21世紀の学校教室のデザインとは?

21世紀の教室デザイン:スターバックスの空間?

スターバックスコーヒー店内をイメージしてみると、各々が読書をしたりPCに集中したり、ソファ席に座りたい人はそこに行き、机と椅子が必要でもっと集中したい人は静かな場所へと自由に移動していきます。

誰かに席を指定されることなく、自分で一番良さそうなところへ移動していきますよね。

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スターバックスの空間では、様々ある選択肢の中から個人が選択をし、

“どこで座るのが一番最適か”と考えて移動をしています。

21世紀型教育では、実社会での問題解決をし自ら選択していくことが重視されていますが、

従来型のずらっと30人の生徒が列に並んだ席のレイアウトでは、実社会とはかけ離れた空間ですし、固定された席で一日中座らなくてはいけず、生徒に選択肢を十分に与えているとはいえないでしょう。

そこで、従来の集団教育型のレイアウトから脱却し、実社会に近い形で生徒自身が学習するのに最適な場所を選ばせ、生徒に席の選択肢を与える柔軟な席の配置が採用される動きが出てきています。

これがスターバックスの空間が出している“自ら選択肢を持って席を選ぶ”というコンセプトが理想に近い形となっています。

生徒主体の教室レイアウト

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参照:Edutopiaより:Visualizing 21st century classroom design

アメリカの先生コミュニティの中では、21世紀型教室デザインの要素は5つあると言われています。

  1. スペースを区切る
    • 全体集合できるスペースを設ける。(クラス全体会や、小規模な講義する場合。)
    • 作業スペースを設ける。(個人、ペア、大人数で作業する状況に応じた区切り。)
  2. 生徒のアクセスのしやすさを優先
    • 全生徒にとってフレンドリーで、教室の道具の配置がされているか。
  3. 生徒にモビリティツールを与える(Tech ステーション)
    • 内向的、外向的などあらゆるタイプの生徒が学習を深め、成果を発表できるツールの選択肢を与える。
      • 例)タブレットやノートPCなど自由に使えるTechステーションを設ける
  4. クリエイティビティスペースをつくる
    • 生徒がクリエイティビティを形にできる場、Maker Space(メイカースペース)をつくる
    • 自由に生徒が休み時間などを利用して訪問できるようできるだけオープンにする
  5. 生徒の個性を尊重する
    • 生徒個人の内的モチベーション(何にパッションを感じるのか)を引き出してあげる
    • 生徒と一対一の関係性を大切にする
    • 授業の最後に必ずまとめや振り返りの時間を持つ。生徒たちが何を得たのか、ということを引き出してあげる。

シリコンバレーの学校の教室

シリコンバレーの21世紀型教育を推進する学校では、まさにこの”生徒主体”で、”スターバックス型”の教室のレイアウトが導入されています。生徒たちが決まった席ではなく毎日、自分の座りたい席に選択し自由に移動していきます。

これまで筆者が見てきた学校の教室のレイアウトを紹介したいと思います。

Altschool (幼稚園〜小学高学年)

Altschool は、以前の記事で紹介したように、革新的マイクロスクール(少人数制 / 年齢混成 / 個人のパーソナライズ学習)の方式をとる学校です。 Altschoolではモンテッソーリに基づき生徒に自ら選択肢を与え自分の学習目標に責任を持たせ、校舎内すべての中でそれぞれ最適だと思う部屋やスペースに移動することを推奨しています。

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Altschool Palo Alto校舎  自習 / コラボレーションスペース

こちらの写真では、手前の机は生徒が必要だと判断したときに移動できる自習スペースです。”Voice Level 0″とシールが貼られ、このスペースでは声のレベルは最小限(つまり話してはいけない)にするよう生徒自身にルールを課しています。

一方、奥のホワイトボードがあり壁にポストイットが貼ってあるスペースは、”Voice Level 1″ とし、相手が聞こえるだけの声を出すというスペースとしています。ここでは課題などを生徒と協力しながら進めていけるスペースになっています。

