21世紀の学校教室のデザインとは?

21世紀の教室デザイン:スターバックスの空間?

スターバックスコーヒー店内をイメージしてみると、各々が読書をしたりPCに集中したり、ソファ席に座りたい人はそこに行き、机と椅子が必要でもっと集中したい人は静かな場所へと自由に移動していきます。

誰かに席を指定されることなく、自分で一番良さそうなところへ移動していきますよね。

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スターバックスの空間では、様々ある選択肢の中から個人が選択をし、

“どこで座るのが一番最適か”と考えて移動をしています。

21世紀型教育では、実社会での問題解決をし自ら選択していくことが重視されていますが、

従来型のずらっと30人の生徒が列に並んだ席のレイアウトでは、実社会とはかけ離れた空間ですし、固定された席で一日中座らなくてはいけず、生徒に選択肢を十分に与えているとはいえないでしょう。

そこで、従来の集団教育型のレイアウトから脱却し、実社会に近い形で生徒自身が学習するのに最適な場所を選ばせ、生徒に席の選択肢を与える柔軟な席の配置が採用される動きが出てきています。

これがスターバックスの空間が出している“自ら選択肢を持って席を選ぶ”というコンセプトが理想に近い形となっています。

生徒主体の教室レイアウト

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参照:Edutopiaより:Visualizing 21st century classroom design

アメリカの先生コミュニティの中では、21世紀型教室デザインの要素は5つあると言われています。

  1. スペースを区切る
    • 全体集合できるスペースを設ける。(クラス全体会や、小規模な講義する場合。)
    • 作業スペースを設ける。(個人、ペア、大人数で作業する状況に応じた区切り。)
  2. 生徒のアクセスのしやすさを優先
    • 全生徒にとってフレンドリーで、教室の道具の配置がされているか。
  3. 生徒にモビリティツールを与える(Tech ステーション)
    • 内向的、外向的などあらゆるタイプの生徒が学習を深め、成果を発表できるツールの選択肢を与える。
      • 例)タブレットやノートPCなど自由に使えるTechステーションを設ける
  4. クリエイティビティスペースをつくる
    • 生徒がクリエイティビティを形にできる場、Maker Space(メイカースペース)をつくる
    • 自由に生徒が休み時間などを利用して訪問できるようできるだけオープンにする
  5. 生徒の個性を尊重する
    • 生徒個人の内的モチベーション(何にパッションを感じるのか)を引き出してあげる
    • 生徒と一対一の関係性を大切にする
    • 授業の最後に必ずまとめや振り返りの時間を持つ。生徒たちが何を得たのか、ということを引き出してあげる。

シリコンバレーの学校の教室

シリコンバレーの21世紀型教育を推進する学校では、まさにこの”生徒主体”で、”スターバックス型”の教室のレイアウトが導入されています。生徒たちが決まった席ではなく毎日、自分の座りたい席に選択し自由に移動していきます。

これまで筆者が見てきた学校の教室のレイアウトを紹介したいと思います。

Altschool (幼稚園〜小学高学年)

Altschool は、以前の記事で紹介したように、革新的マイクロスクール(少人数制 / 年齢混成 / 個人のパーソナライズ学習)の方式をとる学校です。 Altschoolではモンテッソーリに基づき生徒に自ら選択肢を与え自分の学習目標に責任を持たせ、校舎内すべての中でそれぞれ最適だと思う部屋やスペースに移動することを推奨しています。

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Altschool Palo Alto校舎  自習 / コラボレーションスペース

こちらの写真では、手前の机は生徒が必要だと判断したときに移動できる自習スペースです。”Voice Level 0″とシールが貼られ、このスペースでは声のレベルは最小限(つまり話してはいけない)にするよう生徒自身にルールを課しています。

一方、奥のホワイトボードがあり壁にポストイットが貼ってあるスペースは、”Voice Level 1″ とし、相手が聞こえるだけの声を出すというスペースとしています。ここでは課題などを生徒と協力しながら進めていけるスペースになっています。

きちんと自分の学習したい内容に沿って、状況に合わせて、周りに気を遣い声のトーンを調整することは、実社会の中でまさに大人が日常で行っていることです。

Prospect Sierra(幼稚園〜中学)

East Bayに位置するPrivate SchoolのProspect Sierraでは21世紀型教育、少人数制を取り、CreativityやEmpathy(共感)を重視し未来の社会でコラボレーションしていける人材育成を目指します。Maker Spaceを導入し自由にモノづくりに励むことができたり、Artの充実も測りSTEAM教育に力を入れている学校です。

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3年生の教室。先生はむしろファシリテーター。

奥のスペースでは先生が待機し、生徒がわからないことがあったら質問に行きます。

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活き活きと先生の講義を聞く生徒たち。手前の生徒は一人で集中。

Prospect Sierraでは、基本的には先生の講義を聞いた後、生徒たちが主体となってプロジェクトに取り組むスタイルを取ります。先生から講義(質問なども)を聞くスペースと自習、コラボレーションスペースと柔軟に区切られ、生徒たちが自由に自分のペースで移動していました。

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従来型の「机」というより、テーブル。

生徒たちのコラボレーションスペースは、テーブルで円を囲んで議論がしやすいような工夫がされていました。

ちなみに、こちらがここの学校のMaker Space (メイカースペース)です。生徒たちの作品のプロトタイプ(試作品)が置かれています。ここでは休み時間はいつでも来て作業して良い、ということにしたり、放課後のクラブ活動で使われています。

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21世紀型教室デザインの効果

生徒に選択肢を与え、個のポテンシャルの成長を最大限にする工夫がされている21世紀型教室デザインですが、

実際のところ、アメリカではまだ、少人数制の授業を実施できるほど余裕が持てない学校も多いですし、従来型の教室のレイアウトからの脱却や資金調達も難しいという学校が多い現状となっています。

しかし、こんな状況の中、コストをかけることなく、21世紀型の教室デザインのリフォームに成功した意識の高い先生の事例などもシェアされるようになり、シリコンバレーだけでなく、全米の中でも草の根活動のムーブメントが起こっています。

参考記事: North Dakotaの2年生の先生がStarbucks型の教室にデザインした記事

新たに席のスタイルを変えることで、授業の質に変化がうまれ、下記のような効果が出てきているとのことです。

確実にリフォーム後で生徒の学習効果や先生の意識改革にもつながり、より意味のある授業が展開できるようになったとのこと。もう昔の席の配置には戻れない、と先生も話しています。

21世紀型教室デザイン=大人が生きる実社会

従来型の席のレイアウトでは生徒は一方向を向き、先生の許可がないと動くことも許されません。教室の空間では、まるで100年前の時代と同じような隔離された空間となってしまっています。

教室の外では、まさに技術革新が進み、大人たちは早いペースで意思決定をし、Globalな環境で無限な選択肢がある社会を生きています。

実社会と大きく離れてしまった空間で、一体どうやって生徒たちは未来の問題解決をし、よりよい世界のため意思決定をしていけるのでしょうか。

日本の教室は21世紀デザインに変えていくべきか

日本では、2020年に、全小学校プログラミング教育必修化やICT機器の導入など従来の方針から大きく進化する内容へ変更されます。この新学習指導要領方針が徐々に明らかになってきています。発表

  • 新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目の新設や目標・内容の見直し
  • これらの新しい教科を、主体的・対話的で深い学び「アクティブ・ラーニング」へ学習プロセス改善

とあり、より一層、学びのプロセスの変化が重要となっていきます。

授業スタイルは学びのプロセスを変化、改善させ、プロジェクトベース、生徒主体とシフトしていく必要があることは明らかです。

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また、未来の子どもたちが必要となる資質や能力について、

「情報を読み解く力、情報技術を手段として使いこなしながら、論理的・創造的に思考して課題を発見・解決し、新たな価値を創造する力、感性を働かせながら、よりよい社会や人生の在り方について考え、学んだことを生かそうとする力」

と言及し、実社会での問題解決をし主体的に動く力が求められていくと文部科学省の方針として発表しています。

社会の問題解決をしていき、実社会で生かしていく力を養うためには、教室の中が実社会と乖離した空間ではこのスキルを生徒たちが習得し実践することは難しくなっていくでしょう。

実社会に近い形で生徒たちに選択肢を与える環境と、生徒の学びのプロセスを大きくシフトさせていくことが日本の学校でも必要になってくると思われます。

教室のレイアウトを変えることで、「形から入る」ということにはなりますが、これで大きく生徒・先生のマインドが変わっていったという成功事例がアメリカから出てきています。

