR アメリカの一部の学校へ活用され始める

まだVR/ARを活用する学校はアメリカではかなりの少数派ですが、すでに先進的な学区ではバーチャルトリップやSTEM教科関連のコンテンツをカリキュラムに反映し活用され始めていていることを最近知りました。

そこで今回の記事では、今のアメリカ教育現場で導入されている”VR教育応用事例”をアップデートしたく、主に下記2つの投稿に分けて紹介していきます。

  1. アメリカの先生たちのVRに対する今の反応。(※今回紹介)
  2. 先生たちの支持を上手に獲得する注目VR/AR教育企業。(※次回紹介)

アメリカの先生たちのVRに対する今の反応:

アメリカの先生の60%が”VRを教室に導入したい”と回答 / そのうち2%の先生が実際に導入済み

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VRハードウェア”Gear”を開発するSamsung社が行った独自調査によると、教育現場から特に先生からのニーズが着実にでてきていると言われています。(参考記事

  • アメリカの小学〜高校の先生1,000人のうち60%がVRを教室で導入したいと回答
  • 現状ではそのうちの2%の先生が実際に導入済みという結果。
  • 生徒自身にVRコンテンツを作らせたいという関心も高まってきてる

この調査の対象となった先生1,000人がどの程度のテクノロジーの習熟度があるかということは不明ですが、半分以上の先生がVR導入について前向きに検討したいという回答です。

2%の先生がすでに導入済みということですがこのVRが、どこまで本格的に作り込まれたコンテンツを教材として導入しているのか、というところも厳密に定義はされていません。(例:マルチデバイス対応の3Dコンテンツなども含まれる場合もある。)

また、生徒にVRコンテンツ制作をさせたいという関心については、最近、Unityなどプログラミング言語を使ってVRゲームコンテンツ制作を子供向けに教える課外授業コースも出てきているなど、エンターテイメントのコンテンツで世の中で3Dが続々と出てきている中、生徒が日常的に触れ合う機会が増えてくるので、VRコンテンツに学校でも触れ合えるようにしたいという関心も出てきているのでしょう。

VR導入している先生の事例:

ここで、すでにVRコンテンツを学校の授業に導入している先生の例をご紹介したいと思います。

今年6月、デンバーで開催された、全米最大教育者コンファレンスである、ISTEで出会ったテキサス州の中学校で教壇に立つJaime先生です。(※さきほどの調査で2%の先生が導入済みという結果だったので出会うことができ貴重な存在です。)(※ISTE参加レポートはこちら

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ポスターセッションで来場者にプレゼンするJaime先生

Jaime先生は、コンファレンス当日のポスターセッションで、”VRの教室での導入例”というテーマでご自身のベストプラクティスを紹介されていました。彼女の授業では、VR教材コンテンツを自然機構や歴史建造物などのバーチャルトリップ(バーチャルな社会科見学)のものを使用しているとのことです。

このバーチャルトリップのコンテンツを通して、テキサスの教室にいながら中国の万里の長城などの歴史的跡地に行けたり、雪を見たことがない生徒にとって雪山や氷山という自然気候を体験することができます。

Jaime先生によると、生徒たちは教科書を読むよりも3Dコンテンツの没入体験をしたほうがより好奇心を持ってやる気のある姿勢を見せる、とお話していました。実際の目で見ることに価値があるような社会科見学を教室で手軽にできるということは大きなメリットのようです。

 

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今の時点では、バーチャルトリップがVRを使った上で学習効果がわかりやすい

Jaime先生は今はまだバーチャルトリップのコンテンツをメインに授業に取り入れていますが、今後もっと別の科目でも応用できないか模索していきたいとコメントしていました。

今の時点では、このバーチャルトリップが教育現場で現実的に導入する上で、一番効果が見えるし生徒の反応がわかりやすい。これからもっと多様なコンテンツが出てきてくれることを楽しみにしている。

現時点で学校の先生にとってもVRを使った授業の例で効果がわかりやすく、生徒の反応や学習効果が見えやすいという点で、「バーチャルトリップ」のコンテンツはVR初心者〜中級の先生の入門教科といえそうです。