きちんと自分の学習したい内容に沿って、状況に合わせて、周りに気を遣い声のトーンを調整することは、実社会の中でまさに大人が日常で行っていることです。

Prospect Sierra(幼稚園〜中学)

East Bayに位置するPrivate SchoolのProspect Sierraでは21世紀型教育、少人数制を取り、CreativityやEmpathy(共感)を重視し未来の社会でコラボレーションしていける人材育成を目指します。Maker Spaceを導入し自由にモノづくりに励むことができたり、Artの充実も測りSTEAM教育に力を入れている学校です。

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3年生の教室。先生はむしろファシリテーター。

奥のスペースでは先生が待機し、生徒がわからないことがあったら質問に行きます。

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活き活きと先生の講義を聞く生徒たち。手前の生徒は一人で集中。

Prospect Sierraでは、基本的には先生の講義を聞いた後、生徒たちが主体となってプロジェクトに取り組むスタイルを取ります。先生から講義(質問なども)を聞くスペースと自習、コラボレーションスペースと柔軟に区切られ、生徒たちが自由に自分のペースで移動していました。

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従来型の「机」というより、テーブル。

生徒たちのコラボレーションスペースは、テーブルで円を囲んで議論がしやすいような工夫がされていました。

ちなみに、こちらがここの学校のMaker Space (メイカースペース)です。生徒たちの作品のプロトタイプ(試作品)が置かれています。ここでは休み時間はいつでも来て作業して良い、ということにしたり、放課後のクラブ活動で使われています。

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21世紀型教室デザインの効果

生徒に選択肢を与え、個のポテンシャルの成長を最大限にする工夫がされている21世紀型教室デザインですが、

実際のところ、アメリカではまだ、少人数制の授業を実施できるほど余裕が持てない学校も多いですし、従来型の教室のレイアウトからの脱却や資金調達も難しいという学校が多い現状となっています。

しかし、こんな状況の中、コストをかけることなく、21世紀型の教室デザインのリフォームに成功した意識の高い先生の事例などもシェアされるようになり、シリコンバレーだけでなく、全米の中でも草の根活動のムーブメントが起こっています。

参考記事: North Dakotaの2年生の先生がStarbucks型の教室にデザインした記事

新たに席のスタイルを変えることで、授業の質に変化がうまれ、下記のような効果が出てきているとのことです。

確実にリフォーム後で生徒の学習効果や先生の意識改革にもつながり、より意味のある授業が展開できるようになったとのこと。もう昔の席の配置には戻れない、と先生も話しています。

21世紀型教室デザイン=大人が生きる実社会

従来型の席のレイアウトでは生徒は一方向を向き、先生の許可がないと動くことも許されません。教室の空間では、まるで100年前の時代と同じような隔離された空間となってしまっています。

教室の外では、まさに技術革新が進み、大人たちは早いペースで意思決定をし、Globalな環境で無限な選択肢がある社会を生きています。

実社会と大きく離れてしまった空間で、一体どうやって生徒たちは未来の問題解決をし、よりよい世界のため意思決定をしていけるのでしょうか。

日本の教室は21世紀デザインに変えていくべきか

日本では、2020年に、全小学校プログラミング教育必修化やICT機器の導入など従来の方針から大きく進化する内容へ変更されます。この新学習指導要領方針が徐々に明らかになってきています。発表

  • 新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目の新設や目標・内容の見直し
  • これらの新しい教科を、主体的・対話的で深い学び「アクティブ・ラーニング」へ学習プロセス改善

とあり、より一層、学びのプロセスの変化が重要となっていきます。

授業スタイルは学びのプロセスを変化、改善させ、プロジェクトベース、生徒主体とシフトしていく必要があることは明らかです。

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また、未来の子どもたちが必要となる資質や能力について、

「情報を読み解く力、情報技術を手段として使いこなしながら、論理的・創造的に思考して課題を発見・解決し、新たな価値を創造する力、感性を働かせながら、よりよい社会や人生の在り方について考え、学んだことを生かそうとする力」