日本のカルチャーと適合するスタイルかどうかは検証が必要となってくるとは思いますが、日本の教育の良いところ(生徒の態度の良さやしつけ)と上手に組み合わせ、日本から未来を見据えた教室デザインの成功事例が出てきて、21世紀型教育が日本の教室で実践されることを願っています。

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Most Likely To Succeedを観て

Most Likely To Succeed  21世紀の学校教育のあり方を問う映画

先日、サンフランシスコベイエリアで開催された、先進教育に携わる教育者向けのワークショップに参加してきました。

そこでは、”Most Likely To Succeed“というアメリカ教育ドキュメンタリー映画を観たのち、参加者それぞれのリフレクションを行い、自分たちがアクションとして何ができるのかディスカッションをしてきました。アメリカの教育者がみんなどう考えているのか、よく分かり私に取っても大変有意義な会でした

Most Likely To Succeed“は、一般上映はされていなく各地域コミュニティによる自主的な上映会のみ限定して公開される映画です。各著名教育者からも高く評価され2015年は様々な賞を獲得していて全米教育界の中で大きな影響を残しました。

従来型の暗記中心、テスト漬けで集団型マス教育から脱却し、21世紀のいまは、「構成主義(Constructivism ピアジェによる)」具体的な教えを強制しない学習理論が見直されています。(詳細についてはWikipediaがでています。)

構成主義はほとんどの場合、子供中心、オープン・エンド、プロジェクトベース、問題ベースといったものの教え方のモデルに関連付けられています。学習者を注目の中心に置いた指導法といえます。

この「構成主義」を取り入れた21世紀型の先進的な学校がアメリカでは増えてきています。(具体的な先進的な学校例についてはAltschoolなども代表例となります。こちら以前の記事でアップしてます。Altschool 未来形の学校となるか

この映画のすごいところは、そんな”先進的な”学校に取材をし続け、そこに通う生徒や保護者のリアルな心情を描いているところにあると思いました。

正直なところ構成主義の教育で子供は伸び伸び学べるかもしれないが、実際のところは保護者はテストから離れたことによる大学入試に直結しないことへの不安やジレンマを抱えていることを様々な角度から描写しています。

既存の教育システムから脱却し、21世紀型教育、伸び伸びと生徒中心の学習スタイルを進める構成主義の教育方針が次世代の教育の姿だ、と言われてきたものの、やはり既存の教育システムから完全に抜け切ることができない、といった現在のアメリカの教育が抱えるリアルなジレンマを描いています。

アメリカ教育の中でも、まだまだ正解は解明されていなく、アメリカの選ばれた環境にいる生徒や保護者、教育者でさえも、まだ手探りを続けているのだということが再認識できました。

下記、ざっとドキュメンタリーのあらすじをダイジェストで書きます。ポイントとしては下記の内容になります。

  • 100年以上変わっていない20世紀の知識習得偏重の教育から脱却せねば
  • 構成主義取り入れた学生主体のプロジェクトベースの21世紀型の授業スタイルを導入してこう
  • 大学は名のあるところに進学するため、やはり既存の大学入試システムに則った学力つけて欲しい

⇨ 結局のところ21世紀型の新しい教育方針を取り入れた所で完全に既存の教育システムから脱却ができないジレンマ

100年以上変わっていない20世紀の知識習得偏重の教育から脱却せねば

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”アメリカの教育システムは、100年以上前に創られたものなのに、今になっても誰もがそれを、学校のあるべき姿だ、というメンタルでいる。”

21世紀の未来を生きる子供たちに、100年前の教育システムを導入したままで、どうやって、将来の経済のイノベーションへ貢献する人材へと育てていけるのだろうか、という矛盾を指摘。

長い間、教育の最大のフォーカスは、知識習得に当てられていた。そしてそれは先生からの教えが唯一の習得方法と思われていた。

これに対して、ハーバード大学イノベーションラボの Tony Wagner氏は、下記のようにコメント。

”今の時代にこんな教育は必要ない。なぜなら、今日では学習コンテンツはユビキタスになり無料でインターネットがつながるデバイスさえあれば誰でもどこからでも知識を得られるようになっているからだ。”

学校で先生から教えられること以外にも様々な情報を習得できる現代の環境(MOOCsやオンライン学習など)で、100年前の学校のシステムのまま、先生の教えのみ聞いていては未来の産業を作っていく人材は絶対の育つわけない、という論点から入っています。

構成主義取り入れた学生主体のプロジェクトベースの21世紀型の授業スタイルを導入してこう

そんな時代遅れの既存の教育システムの脱却案として、構成主義の考えが台頭する。構成主義とは子供中心で、先生の教えは極力抑え、自ら考えさせるプロジェクトベースの授業スタイル。

その方針を全米で先駆けとして導入した、カリフォルニア州サンディエゴにある High Tech High schoolの密着取材が行われる。

この学校は、Qualcomm社のCEOの寄付を中心によって2007年に設立され、教科横断プロジェクトベース型、クリエイティブな問題解決ができる人材育成を主な方針とする。

特にこの学校の感心する点は、

  • 各先生が全ての授業の方針を決め自由にカリキュラムを組めること(テスト実施しなくても良い)
  • テストの代わりにアートの視点や数学的な思考、歴史理解力など総合的に考えさせる生徒同士コラボレーションをしプロジェクトを動かし、生徒たち自身によるプレゼンテーションを評価軸

このようなテストと直結していない授業スタイルをとりつつも、今までに卒業生の98%が大学進学の実績を出し、革新的な教育を実施していても既存の大学入試の学力レベルまで引っ張ってこれている、ということが証明されています。

High Tech High Schoolでは、未来を生き抜く子供たちのために、クリエイティビティとイノベーティブさを身につけるよう様々な工夫がされ、

特にMarkという人文学を専門としたHigh Tech Highの先生は、授業中に生徒に向け、「君たちは手を挙げる癖をつけないといけない」と語りかけ、ソクラテス式の授業を実践。

「他の生徒と互いに話す必要があるのであって、私をいないものとしなさい。自分たちで問題を認識して、考えるのです。いつまでも黒板にいる先生のことばかりみて答えを求める癖を直しなさい」と生徒たちに語りかけます。

大学は名のあるところに進学するため、やはり既存の大学入試システムに則った学力つけて欲しい

このように革新的なHigh Tech Highの教育について評価が高まるにつれ、反対意見も出てきています。

保護者の懸念として、先生の教えは最少限にした中で、テストも行われず、本当にこれで本当に大学入学に必要な学力は身につくのだろうか?特に数学のスキルは大丈夫なのだろうか?

High Tech Highに通う娘をもつ教育熱心な父親Gregの考えとしては、結局のところ、革新的な教育を試みてはいたが、もっとテストをさせ、長い登校日を設けるべきなのではと最近になって巡り巡って考え始めたということです。また、同じように子供を持つ親たちにもGregのように考え続けるJourneyを体験してほしいという願っているとのことです。

子供の未来を気にかけるからこそ悩む保護者たち。そんな彼らのリアルな心情が伝わってきました。

“Most likely to succeed”では、最後にオーディエンスに、このように人間である自分たちが創り上げた教育について現在招いているジレンマ、問題点について考えさせ、最後にこう問いかけます。

”あなたの子供にどんな人になってもらいたいですか?”

アメリカでは教育者、保護者、生徒たちにとって正解の形はまだ分からず、様々な考えを基とした革新的なアプローチが教育現場で展開されて手探りで新しい教育のかたりを模索している状況なのだということがよく分かりました。

映画を観て リフレクション(筆者個人)

上映後は、隣に座っていた、アフタースクールでMaker教育のカリキュラムを作成している若い教育者の女性とお互いの感想をシェアし合いました。

まさに構成主義の教育アプローチを学校が終わった放課後の外の場で推進する彼女ですが、Makingが大学入試に直結するわけではないので、懸念を示すような保護者には、きちんと子供が学んでいる進捗を報告している、など工夫をしているということです。

彼女が現代のアメリカ教育について、指摘していたポイントは、現場で生徒とまさに向き合っているからこそでてくるようなもので、非常に興味深かったです。

  • 子供たちに学ぶ意味、モチベーションを持たせることが最も重要。
  • プロジェクトベースの授業は流行ってきているが、子供たちもお遊び感が出てしまっているから、なぜこのプロジェクトをするのか、何の目的なのかとしっかり理解させるべき。
  • 実際に子供たちに失敗をさせ、そこからまなび再度組み立てるような授業を誘導させてあげるべき