VR/AR教材導入の課題

しかしながら、Jaime先生のように最新テクノロジーを教室で導入するのは、至難の技といえるでしょう。アメリカの先生の中でも意識の高い先生が頑張らないといけないという状況で、まだ難易度が高いです。ISTEに参加した先生達も、うちの学校にもVR教材を導入したいけれども、ハードルが高くて今はまだ無理かな、と言っている方が多くいらっしゃいました。

そこで、今のアメリカの教育現場でVR/AR教材を学校へ導入するにあたっての課題を以下にヒアリングのもとまとめてみました。学区や学校が導入承認をするにあたって、下記の課題をクリアしているかどうかがポイントとなりそうです。

– 課題1:予算獲得のハードル

Jaime先生は、予算にシビアな学区を説得しなんとか承認をこぎつけて契約購入ができた、と苦労話を語っていらっしゃいました。

日本と異なり、アメリカでは公立学校は各学区ごとに教材購入の意思決定をするシステムを取ります。学区の予算の承認については、まだ必修科目が優先されている現状とのこと。VRを活用した授業は、まだNice to have (あったら良いな、という程度で必須ではない。)という程度のものなので、どうしても優先順位としては下にきてしまいます。

Jaime先生が使うVRコンテンツは、Nearpod社が提供するもので、単体コンテンツが3ドル以下など、比較的安価で購入ができ、月額プランもあるとのこと。学校や学区特別割引なども用意しているそうです。Screen Shot 2016-09-04 at 7.31.12 AM

ゴールドマンサックスによるVR/ARについての産業サマリーデータによると、VRコンテンツの教育にあてられる費用は、2025年までに年間1人生徒あたり50ドルが支払われると予測が出ています。(現在では学校が負担する教材費用年間1人生徒あたり平均ドル244ドル

– 課題2:現カリキュラムに置き換えられるかどうか

先生達は日々の授業進行とカリキュラムに沿って生徒の査定をしていかなければいけません。VRを授業に取り入れるためだけに、現カリキュラムと関係のない内容を取り扱わなければならない、またはその授業を実施するためだけに様々な準備と研究に時間を費やさなければならないとなったら本末転倒です。

今の段階では、現カリキュラムの中で、この内容を3Dで行ったら効果があるのではないか、という所を部分的に取り入れることが肝となってきそうです。

VR/AR教育企業にもこういったカリキュラムやレッスンプランの活用例を用意されているかどうか、が先生が期待するポイントとなりそうです。

– 課題3:先生が使いこなせること

VR/ARのツールを導入し、実際にそれを使用し授業のファシリテート運営をしていく先生が使えないとなると本末転倒です。先生が導入しやすいわかりやすい操作が可能かどうか、先生のトレーニング内容が充実しているかどうか、がポイントとなりそうです。

学校と密着するVR/AR教育企業の存在

以上、VR/AR教材の学校への導入にあたっての課題を見てきました。

VR/AR教材を学校に導入してもらえるよう営業をかける側の立場に置かれる企業にとっては、学区に予算承認が下りやすい価格プランや現カリキュラムに沿った教材パッケージ、先生用トレーニングのサポートなど、先生から支持を得るために様々な工夫をする必要が出てくるでしょう。

そこで、次回の投稿ではこの分野で着実に評判を上げている注目企業を紹介したいと思います。

 

 

全米最大教育テクノロジーコンファレンスISTE – アメリカ先生たちの力強い草の根活動 –

全米最大K-12(小〜高校)教育コンファレンスISTE 2016に参加

6月26日〜29日にコロラド州デンバーで開催されたInternational Society for Technology Educators conference (ISTE)コンファレンス に参加してきました。

ISTEは、教育テクノロジーに関するスタンダード制定やコンファレンス開催、先生達のトレーニングや横のつながりのコミュニティ場作りをしている団体です。

ISTEは年に一度、全米の各都市でコンファレンスを開催しています。

コンファレンスでは、主に小学校〜高校まで (K-12向け)の教育者、EdTech企業、教育プロフェッショナル達を参加対象としてます。

そこで、最先端教育テクノロジー動向、教育事例共有や教育者向けのトレーニングだけではなく横のつながりの情報交換の場を提供しています。

3月に開催されるオースティンのSXSWeduも教育テクノロジー祭典としては最大級ですが、(SXSWedu参加記事)ISTEは、参加者の小学校~高校の先生によりフォーカスし、参加者主体のセッションが多く、議論の内容も実際の授業の運営方法にフォーカスされているという印象を持ちました。