と言及し、実社会での問題解決をし主体的に動く力が求められていくと文部科学省の方針として発表しています。

社会の問題解決をしていき、実社会で生かしていく力を養うためには、教室の中が実社会と乖離した空間ではこのスキルを生徒たちが習得し実践することは難しくなっていくでしょう。

実社会に近い形で生徒たちに選択肢を与える環境と、生徒の学びのプロセスを大きくシフトさせていくことが日本の学校でも必要になってくると思われます。

教室のレイアウトを変えることで、「形から入る」ということにはなりますが、これで大きく生徒・先生のマインドが変わっていったという成功事例がアメリカから出てきています。

日本のカルチャーと適合するスタイルかどうかは検証が必要となってくるとは思いますが、日本の教育の良いところ(生徒の態度の良さやしつけ)と上手に組み合わせ、日本から未来を見据えた教室デザインの成功事例が出てきて、21世紀型教育が日本の教室で実践されることを願っています。

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Altschool 未来形の学校となるか

先日、Altschool の入学対象者の保護者向け説明会に参加してきました。

Altschoolは筆者がシリコンバレー(サンフランシスコ)で勤務を始める前から最も気になっていた先進的アプローチを取り入れた最高級の学校です。

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AltSchool Yerba Buena校(2016年秋開講予定)

Facebookのマークザッカーバーグが今年5月に1億ドル(約120億円)を投資したことで日本のEdtech / 教育業界でもより注目度が加速されたと思います。

なぜそんなに投資家の関心を引いているのか?

Altschoolは子供一人一人のFull potential を伸ばすために設立され、子供が生きる2030年代に備え、21世紀の未来を切り開きイノベーションを起こす”change maker” になるべく教育方針を立てています。

保護者説明会では19世紀〜の教育方式についても言及され、

それまで人々は自分のPotentialがどこにあり強みを職業や活躍の場にフルに生かされていなかった。Altschoolでは21世紀の革新的な教育方針の提案として生徒一人がFull potentialを未来に発揮できるよう一人一人の能力に合わせ学習スタイルを提案していく

と説明が続きました。

具体的には5つの柱から成り立っています。(1. Whole Child Education 心身共に健康児童推進 2. Rigorous Academic 厳格な学問 3. Community commitment コミュニティへの貢献 4. Project base プロジェクトベース 5. Personalized Learning 個別最適化学習)

特徴的なものとして、一人一人の能力に合わせた”Playlist”を導入した生徒一人一人のカスタムメードカリキュラムです。それによって個人が最大限に学習できるよう先生がサポート。また徹底した少人数教育(1クラス25名がMAX) でグループ分けしプロジェクトベース中心の授業。学年も小学校低学年、高学年と分け、厳密な年齢で区切っていません。また教室内にビデオを設け生徒の学習状況を教師、保護者にも開示する透明性についても徹底しています。

このような、Altschoolのテクノロジーを駆使したメソッド以外にも、Social Emotional Learning (社会性 / 道徳)教育にも力を入れ、野外のField Tripなどコミュニティとのinteractionを経験し非テクノロジーの部分にも強化し、ITと人間性、双方のバランスのとれた最高峰の教育を提供していることです。

アメリカ国内の教育者にとっても、これだけ贅沢な学びの場でキャリアを発揮できることは絶好の機会です。生徒の入学応募者数はもちろん、教師志望者の倍率も相当高くなってきているとのことです。教育者の理想を追求できる場ともなっているのかもしれません。

親にとっても幼稚園〜中学校の多感な時期に、子供を安全でストレスない環境で学ばせたい、未来に活躍できる人材に成ってほしい、というニーズに合致しているとも言えます。急増する保護者からの人気から入学応募者数が高まりAltschoolはSan Franciscoの他にPal Alto西海岸だけでなく、New Yorkにも拡大し、次なる年はChicagoを視野にいれているとのこと。