私自身としても、まさに彼女と同感であり、特に自分が何を学びたいかどうして学びたいかと動機付けを導いてあげることが重要だと話が盛り上がりました。

下記の写真は、全くもって分かりづらいと思いますが、私たちがペアとなり、”どんな教育ができるだろう?”について考え、デザイン思考のフレームワークを使って、私たちなりの教育のあるべき姿のプロトタイプのイメージを作りました。

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このプロトタイプのテーマとしては、

  • コミュニティの中で貢献する、ということをモチベーションにもち子供たちに学習する動機付けを導いてあげる
  • 社会の中で共生しながら、多様な人とコラボレーションをしながら学び続けて欲しい

とした願いも込められています。

さいごに、 “Most Likely To Succeed”はコミュニティによる上映会のみ限定で公開、ということを記載しましたが、なんと日本でも上映されることを知りました。(字幕は英語だけになりますが、日本語のあらすじが配布されるそうです。)

下記リンクで6/7と6/18に上映会が東京でFuture Edu Tokyoという団体が企画、開催されているとのことです。ご興味ある方はこの機会に是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

http://mltsshibuya.peatix.com/

VR (Virtual Reality) 教育分野への応用

VRの普及 コンテンツがKey

今年、2016年はVRの発展の年と言われています。

Oculusの発売があり、Playstation VRの発売も予定され、特にゲーム業界にとってはVRゲームの市場が大きく賑わうことが予想されます。自分だけの世界に浸り仮想現実の世界を走り回るのは臨場感あって楽しいに違いありません。

実はゲームなどエンターテイメントの活用以外にも、VR技術が教育、医療分野などへの応用も期待されています。各方面で現在まさにリサーチが展開されていますが、シリコンバレーではアカデミック領域、起業家、ベンチャーが一体となって試行錯誤しながら産業を創っていく動きが活発です。特に、スタートアップ企業がイニシアティブを取り、バーチャルコンテンツ制作のビジネス好機に向け、VR/ARビジネス関係者を集いナレッジ共有やネットワーキングをすることで、業界を活性化させていくムーブメントがあります

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先日、このようなスタートアップ界隈が中心となる、San Francisco市内で開催された、VR / AR技術を教育、医療分野への応用を考えるMeet-up event (エキスパートによるパネルディスカッションがメイン)に参加してきました。

今回のMeet-up eventではLifeliqeというVR専門コンテンツメディア会社と、VR業界情報を発信しコミュニティを創っているUpload社が主催してました。特にLifeliqeは教育に焦点をあててVirtualコンテンツを制作をしています。

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イベントに登壇するパネラーは、教育アクセルレーター関係者他、スタンフォード大学のDr. や医療界、教育界でVirtual Realityの体験デザイン分野のエキスパート、なかにはアップル社でスティーブ・ジョブスのアドバイザーを務め、長年Edtechスタートアップ企業やインキュベーターに新しいLearning体験について顧問を担当している大物(マイケル・カーター氏)も参加していました。

全体的には、具体的にどうビジネスを展開するか、という話の段階にはまだ発展はされておらず、VR/ARの応用のしかたについて必要になる考え方やコンセプトを、共有していたという印象です。

下記パネルディスカッションで議論されていた内容のポイントをまとめました。

VRを使うメリット:

1. 体験をスケールアップできる 2. バーチャルだからこそ質が上がる体験ができる

VRを活用することにより、どういった効果が見込まれるか?今回のパネラーのやりとりでは大きく2つになると解釈しました。

  1. 体験をスケールアップできる(高価な体験や自動化に置き換えられる体験がもっと広く使われる可能性。)
  2. バーチャルだからこそ質が上がる体験ができる(ノートと文字やモニターの二次元を使った学習だけでは習得できなかったような、3D次元だからこそ習得でき学びの質が上がる可能性)

1.スケールアップについては、

人手が足らない現場の中で、バーチャルに置き換えて広く導入していくこと。医療現場では、特に精神病患者など心理療法に使われたり、教育現場では、地方に住む先生が生徒にNew Yorkの美術館や博物館の展示を生で見せてあげたい、でも経済的や物理的には実現難しい、といった場合、バーチャルであたかもその場にいった経験を生徒たちに提供するなど。

2. バーチャルだからこそ質が上がる体験、としては、

VRを使うからこそできる上質体験。例えば、シミュレーションやリアルには危険すぎて体験できないことをバーチャルで体験し学ぶ、といったこと。具体的には、歴史体験学習(バーチャルにその時代に入り込み、歴史重要人物と実際に話すなどし学びを深める新しい学習体験)や天文学の授業など。また、職業訓練について、危険な現場での作業員を対象とした整備士や外科医の訓練などは、VR技術によって、シュミレートしてから現場での作業をするというステップを踏むということが可能になります。

また、今回パネラーから意見として挙がっていたことに、VRでは、Empathy(共感)を誘い、感情を動かすことが可能になるという点。これがパワフルなツールとなるのでは、という話しも出てました。これについては、以前ブログで投稿したVirtual Global Classroomの中でも紹介していましたが、異文化理解教育を、国内に居ながらにして体験し海外の生徒たちと人と人とのコミュニケーションの感情を伝達し、相互理解を深めることにも応用されるかと思います。または幼稚園〜低学年生徒に対して、しつけや道徳面の教育についても応用ができるのではないか、なども具体例として上がっていました。

テクノロジー導入をゴールではなくツールに使用すること

マイケル・カーター氏(元スティーブジョブス顧問)がパネルディスカッション中に発言をしていた内容ですが、

VRテクノロジーを教育現場に登用することになっても、絶対に先生の職業は無くならないということ。この基本は変わらないと力強くコメントしていたことが印象でした。

先生は世界で最も忙しい職業。テクノロジー会社は現場の先生と話し、「5つ」 何が大変か聞き出すべき。それをテクノロジーで解決することに専念をするべきだということ。

VR/ARはその点で、忙しい先生の時間を節約することが可能になるのか、今まで出来なかった学び体験を深めるよう促せるのか、が肝になるとのこと。

VRによる学習体験のデザインが必要

全体的には、教育現場にVR/ARが導入が普及されるのはまだ先の話しではあるものの、まずは部分的に、VRを使って効果的に学べる学習体験から始めて行く(例えばBody Languageを使ったものなど)、特定の学習分野をVRに置き換えていく、ということから始まっていくことになりそうです。

おそらく始めのフェーズは職業訓練の分野から高等教育分野、そこから小中学校への展開、という流れとなっていきそうです。

またVRを使った学習体験によって、

  • 学習者の誰を対象とするのか
  • それによって本質的に何を学ぶことを目的とするのか

といった学習体験デザインが重要となってくることでしょう。

個人的には、バーチャルだからこそ、今までの二次元での学習体験では習得できなかったような上質な体験ができる、ことについて、どのような新しい学習体験のデザインを、各研究機関、企業が創り出していくのか、今後の動向が楽しみです。

さいごに、先月サンディエゴで行われたASU GSV Summit でのビルゲイツの発表を共有したいと思います。

ビルゲイツの教育慈善財団であるThe Bill and Melinda Gates Foundationのイニシアティブの中でバーチャルリアリティのコンテンツデザインに向け本格的に取り組みを開始しているということを発表しました。

http://livestream.com/asugsvsummit/events/5043691/videos/120348577

難民キャンプや発展途上国でVRを使った学習機会の提供を開始しているとのことを発表しています。特に、この発表のなかで、下記のようにコメントしています。

“Virtual reality can make things more engaging,”(バーチャルリアリティが学習体験をもっと興味をそそるものにするだろう)

“There are lots of places where [VR] will play a practical role and hopefully draw people in.” (VRがもっと効率的な役割を果たし、もっと人々を惹きつけるところがあるだろう)

 

Virtual Global Classroom

Global教育をテクノロジーを使って実践

アメリカ・オースティンで開催された教育テクノロジー祭典SXSWeduのワークショップでみてきたVirtual Global Classroomの紹介をしたいとおもいます。

Virtual Global Classroomとは、国境を越えてバーチャルで(テレビ会議システムやVirtual Realityの最新機器を使用して)海外の学校のクラスルームとつなぎ授業を合同で行うプログラムです。

自分のクラスルームに居ながらにして、海外のクラスルームの生徒たちと交流ができ、

異なる文化圏の人とも協力しながら関係を築いていけるGlobal Citizen (グローバル市民)を育てていくことを目的としています。

テクノロジーを通し交流をVirtualにすることで、移動時間/コストや物理的制約などの障壁を下げ、Global教育を教育現場で実践することを物理的に容易にするメリットがあるといわれています。