今回のISTEでは、全米、海外から合わせ1万6千人以上の参加者、企業は500社以上出展、セッションは4日間で1,000以上。この規模感と情報量の豊富さはK-12(小〜高校)教育業界世界最大級といっても過言ではないでしょう。

参加者は、関心のあるトピックに沿って、各個人でセッションやブース訪問のスケジュールを管理できます。参加者向けのモバイルアプリも用意されていて便利です。

しかし全て興味あるセッションを限られた時間で制覇するのは不可能で、私自身も分刻みで会場内をバタバタ移動する4日間でした。

アメリカ先生たちの力強い草の根活動とアメリカの教育現場のいま

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この4日間で一番印象に残ったことは、何よりも、アメリカ全土から集まった先生達の草の根活動にかける情熱に圧倒され刺激を受けたことでした。そこでは、学校の先生達が自らのベストプラクティスを他の先生たちに共有する会が多く開催されていました。

EdTechツールやSTEM (サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、算数)教育やプログラミング教育といったまだ完全にはガイドラインや正解は出ていない、比較的新しい分野をどう教育現場に導入していくか、というトピックが多かったです。

先生ならではの視点で現場での苦労話などリアルな教育現場が垣間見れ、私自身にとって興味深い内容ばかりでした。

また、ISTEの参加者の大多数は全米各地の公立学校の学区や私立学校から代表として参加している先生たちです。学校内でのテクノロジーやサイエンス教科の担当や事務局員、テクノロジー教材の購買を管理する担当の方がメインで、年齢としては40代〜50代の先生たちの比率が多い印象を持ちました。

普段私はテクノロジー導入した事例が全米で最も盛んであると言われているカリフォルニア州シリコンバレーの地域を拠点に活動しているのでやはり偏った見方をしてしまいますが、このようなアメリカ全土を対象とした先生向けのコンファレンスに参加し、アメリカ全国レベルの教育現場でどういった議論がされているのか、ということがわかってきました。

今回私は日系企業現地特派員としてアメリカ市場をリサーチしている立場として、主にSTEM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、算数)教育関連のトピックを中心に各セッションに参加してきました。

アメリカ教育現場のいま(特にSTEM教育分野)stock-vector-illustration-of-stem-education-word-typography-design-in-orange-theme-with-icon-ornament-elements-379502056

そこで、アメリカ教育現場のいまを表すキーワードとして大まかに下記2つがわかってきました。

1) 2016年の今はEdTechツールも浸透していき、STEM教育は中間マジョリティ層へ広がっていくフェーズ。”STEM Learning for ALL”.

  • 都市部だけでなく、全米の地域へ。
    • 「田舎の中高年の先生も教えられるようにしましょう。」
  • 一部のGifted(成績優秀な生徒)だけでなく生徒全員へ。
    • 「女子やマイノリティもSTEM教育に触れさせる機会を。」

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STEM系ワークショップ教室代表の方の発表。「STEM教育はマジョリティ層に移行する段階」

 

2) STEM教育に「実生活の問題解決の要素」を取り入れて生徒の学びの目的意識と継続を

  • ツールの充実よりも授業中身の質を高めていきましょう。
    • 実生活と結びつけた問題解決型授業、生徒と協働できるプロジェクトの導入など
  • プログラミング/エンジニアリングは実生活あらゆる問題を解決するツールと教える
    • 子どもたち(特に小・中学生)に実践を通して理解してもらう。テック系分野に関わらずあらゆる世の中の仕組みにSTEMは応用できることを理解してもらう。
  •  個人それぞれのペースで、目的をもって取り組めるようサポート
    • それぞれ学び方は違う。生徒に合ったメンタリングを。

 

4日間で見てきたハイライトしたいところを下記にシェアしたいと思います。

 

<オープニング基調講演 Michio Kaku氏>

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登壇するMichio Kaku氏。ISTE初日のオープニング基調講演。