やはり、学費は都市の物価上昇に伴い増加しており、現在では年間約3万ドル〜(約360万円〜)です。様々な学費支援制度なども設けているそうですが中々ハードルが高いと言えます。

しかしAltschoolには豊富な資金もあるので、現時点では着々と校舎の拡大をしていますが、長期的にはAltschoolの内部教育オペレーションを最適化し、教育メソッドをアメリカ全土や海外展開もし、入学金がまかなえない家庭の子どもにも提供できることを目標にしたいということでした。

もしこれが本当に可能になったら。アメリカの教育現場も変化し、そのメソッドがグローバルに広がり、それが21世紀の教育としてのスタンダード、にいつか進化するときがくるのでしょうか。可能性を感じさせます。

今回の保護者説明会で印象に残ったのは、実際にAltschoolにお子さんを二人通わせていて、実際にAltschoolで勤務されている女性の方にインタビューが行われていました。

なぜ子どもをAltschoolに入れたのか? という問いに対し、

今までの公立学校では大人数教育を行っていて、彼は(上の子)は算数が出来すぎていつも目立ってしまっていることに、劣等感を感じてしまっていた。他の生徒と比較されることにプレッシャーを感じていたようだったけれども、Altschoolに入れたらのびのびと自分の学びたいものを学び生き生きしているように見える。

下の子は、今までの学校に通っていた時と比べ随分社会性だったり思いやりを持つようになった。Altschoolでは地域Communityに関わったりする機会が多く、自分が周囲の人に何か貢献したい、という気持ちが芽生えているよう。

と答えていらっしゃり、他の参加者の保護者からは共感をたくさん得ていました。今までの従来型の学校では伸ばしきれなかった子どもの才能を最大限に伸ばす環境がAltschoolにあるとのことでした。

今回の保護者説明会の参加をして、”子どもの教育のゴールをどう考える?”ということを意識させられました。

一流の大学に入り優良企業に入ってもらいたい、と願うことで子どもを守りたい、という考え方はもはや20世紀のものなのかもしれません。

これから子どもにどう活躍してもらいたいだろう?どうなってもらいたい?と21世紀の親は模索し続けているのでしょう。少なくとも今回参加していたアメリカの経済的にも豊か(であろう)層の親からはそんな印象を持ちました。

Altschoolは確実に子どもに最良の選択肢を与えてあげる、ということでニーズを掴むポジションを確立しているのでしょう。

 

 

 

 

 

 

テクノロジー活用で学力格差埋めるチャレンジ – 2

前回のテクノロジー活用で学力格差埋めるチャレンジ – 1に引き続き、教育機会に恵まれない生徒達に対する革新的教育メソッドを導入するチャータースクールの試みの紹介第2弾を紹介したいと思います。

2. Caliber school Caliber Beta Academy (Grade K ~ K8まで幼稚園から中学校)

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平屋のキャンパスが併設される校舎

Caliber チャータースクールは昨年創設されたばかりの新校。サンフランシスコ近郊のリッチモンドにある校舎を今回は訪問しましたが、カリフォルニア州のVarejoにもこれから設立予定とのことです。

Caliberスクールのミッションとしては、先陣の革新的チャータースクールが生み出したテクノロジーに習い、Personalized Learning SystemやBlended Learningの活用も導入する上、Social Emotional Learning(人徳教育)にも力を入れています。大学進学のため、大学に入学することだけではなくその後にリーダーシップを発揮する人材、人間力のある大人となり活躍してほしいという願いがあるからです。

Social Emotional Learningの一例としては、アメリカの学校では珍しく、健康的な家庭的な給食を先生と生徒と一緒に食べるランチやお掃除の時間も設けています。まるで日本の小学校のようです。