アメリカでいわれるGlobal教育

日本のGlobal教育は第二外国語である英語教育が義務教育で必須科目とされ教育の中で重要な位置づけになっていますが、コミュニケーション中心でなく、学問としての要素からの脱却がなかなか難しい等、課題は山積みです。

英語を母国語とするアメリカの場合でも、日本と同様にGlobal教育の重要性は理解はされてはいます。

これからはアメリカ国外の人とも協力していくことが重要で、Global Citizenのマインドセットは必要だと、日本と同様に理解されています。ただ、アメリカはもともと多民族移民国家であるため日本ほど、海外に対する憧れ、といったようなものはないのかもしれません。

特にGlobalizationの影響でアメリカ国内だけでは、もはや雇用は保証されず、異なる文化圏の人たちとコミュニケーションする能力は大事だ、というトーンで言われているようです。

  • In a 21st century world where jobs can be shipped wherever there’s an Internet connection … a child born in Dallas is now competing with a child in New Delhi. — President Barack Obama 21世紀の世界では、インターネットがつながる場所でどこでも仕事ができるようになる。テキサス州で生まれた子供は今、インドの子供と競争することになる。  – オバマ大統領より
  • 1990年代には7,000だった多国籍企業が、2013年では65,000に増加。

それでも、実際の教育現場ではGlobal教育はまだコア科目ではなく、身につけることができたら良いなといった程度のプライオリティの認識だといえそうです。要因としては、以下のようなことが考えられます。

  • 教師がGlobal教育を導入する必要性を感じていない。(必須科目で物理的に忙しい/重要性理解してない。)
  • 学校で教えるグローバル教育のカリキュラムがない。必須科目ではない。
  • 中学校、高校ではたった50%の生徒しか第二外国語を学んでいない。(各州や町、教育委員会や学校の方針によって外国語科目の注力の仕方にばらつきあり)一方、ヨーロッパの生徒の外国語習得度の高さと比較して危機感を示す元合州国教育長官のコメントも。

そこで、Global教育は重要だけど、なかなか教育現場には浸透しづらい、といった現状の問題を解決し、Global Citizenをアメリカから輩出していくため、

一部の教育者有志やNPO団体によって、Virtual Global Classroomが導入されました。

教育現場に浸透しづらいGlobal教育を、テクノロジーを使って物理的制約を下げることで、カリキュラムの提供や合同授業の運営指導、支援など学校にボトムアップでサポートすることで普及の拡大を目指します。

まだアメリカ国内では大きなムーブメントとはなってはいませんが、21世紀型教育など先進教育に興味のあるアンテナの高い教育者の中ではその実施効果も検証され始め、注目される団体が出てきています。

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今回は特に印象的で以前から注目していた、Global Nomad Groupというニューヨークに拠点をもつ非営利団体が行っているVirtual Global Classroomを紹介します。

Global Nomad Groupのめざすところ

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Global Nomad Groupは、人生を通して会う事がないだろう、といった地域のコミュニティ、文化間をつなぐことに焦点を当てて活動をしています。 

あえて会うことがないような国の生徒たちをつなぐのは、

  • 世界規模でみるとたった3%若者しか学校へ通う年齢で海外へいく機会に恵まれていません。
  • ほとんどの若者が、自分が生まれた地域の学校へ通い、似た価値観をもつ人たちが集まるコミュニティに所属していく。
  • そして自国のメディア報道の影響を受けて外国のイメージを持ったまま、大人になっていきます。その国の人と一生、実際に対話をすることなく。

これが異文化間のコミュニケーションの障害になったり、偏見や相互理解の溝をさらにつくってしまう。

そこで、バーチャル上ではあるけれど、生徒達に実際に対話する機会を創り出していくことで、多様な価値観があることを認識しGlobal Citizenとして必要な要素を習得することを目指しています。

特にユニーク取り組みなのが先進的Virtual Realityの機材を使ったプログラムです。

まず、生徒一人一人がリアルな映像、音声、衝撃を通しその国の生活や情景を体感することで、行ったこともない国の生活をリアルに感じ、あたかも自分がその国にいったような擬似体験をします。

Virtual Reality

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アメリカと海外。物理的な距離を越えて、擬似体験を通してその国に住む生徒たちへの共感が生まれてきます。バーチャルではありますが、相手の国の立場に立って考えるようにするためにこの没入体験は有効のようです。

そして、テレビ会議を通し国境を越えて相手の国の生徒と実際に対話をし、ヒトとヒトのリアルなコミュニケーションのやりとりをクラスルーム間でつくります。

ディスカッションを行ったり互いの文化の紹介など次第に生徒たち主導で授業が活発になっていきます。

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1998年設立以来、これまでのプログラムの実績は100万人の生徒、53カ国、7大陸にわたっています。

ロサンゼルス – シリア間とのクラスルームを繋ぐ

ロサンゼルスとシリアの生徒たちとの合同授業の事例では、

アメリカ人の生徒たちに数分間、内戦状態が続くシリアの子供たちの生活をVirtual Realityを装着して体験。その後、ヨルダンに逃げたシリア難民の生徒とも繋ぎ直接リアルな対話をします。

シリア内戦が、彼らに直接与える影響を目の当たりにし、実際に街の中を歩くことがどれだけ不自由で大変なのか、ショッキングな情景を体験した上で彼らの立場に立ってコミュニケーションを始めます。

すると徐々に対話も深まり、学校のことや戦争が家族との生活をどう変えたか、教育やジェンダーの問題、など様々な内容をアメリカの生徒はシリアの生徒たちに質問し始めます。

国境は違えど、同世代のティーンエイジャー同士。各国ペアのパートナーを設けて密なる交流を通し友情が芽生えていきます。“アメリカに住んでいる自分にも、あり得たことなのかもしれない。”

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生徒たちの中に、共感が生まれ、次第に他人事ではなくなる瞬間。

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それまで、その地域についてほとんど報道された程度の情報しか知らなかったにもかかわらず、生徒たちの中に自然と、何かしないといけない、という責任感が生まれてきます。

テレビ会議が終わってからも、ロサンゼルスの生徒たちは自主的にブログでシリアの生徒たちの写真のストーリーを作成し、彼らの生の日常の姿をリアルな対話から得られたポジティブな面からネガティブな面も含め、発信していきました。

共感を通して、シリアの生徒たちの日常が、他人事ではなくなったとアメリカの生徒たちはコメントしていました。

教育業界の中でテクノロジーの導入がまだ主流ではなかったであろう1998年に設立し、当初戦争の渦中であったアメリカとイラク間でVirtual Exchangeを導入するなど、Global Nomad Groupの信念に感心しました。

よく国際交流は直接に実際の世界で会うからこそ意義がある、という声を聞きます。もちろん、実際に同じ場所で会うことによってより身近に感じることは間違いないとおもいます。(筆者もリアルの場でのGlobal Exchange事業に先月まで参加していました。内閣府青年国際交流事業

それでもこのGlobal Nomad Groupのプログラムによって、直接ではないけれどもVirtualの対話を通し、共感が生まれ当事者意識が芽生え、行動に移した生徒がいます。これはVirtualであっても生徒の心に火をつけたことの証明でしょう。

子供たちの視野を広げ、彼らの中に世界で起こっていることが「他人事じゃなくなる」マインドを芽生えさせる。これは異文化理解やグローバル教育が本来目指しているものと同様であり、Virtualであってもその効果を維持しているといえるのではないでしょうか。

Virtual Global Classroom の動向

Global Nomad Groupをはじめとし、教育テクノロジーの祭典SXSWeduコンファレンスにはその他、アメリカと中東とのVirtual Global Classroomを展開する非営利教育団体 Steven InitiativeQuatar Foundationも出展をし取り組みを紹介していました。彼らの目的もGlobal Nomad Groupと共通していますが、合同授業を中東とアメリカに特化して行っています。

また、Virtual Global Classroomとはタイプが若干異なりますが、インターネットを通し、Pen Palフレンドを世界中に作ってそれぞれの国の紹介をし学び合おう、という教育プログラムを展開するPen Pal School 。ここはオースティン発のEdtech Startupの会社です。

その他、global classrooms, international pen pal projects や異文化間の教育者研修プログラムを展開する KnowMyWorldという団体もあり、テクノロジーを使って、Global教育を活発させる動きが垣間見れます。

ますますVirtual Global Classroomの動きが活発になることで、若い世代に向けさらにGlobal教育の重要性を唱え、異文化間の相互理解を広めていけるのではないでしょうか。