物理学者でありFuturistとして著名なMichio Kaku氏による基調講演。テーマは、”The Internet Will Be Everywhere and Nowhere” . 今から50年後、テクノロジーは人間の生活と社会のあらゆる側面を一変させているだろう。主に、この50年間で起こる進化は、1) 情報のデジタル化、2) Machine Learning (機械学習、人間の学習能力と同様の機能をコンピュータで実現しようとする技術)、3) 医療分野で起こっていく。

1)情報のデジタル化では、あらゆる日常のものがデータ化される。例えば、衣服、乗り物、薬、さらにはトイレまでもがデータを集め、人間に共有され、自動でその人の体調状態など分析される。スマートコンタクトレンズをしてまばたきするだけで情報を読み取れてしまうようになるかもしれない。

2) Machine Learning では、技術の進化を結びつき、今人類が必要とされているタスクのある部分をコンピューターが担っていくこと。”Robo-Doc (ロボットドクター) ”が体をスキャンしてクイック診断をしたり、”Robo-lawyers (ロボット弁護士)” もクイック診断をクライアントに提供できることになるかもしれない。

3) 医療分野では、3Dプリンター臓器を作り出したり、オペをする医者要らずの手術マシーンが進化するかもしれない。加えて、どれだけ脳科学もさらに進化していくこと。

最後に、Kaku氏は今の世の中から激変する50年後の未来の世界に生きていく子どもたちを育てていく立場である教育者へのメッセージとして「50年後でも存在する職業に就けるような育成をしていくこと」 を提案しました。

将来のJob Marketは特にParalegal (弁護士のアシスタント業務)のような中間層の仕事は徐々に無くなり変化していく。Kaku氏は暗記中心の授業スタイルから、「コンセプトや原理を考えさせること」 に重きを置くべきと提案します。自動化に置き換えられない職業は、よりクリエイティビティさや経験が必要とされていくからです。

また、MOOCsや学習コンテンツが普及し、誰でもどこでも学べる世の中になっていく上で、メンターの存在、他の生徒との恊働は常に必要となってくること。特に先生は「生徒のメンター」としての役割に変化すべきだ、と強調し講演を締めくくりました。

<ポスターセッション>

ポスターセッションは特に先生の草の根活動が活発な場でした。

全米にある学校の団体から、自らのベストプラクティスを紹介していくブースです。毎回テーマが決められ、テーブルに各団体(主に先生自ら)が展示をし直接訪問者に対して説明をしたり相互にやりとりする場です。

下記の教育テーマのセッションなどがあり、全米各地(メキシコなど海外からの出展もあり)から毎テーマざっと40団体ほど出展がありました。

Global教育 / STEM教育 / Project (Problem) based learning (プロジェクト主体型授業、問題型ベース授業) / Digital Literacy など

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ポスターセッションの様子。(Google Classroomの活用方法について事例シェア)参加者は、各ブースにいつでも訪れ、他のブースへ移ることができる。

ポスターセッション全体を通して、新しい分野の教育テーマについて、現場で試行錯誤をしながら成功や失敗談がフランクな形でシェアされているのを見てきました。

訪問者との垣根は低く関心の内容が似ていたら、コラボレーションしましょうか、という話がどんどん進んでいました。実際に私もここに出ていたいくつか学校/アフタースクールの団体さんと連絡先を交換し情報交換をさせていただいています。

下記、全体を通したポスターセッションで、印象を受けたトレンドの傾向です。

  • 問題解決 × STEM教育

STEM教育を実生活の問題解決と結びつけて学ぶ教育事例が多く出展されていました。生徒に身近な問題を考えさせ解決に導く過程で、ツールとして電子工作やプログラミングを取り入れて学んでいくというアプローチをとります。

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探求型STEM workshopをプロデュースする「School STEAM Fest」

 

例えば、下の動画のように、身近な困った人のために役に立つものをつくるプロジェクトを中学生が行う事例が紹介されています。(生徒のユーモアに溢れた動画でとっても可愛いです。)

  • 目が見えない人のために箱の自動Opener
  • Arduino(電子回路)でつくったロッカーのOpener
  • LittleBits (電子工作キット)でつくった耳が聞こえない人向けのドアベル通知器