まだ創立1年の新しい学校であるが故、様々な教育アプローチをTry & Errorで先生たちも取り組んでいるということです。先日ご紹介したチャータースクール界のトップランナー、Summit schoolは創立から10年以上の実績がある故、教育メソッドが確立されKindergartenからSummit Schoolへ通っていた生徒も多いことから学習姿勢が身についている生徒が多く、生徒の授業中の集中度は高く、真面目に取り組んでいる様子が伺えましたが、Caliberでは新校なのでまだ生徒の集中度にばらつきがある様子で中にはよそ見をする子も少々目立ちました。それも、いままでの経験から学習姿勢を身につけられる環境にいたわけではないので、これからCaliberで学ぶ姿勢、学問の基礎を固めていってもらいたいと願います。

Caliberは学習姿勢の基礎となる、算数と読み書きに力を入れ、学習のコアスキルを固めてもらうことが優先的に取り組まれてます。

算数は、Blended learningを導入してます。i-Readyを使ってカリキュラム管理。算数は、ST Mathなどのオンライン算数教材を使いながら、教室ではグループごとに問題に取り組み、先生と直接確認する、ハイブリッドなやり方が浸透していました。これによって宿題の進捗度も先生は把握できるので個人の学習進度が分かりやすく見えるとのこと。特に算数は理解にばらつきが多いのでBlended learningを使用して良かったということです。

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レベル別グループに分かれ演習問題解く。

読み書きの部分では、幼稚園生も含んでWritingの時間が毎日1時間設けられてます。Reading Partnerももうけ生徒同士で読書も継続していきます。

また、Codingの授業にかなり力をいれており、常駐で5人の先生のもと実施されています。当日の授業では、Tynkerを使用しながら進行してました。Volunteerでの地域の協力者も多くいらっしゃるとのこと。

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プロジェクターでScratchを投影し全体の流れを確認。各生徒が手を動かして取り組む。

Codingに力を入れるのも、彼らが大学を卒業してもプログラマーやエンジニアといったIT分野の職業に就き活躍できるオプションを持ってもらうためとのことです。またただ単にプログラミングを覚えるだけでなくその基礎となるComputational Thnking skill、ITツールを使用した問題解決力を養うことに重点を置いているとのことです。

まだCaliberは若いチャータースクールですが生徒や保護者、先生同士のフィードバックを確認するため毎週先生同士がレビューを行いながら各生徒に沿った指導内容や生徒にトラブルが起きた際の問題解決の相談なども密に行っているとのことです。若い学校による壮大なチャレンジ。まさに、プロトタイプを繰り返して、走りながら行動に移している、といった印象を受けました。

テクノロジー活用で学力格差埋めるチャレンジ – 1

先日、Next generation learning challenges という財団が企画する学校訪問ツアーに行きました。

主にSan Francisco近郊の街、Oakland市内のチャータースクール3校を訪問しました。

チャータースクールについては前項で( *アメリカ独自のスタイル。保護者、地域住民や教育者がその地域で新しいタイプの学校を公的資金援助のもと設立。)と記載しましたが詳細知りたい方はWikipediaに分かりやすく載っていたので是非参考にしてみてください。チャータースクール Wikipedia

Oakland市はサンフランシスコベイエリアの中でもEast Bayに位置する中心都市の一つです。1970年代から犯罪率が上昇し、それ以降改善されたとはいえ、治安の面では決して良くはありません。人口の19.4%、家族の16.2%は貧困層以下と言われており、地域によっては低所得者層が住むエリアも存在し親も英語を母国語としない家庭もあります。つまり学校教育がまともに受けられず大学就業もあきらめてしまい定職に就けない若者がいる現実があります。

そんな問題に対して、学校教育の側面から解決するためにチャレンジを続ける革新的なチャータースクールを見てきました。

今回はそのうちの1つの学校を紹介したいと思います。

1. Summit Public School K-2 (Grade 7-9向け学校。日本でいう中学校)

元中国人孤児院の建物改装した校舎
元中国人孤児院の建物改装した校舎

Summit Public school はアメリカチャータースクール界のトップランナー。シリコンバレーで2003年に設立されて以来「あらゆる生徒も4年生大学へ入学させる」というミッションのもと革新的な独自教育メソッドを築いてきました。Summit Public Schoolは現在シリコンバレーで7校、ワシントンDCへも拡大し2校あり、更に2校が来年開設される予定です。Summit School HP