Virtual Global Classroomスケールアップの課題

ところが、これらの取り組みはまだ主流なムーブメントとはなっていません。

ボトムアップで一部のGlobal Nomad Groupのような一部の働きかけによって認知度がようやくあがってきています。

テクノロジーを使って、Global教育、異文化理解をクラスルームに導入していくにあたって下記が課題になってくるでしょう。

  1. Virtual Global Classroomをファシリテートできる指導者(教師)とインターネット接続環境
  2. Global教育、Global Citizenshipに対する重要性が広く理解されること

“アメリカではたった50%の中高生が外国語を学習” といったいまの状況からすると、やはりアメリカでの課題は2.のGlobal教育、Global citizenshipの重要性の意識の問題が特に大きいのではとおもいます。

また、2.のGlobal Citizenshipの重要性が理解されていないので、1.のファシリテートできる人材不足につながってしまうといえます。

特にマイノリティや低所得者層では基礎学力の習得がままならない状態でGlobal Citizenを目指そう、ということに結びつくことが難しくなってきます。(この問題に挑むのが低所得者層子ども向けGlobal教育に触れる場を作るNYのGlobal Language Project  TED talkもあります。)

テクノロジーを使ったVirtual Global Classroomがアメリカ国内全体のGlobal教育の普及にどう底上げして貢献できるのか、それはテクノロジーとは別に、そもそものGlobal教育の意識付けの啓蒙活動と連携していくことがキーとなっていきそうです。

日本国内にもGlobal教育を展開していく上でヒントがあるのか探っていくため、アメリカのVirtual Global Classroomのチャレンジの動向をこれからも追っていきたいとおもいます。

 

ブロックチェーンと教育の未来

今月、3月7日〜10日にかけて、テキサス州オースティンで開催される年に一度の教育とテクノロジーの祭典、 SXSWeduに参加してきました。そこは一般的な教育コンファレンスの概念をまさに超えるといっても過言でない程、先進的なコンファレンスでした。毎日15分〜30分刻みで、異なる会場で数多くのプレゼンやパネルディスカッション、講演や新商品実演が同時並行で行われます。モバイルのアプリケーションで参加者各自が関心のあるテーマに沿って主体的に参加ができるような形を取り、毎年世界中の研究者、学校教育者、Edtech、教育企業関係者、Venture capitalistが揃って参加します。この場で業界関係者が集ってネットワーキングを広げる絶好のチャンスでもあり、毎晩Happy hourや立食パーティーなどソーシャライズするための場も企画されていました。

SXSWeduの会場内の数々のセッションの中で主な教育トレンドとして、「Project based learning(プロジェクトベースとした学習)」、「Personalized Learning(個別最適化学習)」、「21st century skill(21世紀型スキル)」、「Design thinking(デザイン思考)」といったトピックをテーマとしたセッションが目立っていたように思います。個人的には、Virtual Realityをクラスルーム内で使い海外の学生と接続し、異文化理解を体感して学ぶGlobal Exchange Programを斬新な形で提供している教育NPO, Global Nomads Groupなども印象的でしたが、それはまた別の機会に取り上げたいと思います。

さて、本題に移りますが、今回参加したSXSWeduの中で教育の未来を考える上で最も印象的だったセッションが、Jane Mcgonigal氏による基調講演でした。テーマは、’How to think and learn like a futurist’ (フューチャリストとしての思考法と学習法)という興味深いタイトルでした。Jane氏はGame DesignerでありながらFuturistとしても活動しており、日本語にも翻訳されている、幸せな未来は「ゲーム」が創るスーパーベターになろうをこれまでに出版しています。

基調講演はSXSWedu内の最も大きい会場で開催され、Jane氏の陽気で活発な雰囲気の中、刺激的で内容盛りだくさんのあっという間に過ぎた1時間の構成でした。全体の内容としては、まずJane氏より未来を予測するための重要なテクニックのステップ( 1. 未来からのシグナルを集め、2. それらを組み立て、3. 予測を立て 4. 未来について膨大な数の他者たちと遊ぶ、というユニークな4つのステップ)が伝授され、次にその4つのステップを応用し10年以内に最も変化するであろう教育の未来のシナリオを会場で実際に予測していく、というものでした。

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そこでのシナリオは、ビットコインで用いられているブロックチェーン技術を教育に活かした10年後の未来の教育が紹介されました。

私はエンジニアリングの分野に精通していないので詳細な説明はできませんが、ビットコインとは、要約すると、ネットワーク上での電子取引を行う仮想通貨で、中央機関存在なしで、通貨の発行や取引はすべて第三者機関同士のピアツーピア・ネットワーク上で行われています。そしてビットコインのすべての取引履歴はブロックチェーンと呼ばれる「台帳」に記録されます。そこで行われる取引履歴は全て暗号化されセキュリティが守られた環境下となります。Jane氏も、ビットコインについて’The first decentralized digital currency’(最初の非中央集権的デジタル通貨)と述べていました。

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はい、それでは、このブロックチェーン技術が教育に応用されて10年後の未来はどうなるんだろう?という疑問について、Jane氏が実際に予測を立てた未来を紹介していきたいと思います。これらは前述にあったJane氏独自の4つの未来予測ステップに則ったものになります。

まず最初のステップである、1. シグナルを集める ですがJane氏は下記のようにブロックチェーンがもたらす教育への変化を現在のシグナルとして捉えていると述べました。

  • 現在、正式な教育機関で取得できる学位がもっとオープンになった ledger, 「台帳」となるのでは?そうなった場合、従来の「卒業」というコンセプトはなくなるのではないか?
  • 学習体験が通貨のように扱われるのでは?そうなった場合、学習機会や資格を交換し合うためどのような新しい取引を創りだされるのだろう?
  • 完全に教育に対して支払う概念を新たに発案できるのではないか?学ぶことにより所得が得られるということもあり得るのではないだろうか?

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次に、2. シグナルを組み立てる、作業に移ります。そこで現在すでに見えてきているシグナルと重ね合わせ、より教育の未来のイメージに近づいていきます。現在すでに見えてきているシグナルは下記のように述べています。

  • 現在の高等教育を受ける生徒のほとんどは、’Working learners(働きながら学生をする人)’ : 80%の大学(単科大学)学生は仕事についており、40%の学部生はフルタイムで働いている
  • 会社のCEOs(社長)は従業員に週に5〜10時間のオンライン学習を期待している
  • 若者たち(そして倹約家な人たち)は従来の大学教育の存在についてROI(費用対効果)に疑問を持ち始めている
  • Credential-based (資格や学びの証をベースとした)教育のポジション上昇

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そして、いよいよ 3.予測を立てる ステップに移ります。そこでJane氏が予測する未来についてのポイントは下記になります。

  • 学習は、伝統的な教育機関の縛りから解き放たれるだろう。
  • 学習は学校内、学校外、企業内やオンライン学習経験が全てシームレスなネットワークとしてまとめられるライフスタイルとなっていく。
  • 労働と学習はもはや人為的に切り離せなくなる
  • 雇用者はより教育の世界の中でより影響力を持ち責任が大きくなる
  • 教育に対して支払う方法が豊富になる(または報酬として得る方法も)
  • 学習記録を検証していく新たな方法が発明されるであろう
  • “Just-in-time” skill(学習がよりビジネスや産業とつながり実社会に適用していくskill)により注目が集まっていくだろう

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まとめると、学習はより、アクセスしやすくなり、経済的に安価となっていき、より実社会とのつながり、キャリア(お金を稼いでいく)へ直結していく世の中になるのではないか、ということです。

そしてさらにその予測をバーチャルの世界で仮定し具現化していきます。

学習の積み重ねの台帳となる”Edublock”と”Learning is earning”の教育の未来の世界です。以下の動画に全てその世界が紹介されています。ここでのアイディアを私なりの視点で要約すると、従来の学位の代わりとして、オープンなLedger(台帳)が重視される世の中になっていきます。ここで使われるのがEdublockというバッジで獲得したskillを積み重ねていきます。どこの大学を卒業したか、資格を取ったか、という結果よりも、何を継続的に学んでいき、あなた自身何を強みとしているのか、というプロセスが重視されていきます。個人の学習履歴がEdublockに積み重なり、誰もが生徒となり先生となり、かつ学校などの場所にとらわれず学びとその証を記録することができる世界です。学習にコミットするにつれ、Edublockが貯まっていき、より仕事の世界でもフェアな評価につながる、お金を稼いでいくことに直結するというコンセプトです。

 

そこで、最後の15分間はJane氏自らこの基調講演のためだけに用意したWebsiteの未来予測ゲームに参加者がTwitterとWebsiteを通しこのEdublockによる2026年の教育の未来について意見を投げ参加できるバーチャル意見交換セッションのゲームで締めくくりました。