実生活の中にある問題と絡ませて問題意識を持たせると、学びの吸収の質や継続の姿勢も変わってくること。また他の生徒とコラボレートし、サポートし合いながらグループで取り組むことも重要な要素と言われていました。

  • Computational thinking(コンピューター思考力)の習得サポート

Codingを暗記するだけでなく、プログラミング学習の上でコアとなってくるコンピューター思考力をビジュアル、手を実際に動かすことで習得をサポートするツールなども登場してきました。

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幼児〜低学年向けComputational thinkingツール「Cubetto」のデモ。ブロックCodingを通し触りながら思考法の基礎を学ぶ。宇宙の絵のボードでStorytelling(物語)ツールとしても活用可能。

アメリカ国内でも日本で議論がされているように思考力の重要性が指摘されています。CSTA (Computer Science Teacher’s Association)でもComputational thinkingのカリキュラムやガイドラインが制定されています。今回のポスターセッションではComputational thinkingの習得をサポートする団体も多く出展していました。

  • 女子 × STEM教育

女子生徒がSTEM分野で活躍しているベストプラクティスも多く共有されていました。人口の半分を占める女性のSTEM系職種に就く比率が低くSTEM領域におけるジェンダーギャップは問題となっており、女子生徒をSTEM分野に関心を持たせる、ということは教育テーマで重要な位置を占めます。

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STEM girl clubに所属してる女生徒自らLEGO mindstormを使った作品のデモ。

ファシリテーターである先生に、女子をもっとSTEMに巻き込むコツは?と直接質問したところ、

  • 生徒の性別だけで偏見を持たず個人の関心を伸ばしてあげる努力をしているとのこと。
  • Techのスキルを持って活躍している大人の女性ロールモデルをゲストに呼んでテクノロジーのスキルが将来の職業へつながるイメージを持たせる
  • 女子が興味を持ちやすい、裁縫や編み物をとっかかりとしSTEAM教育へ発展させることもやっていきたいとのこと。

<Playground>

PlaygroundはRoboticsやMakerなどを実際にハンズオンなデモを行い実際の手で試せる場です。地域コミュニティの教室が生徒にどういったワークショップを展開しているのか、実際にそこに通っている生徒たちもブースに立ち、参加者へ紹介していたことが頼もしかったです。

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ロボットクラブの紹介。球体ロボットのSpheroやCubeletsを使ったデモ紹介。

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Makey MakeyとScratchを活用したGame紹介する生徒たち。面白いアドベンチャーゲームでした。

その他ロボットレースのデモなども賑わっていました。

 

<先生による先生のためのレクチャー>

こちらのセッションは、先生が先生のために情報共有をする講義の形式をとります。活発に質問も飛び交いインタラクティブで有意義でした。下記、特に最も印象に残ったレクチャーです。

  • 「Making STEM real difference」Chris Craft氏(サウスカロライナ州の教育者、研究者)

テーマは、「STEM教育を本当に効果ある授業にするには?」という題でのレクチャーでした。Chris氏は数々のAwardを取得しテクノロジーを活用したイノベーティブな教育を行っていることで全米レベルでも影響力のある先生です。

Chris氏は、冒頭をこのようにスタートします。

STEM教育はアメリカ教育現場の中でも重要性の認知もされてきて、たくさんの学区や学校がSTEM教育を行うために必要なツール(タブレットやプログラミングロボット、電子工作キットや3Dプリンターなど)を購入して導入する学校が増えてきている。Maker Space(メイカースペース:電子工作やモノ作り専用の部屋。生徒が自由に工作に励める場)を設置する学校も増えてきている。(当日会場内の3〜4割ほどの先生が自分の学校にMaker Spaceがあると回答。)

しかし、徐々にSTEM教育を行うためのツールやハード面での環境は学校で整ってきているものの、それを実際に活用されているところはまだ少ない。3D プリンターを導入したものの、使う目的がしっかりしていなかったら使われないままになってしまう。

Chris氏の教育ポリシーとして、子供たちに「将来何になりたいの?」と聞くのではなく、「将来あなたはどんな問題を解決したいの?」と問いかけていくことをモットーとしているということです。(Google Chief Education エバンジェリストのJaime Casap氏も同様に主張と言及。)何になりたいの?と問いかける時点で子どもは自立性を失ってしまう。どこに問題があってどう解決したいのか、自立的に考えられる子どもを育成していきたい。