Summit Schoolの指導方針のコアとなる4要素はCognitive Skill (標準基礎学力)、Content Knowledge (科目の習得度)、Habits of Success (メンターの指導のもと自ら責任持ち行動)、Real-Life Experiences(実社会経験)を通し、自立した学習サイクル(Self-Directed Learning Cycle)を繰り返していくという内容になっています。

この指導方針に基づいて、各生徒のPersonalized Learning を実践しています。Personalized Learningとは個人によって学力差があるため、個人のスキル、目標に沿ってカリキュラムをカスタマイズし個人の学力にあった学習法を実践していくというものです。これらは各生徒が持つGoogle Chrome Book上でカリキュラム計画の進ちょくを管理していきます。

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1人1台Chrome bookを活用

Summit School のPersonalized Learning Planのシステムは、Facebookのエンジニアが昨年から開発に協力していたことでも有名です。またこのノウハウを更に広げるべく、一般のアメリカの公立学校に向け、無償提供してます。(Summit Basecamp

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Personalized Learning Systemのフロントページ

このPersonalized Learning Planに沿ってクラス内でレベル毎に数グループに分けます。授業の最初に全生徒にその日の学習内容をクラス全体に説明し、用意しておいたグループ毎に違うレッスンプランに取り組みます。理解に悩んでいそうなグループには先生がクラスの中で時間を取り、じっくりまた指導をします。

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プロジェクターで全体に内容をシェア

また、各生徒にはメンターがそれぞれ就きCheck-in(面談)を通して進ちょくの相談、悩み相談などを行っているようです。リアル学習も重視しているので普段はProject baseのスタイルでグループワークを行い、Real-Life Experienceのカリキュラムとして、実社会とのつながりを学ぶためインターンシップなども奨励してます。

このように、システムやテクノロジーを駆使した授業を実際に使いこなし、授業を円滑に運営するのはとっても大変なのではないか、と思われると思います。実際に、生徒の効果を最大化する”ファシリテートする”スキルが教師たちに求められています。Summitでは毎年8週間のProfessional Development(専門性養成)を行い各々の教師のスキルアップの研修を充実させています。

今回訪問して驚いたことは、このPersonalized Learning Planには、まだ中学生であるのに入りたい大学や人生の目標に向け、長期的目標が設けられています。大学入試のためには入試試験でスコア何点目指さないといけないのか、それらを年間、週間、Dailyターゲットに落とし込んでいるのです。当然ながら、Summit Schoolのミッションが、「全生徒4年生大学へ入学」と掲げているので正にそれを個人レベルに形にして実践されています。

実際に生徒にインタビューをしてみると8年生のラテン系の女の子は公立名門大学であるUC Berkeleyに入りたいという目標があるのでその目標に沿ってメンターと相談しながらコツコツとタスクをこなしていました。以前通っていた学校に比べ、Summitでは自分で学習進ちょくをマネージしていかないといけない。大変だけどそれでも勉強する意味も分かっているし遥かに今の方が充実してる、とのことでした。中学生にしては立派なコメントだなと感心しました。

Summit Schoolは創立12年になり、すでにこの教育メソッドの効果が検証されています。

卒業生の100%は4年生大学の入学資格を有し、96%は4年生大学への入学が認められ、55%が6年以内に大学コース修了しており、全米平均の2倍の実績となってます。Summit SchoolのHigh schoolはカリフォルニア州のトップ20%に入る実績も残しています。Summit Schoolの精巧な教育カリキュラムとテクノロジーの活用によって、低所得者層の子ども達も4年生大学へ入り社会で活躍していくということが既に証明されています。

Summit Schoolは、まさに革新的チャータースクールのトップランナー。教育機会に恵まれない生徒達にシリコンバレーならではのテクノロジーを駆使した革新的な教育メソッドを導入し、全米学力格差に対しチャレンジに挑む先駆け的存在です。