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このEdublockによる教育の未来については、あらゆる角度から一般の参加者から意見が投げられており、見ているだけでも興味深いです。ポジティブな意見から、懐疑的だという意見、誰かがこの仕組みを悪用するのでは、などというネガティブな意見や一歩進んで、自分たちのJob title(肩書き)はどうなっていくんだろう?など多岐に渡っています。

下記がそれらの意見をわかりやすくグラフ化したものになっています。(詳しく見たい方はご参照ください。)http://www.learningisearning2026.org/graph

最後に、Jane氏の1時間にわたるこの未来予測体験はとてもリズミカルで、没入感あって教育の未来について想像力膨らませて考えることができ、参加した身としてはとても楽しめて有意義な経験でした。最後のEdublockの未来についてみんなで意見を投げてゲームをしましょう、という展開には圧巻されました。他の参加者がどういった反応をしているのかがリアルタイムで分かりエキサイティングな体験でした。

Jane氏が予測したブロックチェーンがトレンドとなる2026年の教育の未来について、本当にそんな世界になっているのだろうか?と考えると、個人的にはやはり権威のある大学はこれからも存続していくことに変わりはないとも思います。逆に大学機関はこれらのトレンドに合わせて変わっていくだろうし先進的な大学機関(MIT東京大学など)は既に授業をオンラインコースとしてオープンに開いたりと変革の試みを展開しています。しかし、一部のグローバル企業などでは既に学歴を重視せず、個人が何をテーマに学び続けてきたか、ということを重視して採用する会社なども増えてきていると聞きます。情熱を傾け学び続けてきた人が正当に評価される世の中になる、ということに関しては素晴らしいと思います。Learning is earning 2026のサイトの中に、「個人のニーズに合わせて学習分野を選ぶのを助けるコーチやカウンセラーが必要になってくる」と意見を言っている人もいました。より個人が自分の内から湧き出る関心や情熱に沿って継続的に学び、自身の高みを追求していくことで正当に仕事で評価されることが可能な世の中になったとしたら、今まで人類が経験してこなかった、組織体系にとらわれずに個人の情熱とするものを生き生きと働きながら学習し続け、各々の個性を尊重し合あえる世の中になっていくのかもしれません。まだまだ実現の道のりは長いのかもしれませんが、そう遠くはない未来だと個人的には思います。

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ブロックチェーンの教育への応用は、既にテクノロジー企業であるソニーが進出している分野でもあります。先月発表されたプレスリリース内では、「誰もが簡単に教育を受けられるように、誰もが競い合い、学び合えるように、従来のアプリケーションやサービスの枠組みを超えたグローバル仕様の教育サービスを提供して、新たなインフラを創造すること」とあります。ブロックチェーンが未来の社会インフラに大きな影響を及ぼす重要技術と捉えており、今回開発した技術によるアプリケーションプログラムを、まず2017年中に「世界算数(Global Math Challenge)」をはじめとしたソニーグローバルエデュケーションのサービスに適用し、新たな教育インフラを創り上げていく、とのことです。

新たな教育インフラを創り上げていく、2026年のブロックチェーンがもたらす教育の未来が現実になっていく動きはすでに始まっています。

 

 

General Assembly参加

本日、General Assemblyの全日のBootcampに参加してきました。通常は、ProgrammingやProduct Management系のセミナーが多いものの、たまにBusinessやMarketing寄りのセミナーも開催しています。

せっかくの機会なのでSan Franciscoダウンタウンにある教室で開催された、”Business Development”のBootcampに参加してみました。

General Assemblyは、主に起業家やスタートアップ勤務の社会人向けのスキルアップのための講座をオンライン、実際の教室のコース両方で提供しています。

元々は2011年にNew Yorkで最初の校舎が開設され、ITスタートアップ企業を経営する起業家など、元々プログラミングの知識がなかった文系の大人向けに実用的なTech系コースを提供したり、様々なニーズに合わせ、プログラミングだけでなく、Business DevelopmentやWeb Marketingなどビジネス全般に必要な分野のコースまで拡大し、New Yorkだけでなく西海岸、全米各都市、のちにHongkongやSingaporeといったアジアまで拡大しています。社会人向けスキルアップに特化したグローバルEdtech企業でもあります。

常に新しい業界のコースを提供し、オンラインだけでなくPhysicalに教室に行き参加する、というハイブリッドな形式を取っているので学ぶ当事者にとってはモチベーションが高い状態にキープされるような工夫もされています。長期コースの他に、私が今日参加したような単発の1日詰め込みのBootcamp型のセッションもあり、忙しくてスケジュールが読めない社会人にとってはオプションが揃っているのでありがたいです。

また、日本で実際の教室で行うBootcampがないかアンテナ張って探していたのですが、ほとんどの場合、形式的な体系だったビジネスマナー研修、だったり実用的ではなかったり、またはすごい高額だったりするので、中々ベストな環境がなかったりしました。正直、堅い講座ばかりで急速に変化するビジネスの中で対応できるような実用的なスキルアップの講座がありませんでした。schooなどオンライン講座にはこういったタイムリーなスキルアップ講座があったのでたまに見ていたくらいでした。

ここ、シリコンバレー、スタートアップ企業の聖地であるSan Franciscoではやはり自身のスキルアップに興味がある大人が多く、常に人気のある講座はすぐに埋まってしまうようです。またGeneral Assemblyだけでなくタイムリーな新しいビジネススキルを習得するための講座がたくさんあります。

今日私がBusiness DevelopmentのBootcamp に参加した理由は、IT(Tech)業界で働く上で、どのような役割が求められているのか、またアメリカ(ここシリコンバレー)の潜在パートナー企業(団体)と話しをする上で、どういったマナーが好まれるのか? を知りたかったためです。日本人同士でいる際はお客様に失礼がないようにどう対応したら良いか、は何となくわかるのですが、アメリカ人の外部の人と話しをする上で本当に深く入り込む上で、実は知らなかったアメリカ的ルールがあるのではないか、ということや、効果的なアプローチがないかを模索するためです。

日本では、Business Developmentという職種は比較的新しい職種に入り、IT業界にしかないような役割ですし、営業なのか?経営、Marketingなのか?と定義があまり一般化されていないですし、専門的に職種のノウハウを教えるような講座も中々見つけるのが難しかったので、今回参加してみました。

今回一緒に参加した方たちは、もちろん、ここシリコンバレーIT聖地で働くTech 企業やフリーランサーが多かったです。どうやったら効果的にパートナーシップを結び双方のバリューを伝えお互いにとってベネフィットが持たなされるようにリードできるか?と関心を持っていた人がほとんどでした。

朝のパートでは、なぜ自分がこの講座を受けたか、を参加者同士でシェアすることから始まり、所属組織の1年後の将来的なゴールは何か、をグループ毎にシェアしました。企業によっては、KPI(社内目標)が明確だったり、常に短期的ゴールを見がちなので1年後がどうなってるか分からない、など組織の特性によって違う見方が知れてたのしかったです。

午後のパートは、自社サービスのValue proposition (自社の付加価値、顧客価値)を話し合い、その上で達成するため、Business Development Strategy(適切なパートナーを認識する、特定化する)、Account Strategy map(外部企業の戦略map)を作るところまでやりました。そして、エレベーターピッチ(30秒〜1分で自社の魅力を、ロジックと感情的に共感を呼ぶような内容でプレゼンする)の練習をしました。

さすがシリコンバレー、参加者みんなは本当にピッチが上手いですね。

最後には、自社の商品のピッチを1人5分するプレゼンテーションをし参加者でフィードバックを交換するコーナーで最後は締めくくりました。

シリコンバレーにいて、”ピッチ”の重要性を感じます。もちろん、そこだけでは語られない部分もあるとは思いますが、今何が起こっていてどんな問題が存在し、自分(達)はこれをどう解決しようとしているのか、そのために何をしていてコミュニティの役に立つような働きかけをしようとしているのか。それを端的にリズム感を持ち短くわかりやすく発信する、ということに尽きます。

ここでビジネスをしている人なら、誰しも誰かの”ピッチ”を聞くことに前向きですし、常にオープンです。こういったマインドが起業家輩出に繋がることと思います。

今回参加して、アメリカ人の外部のお客さんとビジネスをする上で特別なことはあるのか?という私の疑問については、アメリカ人だからといって特別に失礼にあたると気にすることはないということが分かってよかったです。日本でビジネスをする上で、お客様、先方に対して双方にValueがあるような提案を考え、伝えていき相手を巻き込むこと、といった観点では、日本とアメリカの違いは特にないということが再確認できてよかったです。