そこで授業をProblem-based(問題解決型)のスタイルを導入しているとのことです。

子どもは、自分のためだけでなく、「人のために考え」役立とうとすることで圧倒的にSTEMの学びの質に変化がでるということが彼の教師経験から出てきた事実とのことです。そこで実生活やSocial Justice(社会貢献)に役立つ解決策に取り組むプロジェクトを生徒主体で発足させています。

いくつかChris氏から生徒のプロジェクトの紹介がされました。

その中で最もアクティブなプロジェクトが、「Prosthetic Kids Hand Challenge」(義手をつくるチャレンジ)です。

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プロジェクトURL: http://www.handchallenge.com/

もともとは、女子生徒の友達グループが左手に障害を持った友達が教科書を持てるようにするため、3Dプリンターで義手をつくったことから始まりました。

2015年10月、これをさらに世界にいる手の不自由な子どもに義手を届けるプロジェクトとして公募の制作を開始しました。このページで義手の作り方をレクチャーし、各クラスで制作を募集しています。現在では200以上のクラス、21カ国から参加があるとのことです。

MicrosoftやNASAなど企業のスポンサーも受け、より広い地域のレベルで参加ができるようになっています。日本からも参加者がいるとのことです。

このプロジェクトを通して、義手を受け取り喜ぶ子どもも増え、学校内クラスで3Dプリンターを活用することに大きな目的を見出せ生徒が主体的にモノ作りに励む学校も出てくるとの双方で良い効果が生まれます。

最後にChris氏はこのHand Challengeの参加を会場で呼びかけると、当日の会場内の参加者からたくさんのポジティブな感想がシェアされていました。

「Makerspaceを導入して3Dプリンターも学校で購入したけれども、活用方法がわからなくて困っていた。でもこのイニシアティブがあったら、生徒と一緒にすぐこれに取り組めて目的意識ができる。」とコメントした参加者の先生もいました。

日本からも参加ができるのでご興味ある団体はSign upいただけたらと思います。

URL: http://www.handchallenge.com/

 

<Expo 企業ブース>

Microsoft, Googleなどの大企業から、EdTech企業やNPOなど様々な団体が新しい教育テクノロジーサービスやプロダクトを展示しました。

特に、今回のISTE開催に合わせて大手各社EdTech商品リリースのアナウンスで賑わっていました。

  • Google blok project https://projectbloks.withgoogle.com/
  • Google VR教育Expeditionコンテンツ https://www.google.com/edu/expeditions/#about
  • Amazon inspire (AmazonのOpen Educational Resource) https://www.amazoninspire.com/access

※商品情報については次以降の記事でご紹介したいと思います。

 

<最後に>

「いま」ではまだなかなか難しいかもしれませんが、

長期的には、Michio Kaku氏の基調講演であったように先生の役割は「メンター」として生徒個人の問題解決の学びをサポートし、クリエイティビティを引き出すことが求められていく。

アメリカの教育現場のいまはそこにTransform(変化し対応していく)する方向へ動いていこうとしているのだな、とみえてきました。

従来型の指導方法に慣れていたであろう40~50代の年齢の先生たちが、未来を見据えて積極的に新しい教育アプローチ方法を取り入れようと努力する姿勢がありました。まだ正解はわからないけれども、教育現場で試行錯誤をし新しい形を模索していく、力強い草の根活動が展開されています。

そして、一緒にチャレンジをする先生同士の横のつながりの結束もとても強いことがわかりました。良いアイディアを持っている者同士だったら、一緒にコラボレーションしてみようか、という話がどんどん起こっていました。今回ISTEに参加できなかった先生同士でもTwitter チャットで#NotAtISTE16 のハッシュタグを通じて、情報交換をしていくプラットフォームができていたことも驚きでした。

試行錯誤を通し、一緒にチャレンジする者同士Peer-to-peerのつながりを強固にする。

ISTEにはアメリカならではの新しいチャレンジを行いチャレンジする人を応援する仕組み作りのエッセンスが盛り込まれている、と思えてなりませんでした。