逆に、アメリカ人の懸念は、日本人は本音を言っているのか、ということだそうです。日本人は意思表示がはっきりしない。Yesといったことが実は違っていたり、ということがあり、逆に彼らが悩んでいることでもあるとのことです。白黒はっきりする文化であるアメリカなので、逆にこちらが不明点を聞く分にはWelcomeですし、できるだけ会う機会を作ったり、もっと双方を知る機会を作る姿勢については喜んで引き受ける、というカルチャーなのです。

今回の参加を通し、私自身人前でノンネイティブだから、とピッチが思うようにできず遠慮していたところがあり反省してますが、アメリカ人でも本当にロジックとパッションが絡み合い説得力のあるピッチ、プレゼンテーションをすることはとても難しいことなのだ、アメリカ人の中でも苦労して完成度のあるピッチを練習しているんだと分かり良い経験になりました。

参加者の方達も、困っているなら、ここを紹介するよ、と意見を頂いたり実際に提案をもらうこともできて良い出会いになりました。ここのエリアで仕事をしている人に共通していることは、寛容でEntrepreneurship(起業家精神)を尊重し応援したい、というマインドを持ってることです。ビジョンや頑張っていること、については支え合うカルチャーに改めて感謝です。

Thanksgiving

今回は番外編の投稿です。この時期はホリデイシーズン真っ盛りのアメリカです。毎年11月第4木曜日はThanksgiving day (感謝祭の日)です。まさに日本のお正月と言われるようなイベントでこの日のために親戚家族があつまり一緒に豪華な食事を取り、一晩では食べきれない程の料理を一週間かけて食べ続けるということ。この週は食べ続けて太る人が続出とのことです。

何と言ってもThanksgivingの食事に欠かせないのが七面鳥の丸焼き。

この日のためにどの家庭も事前に準備をしておきます。どこのお店で七面鳥を注文するか合戦が繰り広げられレシピ本が一気に店頭にならんだり。一般的に伝統的と言われるレシピは、パンを詰めこんだ七面鳥のグリルにグレービーソース、クランベリーのソースを添えるもの。マッシュポテトとデザートのパンプキンパイも必需品です。

感謝祭の醍醐味は、”豊富さ”だそうなので余るくらいの食べ物をふんだんに並べないといけないとのこと。

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今回ご縁がありサンフランシスコ市内に住む夫婦が友人たちを招くカジュアルな家庭的なThanksgivingディナーをご馳走になりました。七面鳥は食べ応えがありとってもジューシーで、毎年このように幸せに食事を大切な人たちと囲めることにお互いに感謝をし合いながら交わす夕食は温かくとても特別な時間でした。

Thanksgivingの翌日、金曜日は毎年各Retailのお店がセールを繰り広げます。Black Fridayと呼ばれ、このセールを境に小売店の年間通算収支が黒字に転換するといわれていることから名付けられたのことです。その週明けの月曜日はCyber Mondayと呼ばれ、(職場のPCでネットショッピングする人が多いとのこと?)E-commerce系がセールを開始します。

このまま12月のクリスマスまでホリデイムードが続きそうとのことです。子供たちにとっては一年で最も楽しみな時期になのでしょう。

余談ですがAmazonの子供向けギフトアイディアの中に、立派にジャンルの中で「STEM」(Science, Technology, Engineering, and Math) の学習に役立つ おもちゃのジャンルがありました。子供へのプレゼントもきっちりSTEM教育につながるようアメリカの中ではメジャリティの層まで定着しているのですね。Amazon 子供向けギフトアイディア

 

 

Altschool 未来形の学校となるか

先日、Altschool の入学対象者の保護者向け説明会に参加してきました。

Altschoolは筆者がシリコンバレー(サンフランシスコ)で勤務を始める前から最も気になっていた先進的アプローチを取り入れた最高級の学校です。

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AltSchool Yerba Buena校(2016年秋開講予定)

Facebookのマークザッカーバーグが今年5月に1億ドル(約120億円)を投資したことで日本のEdtech / 教育業界でもより注目度が加速されたと思います。

なぜそんなに投資家の関心を引いているのか?

Altschoolは子供一人一人のFull potential を伸ばすために設立され、子供が生きる2030年代に備え、21世紀の未来を切り開きイノベーションを起こす”change maker” になるべく教育方針を立てています。

保護者説明会では19世紀〜の教育方式についても言及され、

それまで人々は自分のPotentialがどこにあり強みを職業や活躍の場にフルに生かされていなかった。Altschoolでは21世紀の革新的な教育方針の提案として生徒一人がFull potentialを未来に発揮できるよう一人一人の能力に合わせ学習スタイルを提案していく

と説明が続きました。

具体的には5つの柱から成り立っています。(1. Whole Child Education 心身共に健康児童推進 2. Rigorous Academic 厳格な学問 3. Community commitment コミュニティへの貢献 4. Project base プロジェクトベース 5. Personalized Learning 個別最適化学習)

特徴的なものとして、一人一人の能力に合わせた”Playlist”を導入した生徒一人一人のカスタムメードカリキュラムです。それによって個人が最大限に学習できるよう先生がサポート。また徹底した少人数教育(1クラス25名がMAX) でグループ分けしプロジェクトベース中心の授業。学年も小学校低学年、高学年と分け、厳密な年齢で区切っていません。また教室内にビデオを設け生徒の学習状況を教師、保護者にも開示する透明性についても徹底しています。

このような、Altschoolのテクノロジーを駆使したメソッド以外にも、Social Emotional Learning (社会性 / 道徳)教育にも力を入れ、野外のField Tripなどコミュニティとのinteractionを経験し非テクノロジーの部分にも強化し、ITと人間性、双方のバランスのとれた最高峰の教育を提供していることです。

アメリカ国内の教育者にとっても、これだけ贅沢な学びの場でキャリアを発揮できることは絶好の機会です。生徒の入学応募者数はもちろん、教師志望者の倍率も相当高くなってきているとのことです。教育者の理想を追求できる場ともなっているのかもしれません。

親にとっても幼稚園〜中学校の多感な時期に、子供を安全でストレスない環境で学ばせたい、未来に活躍できる人材に成ってほしい、というニーズに合致しているとも言えます。急増する保護者からの人気から入学応募者数が高まりAltschoolはSan Franciscoの他にPal Alto西海岸だけでなく、New Yorkにも拡大し、次なる年はChicagoを視野にいれているとのこと。

やはり、学費は都市の物価上昇に伴い増加しており、現在では年間約3万ドル〜(約360万円〜)です。様々な学費支援制度なども設けているそうですが中々ハードルが高いと言えます。

しかしAltschoolには豊富な資金もあるので、現時点では着々と校舎の拡大をしていますが、長期的にはAltschoolの内部教育オペレーションを最適化し、教育メソッドをアメリカ全土や海外展開もし、入学金がまかなえない家庭の子どもにも提供できることを目標にしたいということでした。

もしこれが本当に可能になったら。アメリカの教育現場も変化し、そのメソッドがグローバルに広がり、それが21世紀の教育としてのスタンダード、にいつか進化するときがくるのでしょうか。可能性を感じさせます。

今回の保護者説明会で印象に残ったのは、実際にAltschoolにお子さんを二人通わせていて、実際にAltschoolで勤務されている女性の方にインタビューが行われていました。

なぜ子どもをAltschoolに入れたのか? という問いに対し、

今までの公立学校では大人数教育を行っていて、彼は(上の子)は算数が出来すぎていつも目立ってしまっていることに、劣等感を感じてしまっていた。他の生徒と比較されることにプレッシャーを感じていたようだったけれども、Altschoolに入れたらのびのびと自分の学びたいものを学び生き生きしているように見える。

下の子は、今までの学校に通っていた時と比べ随分社会性だったり思いやりを持つようになった。Altschoolでは地域Communityに関わったりする機会が多く、自分が周囲の人に何か貢献したい、という気持ちが芽生えているよう。

と答えていらっしゃり、他の参加者の保護者からは共感をたくさん得ていました。今までの従来型の学校では伸ばしきれなかった子どもの才能を最大限に伸ばす環境がAltschoolにあるとのことでした。

今回の保護者説明会の参加をして、”子どもの教育のゴールをどう考える?”ということを意識させられました。

一流の大学に入り優良企業に入ってもらいたい、と願うことで子どもを守りたい、という考え方はもはや20世紀のものなのかもしれません。

これから子どもにどう活躍してもらいたいだろう?どうなってもらいたい?と21世紀の親は模索し続けているのでしょう。少なくとも今回参加していたアメリカの経済的にも豊か(であろう)層の親からはそんな印象を持ちました。

Altschoolは確実に子どもに最良の選択肢を与えてあげる、ということでニーズを掴むポジションを確立しているのでしょう。

 

 

 

 

 

 

テクノロジー活用で学力格差埋めるチャレンジ – 2

前回のテクノロジー活用で学力格差埋めるチャレンジ – 1に引き続き、教育機会に恵まれない生徒達に対する革新的教育メソッドを導入するチャータースクールの試みの紹介第2弾を紹介したいと思います。

2. Caliber school Caliber Beta Academy (Grade K ~ K8まで幼稚園から中学校)

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平屋のキャンパスが併設される校舎

Caliber チャータースクールは昨年創設されたばかりの新校。サンフランシスコ近郊のリッチモンドにある校舎を今回は訪問しましたが、カリフォルニア州のVarejoにもこれから設立予定とのことです。

Caliberスクールのミッションとしては、先陣の革新的チャータースクールが生み出したテクノロジーに習い、Personalized Learning SystemやBlended Learningの活用も導入する上、Social Emotional Learning(人徳教育)にも力を入れています。大学進学のため、大学に入学することだけではなくその後にリーダーシップを発揮する人材、人間力のある大人となり活躍してほしいという願いがあるからです。

Social Emotional Learningの一例としては、アメリカの学校では珍しく、健康的な家庭的な給食を先生と生徒と一緒に食べるランチやお掃除の時間も設けています。まるで日本の小学校のようです。

まだ創立1年の新しい学校であるが故、様々な教育アプローチをTry & Errorで先生たちも取り組んでいるということです。先日ご紹介したチャータースクール界のトップランナー、Summit schoolは創立から10年以上の実績がある故、教育メソッドが確立されKindergartenからSummit Schoolへ通っていた生徒も多いことから学習姿勢が身についている生徒が多く、生徒の授業中の集中度は高く、真面目に取り組んでいる様子が伺えましたが、Caliberでは新校なのでまだ生徒の集中度にばらつきがある様子で中にはよそ見をする子も少々目立ちました。それも、いままでの経験から学習姿勢を身につけられる環境にいたわけではないので、これからCaliberで学ぶ姿勢、学問の基礎を固めていってもらいたいと願います。

Caliberは学習姿勢の基礎となる、算数と読み書きに力を入れ、学習のコアスキルを固めてもらうことが優先的に取り組まれてます。

算数は、Blended learningを導入してます。i-Readyを使ってカリキュラム管理。算数は、ST Mathなどのオンライン算数教材を使いながら、教室ではグループごとに問題に取り組み、先生と直接確認する、ハイブリッドなやり方が浸透していました。これによって宿題の進捗度も先生は把握できるので個人の学習進度が分かりやすく見えるとのこと。特に算数は理解にばらつきが多いのでBlended learningを使用して良かったということです。

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レベル別グループに分かれ演習問題解く。

読み書きの部分では、幼稚園生も含んでWritingの時間が毎日1時間設けられてます。Reading Partnerももうけ生徒同士で読書も継続していきます。

また、Codingの授業にかなり力をいれており、常駐で5人の先生のもと実施されています。当日の授業では、Tynkerを使用しながら進行してました。Volunteerでの地域の協力者も多くいらっしゃるとのこと。

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プロジェクターでScratchを投影し全体の流れを確認。各生徒が手を動かして取り組む。

Codingに力を入れるのも、彼らが大学を卒業してもプログラマーやエンジニアといったIT分野の職業に就き活躍できるオプションを持ってもらうためとのことです。またただ単にプログラミングを覚えるだけでなくその基礎となるComputational Thnking skill、ITツールを使用した問題解決力を養うことに重点を置いているとのことです。

まだCaliberは若いチャータースクールですが生徒や保護者、先生同士のフィードバックを確認するため毎週先生同士がレビューを行いながら各生徒に沿った指導内容や生徒にトラブルが起きた際の問題解決の相談なども密に行っているとのことです。若い学校による壮大なチャレンジ。まさに、プロトタイプを繰り返して、走りながら行動に移している、といった印象を受けました。

STEAM教育の裏がわ

筆者はフリーランスでEdtech業界の情報取集や学校訪問を通して市場調査する傍ら、サンフランシスコ市内にあるChildren’s Creativity Museumでアシスタントラボとしてボランティア勤務しております。

Children’s Creativity museumは簡単にいうと、子どものためのデジタルものづくりミュージアムです。STEAM (Science, Technology, Engineering, Art, and Math)教育を軸とし、21世紀にはばたく子どもたちに、3つのコアな力、Creativity, Collaboration, Communication の3Cを育んでもらうことを大方針にしているミュージアムです。

このミュージアムはスタジオとラボから構成されていて、1FはImagination Lab (現在は、パズルゲームのBrainteaserが展示中)、Annimation Studio (粘土で自由に動物や人間のキャラクターに作って、それを動画編集しミニシネマを作成!)、2FはTech Labo (RobotをiPadのプログラミングを使って自由に動かすラボ)、Music Studio (好きな衣装に着替えて自由に即興カラオケで演じて動画作成)、Innovation Labo(Mystery Boxを使ってほぼコスト0円のガラクタ素材から、お題にそって革新的な物がつくれるか、自由に創作。デザイン思考のアプローチを導入。)の様々なhands-on、自ら体験することを通して学んでいく場を提供しています。

そんな子どもたちのhands-on、ものづくりができるようサポートするのがミュージアムスタッフの仕事です。私はまだまだ見習いのPart-time勤務のボランティアですが彼女 / 彼らたちから学ぶことがたくさんあります。

一般的な子ども向け施設と違って、子ども自らが手を動かして辛抱強くやり抜く体験ができるよう支えてあげないといけません。でもあくまで、楽しくワクワクした雰囲気は壊さずに。そんなサポートがあって、子どもとは思えないクリエイティブな作品が出来あがったり、独創的なものができあがったり。子どもたちのお母さんからも感謝の言葉をもらったり。

ここではお見せできないのですがAnnimation Studioの粘土(クレイアート)のミニシネマの作品たちはかなり完成度高いです。また、Tech LaboのRoboticsはWonderのキットを導入しているのですが5歳以上の子どもが要領つかんでRobotを自由自在に動かしたり、ここをこうやって動かすにはどうプログラミングを変えたらいいだろう、と試行錯誤の上Step-by-stepでどんどん上達する姿などは感心します。

子どもたちが最大限に楽しんでもらって体験してもらえるように、Wonderの業者さんも定期的に来てRobotの点検をしたり、子どもたちやスタッフのフィードバックを聞きに来て、子どもがどうやって活用してるんだろう、学びを最大化するにはどうしたら良いだろう、と常に手探りで商品開発されてるとのことでした。

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Robotたち充電中。フル充電されたものを配置します。
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スタッフお手製のLEGOで作った説明ツール。8歳以上対象のApp “Blocky”を説明するのに便利です。

アメリカの子どもはきっと積極的でクリエイティブなんだろう!と始めは思っていましたが、3歳〜7歳くらいだとほとんど日本の子どもと同じなんだなと思えてきました。最初は何をしたら良いかちょっと戸惑う様子だけど、スタッフがこうやったらいいんだよ!と教えてあげるとすぐに要領つかみます。きっかけが与えられたらどんどん没頭する子がほとんど。一番笑えたのはMusic Studio で即興でカラオケしましょう!と言ってもシャイな子どもたち・・・ 曲がスタートしても歌いだすのにモジモジしてたり。とってもシュールでした。

「正解はない」という中とことん自分で追求してもらいたい、子どもたちにはコミュニケーション能力も養ってもらいたいという願いから、スタッフは、この体験で何が楽しかった?何が得られた?と子どもたちに問いかけることを大切にしてます。スタッフ自身も新しいテクノロジーを使った教育プログラムを習得し、学びながらどうやったら子どもたちの体験の効果を最大化できるか、と試行錯誤してます。地道な準備も欠かせません。子どもたちに最大限hands-on体験してもらうため、環境を整えてあげることも重要な仕事の一つです。

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Mystery Boxのパーツを準備。段ボールの欠片など。子どもたちがインスピレーション得られやすいよう工夫してセレクト。

デジタルネイティブな子どもたちが、デジタルを使って思考力を使い自分の力でやり抜こう、とすることをここのミュージアムは応援してます。想像していたよりも親子、スタッフのつながりがとっても温かく、まさにコミュニティの大人が子どもの学びを見守る、という場になってます。